奈良市の女児誘拐殺害事件で容疑者が逮捕され、米国の
メーガン法などを手本に、日本でも性犯罪前歴者の
情報把握・公開が論議され始めている。
これは「社会防衛」か、それとも「魔女狩り」になってしまうのか。
メーガン法反対意見を追う。




朝日新聞 特集:【奈良・小1殺害】

メーガン法、「魔女狩り」の側面


過去に複数の性犯罪歴があった男に強姦、殺害された7歳女児の名にちなんだ、米国のメーガン法。凶悪な性犯罪前歴者が転居した先の住民にはその旨が告知されたり、一般住民が性犯罪前歴者の顔写真、氏名、生年月日、住所、犯した犯罪の種類、人種、身長、体重、目や髪の色などの詳細な情報をインターネットで閲覧できるようになっているなど、各州で運用されている。
⇒Parents for Megan's Law(全米の性犯罪前歴者リストを網羅)

だが、米国の性犯罪前歴者データベースに登録された53万3,000人という数を見るにつけ、この逐一の告知が住民の過剰な反応を招くであろうことは想像に難くない。

ワシントン州で起こった例がある。メーガン法に基づく初めての告知の直後、告知を受けたある地域の住民の一部が、その性犯罪前歴者の自宅前に押し寄せ、プラカードを持って抗議行動を起こした上、ついにこの男の家に火を付け、全焼させてしまった。また、ニュージャージー州でも、メーガン法で告知された性犯罪前歴者の自宅に、銃弾5発が撃ち込まれるという事件があった。

「犯罪者は出て行け」という、社会防衛の観点からの住民のメッセージである。だが、どこへ行けと言うのか。転居する先々でこのような迫害が起こり、結局その犯罪前歴者の社会適応ができなければ、そのフラストレーションにより別の犯罪をも呼ぶ可能性はないのだろうか、という議論もある。

また、ある性犯罪前歴者が服役を終えてひっそりと社会復帰し、穏やかな日々を送ろうとしていたところ、ある日同僚が小声で話しかけてきた。「州の性犯罪前歴者リストをインターネットで閲覧していたら、偶然キミの名前を見つけたんだけど……」。興味津々、といった様子で、間もなくその話は同僚たちの噂話の種となり、その性犯罪前歴者は職場を追われた。

正規の法手続きを終え、法的に更正したと認められた者でも、このような興味本位の「魔女狩り」が始まることによって、社会での居場所を失っていくことになる。住民の側に悪意がないにせよ、情報が公開されていれば、それが住民の興味を喚起するのは自明だろう。住民が自分の居住地に住む「魔女」を探してしまうのは止むを得ないとも言える。しかし、「魔女狩り」は犯罪を根本から解決するものではない。

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被害者の人権と加害者の人権。よく語られるこの問題ですが、皆さんはどうお考えでしょうか。今回取り上げるのは、奈良小1誘拐・殺害事件を契機に話題となっている、「性犯罪前歴者の、住民への情報公開」です。

ただ、これは小泉首相も支持し、先日警視庁・法務省発表のあった「性犯罪前歴者の現住所把握」とは別もの。個人データを、関係官庁までに留めるか、それとも一般住民にインフォームするかの、大きな違いがあります。

「性犯罪前歴者の、住民への情報公開」について、
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