子どももうつ病になるの?

小児のうつと不安―診断と治療の最前線
『小児のうつと不安―診断と治療の最前線』伝田健三(新興医学出版社)
「こころの風邪」ともいえる軽症から、時には自殺に至るケースもあるという、うつ病。これは長い間、すっかり精神的に成長した大人特有の心の病気だと考えられてきましたが、実は子どもにもうつ病がある、と専門家達は警鐘を鳴らしています。

欧米の研究によれば、児童期のうつ病有病率は0.5~2.5%、思春期・青年期は2.0~8.0%にものぼるとか。実際に、2001年に熊本県で行われた調査によれば、中学生の3割に抑うつ感があり、これを有病率に計ると6%となることが分かりました。

これらの数字は、小学校の1クラスに約1人、中学では1クラスに1~4人の割合で、うつ病を抱えた子どもがいることを示しています。

なぜ子どものうつ病が見逃されてきたの?

子どものうつ病―見逃されてきた重大な疾患
『子どものうつ病―見逃されてきた重大な疾患』伝田健三・著(金剛出版)
子どものうつ病の分野で国内の第一人者と言われる、児童精神科医 伝田健三氏は、著書『子どものうつ病見逃されてきた重大な疾患』で、「『子どもに大人と同じ内因性のうつ病が存在するはずがない』という先入観」や、「子どものうつ病は一見するとうつ病に見えないこと」、そして「社会や教育の病理にとらわれるあまり、一部の子どもたちのうつ病という現象を見逃して」きたことが、日本で子どものうつ病が見逃されてきた3つの要因だと指摘しています。

精神が未発達な子どもにうつ病のような複雑な病気があるわけがない、という考えは、私たち一般人の間なら尚更、古くは精神分析医の間でさえも、長い間固く信じられてきました。「子どもは天真爛漫なはずだ」という、大人の希望とも呼べそうな思い込みがそうさせてきたのかもしれません。

また、子どものうつ病は、大人のうつ病とは少し違った出現の仕方をします。それは、お腹や頭が痛い、体がだるいといった身体的な不調の訴えであることも多く、「単なる疲れ」「怠け心」と対話もなしに一蹴されてしまった結果、こころの中で静かにうつが進行していくこともあります。

そして「子どもが起こす不適応は子ども自身に原因があるのではなく、教育や社会のせいだ」とする風潮も、時として非行や不登校などに隠れた子どものうつ病を見逃すことにつながってしまったのです。