知る人ぞ知るブランド、コンクリンコンクリン社は1898年アメリカで創業し、万年筆の黄金時代に革新的なペンを作り出し、一時代を築いたブランドのひとつだ。しかし、その後アメリカで巻き起こった大恐慌の影響を受けて、いっときはシカゴのシンジケートの手に渡るなどして、最終的に1955年幕を閉じるという悲運な運命をたどる。そのためか、日本ではその名を知る人は少ないと思う。この後ご紹介する伝説のインク吸入方式のペンが今なお一部の万年筆愛好家の間で知られているというくらいだろう。
そのコンクリンが2000年に再びアメリカで復活を果たし、つい先ごろから日本でも正式に販売がスタートした。
今回は、このコンクリンの当時の復刻版と最新モデルの2本をご紹介したいと思う。
そのコンクリンが2000年に再びアメリカで復活を果たし、つい先ごろから日本でも正式に販売がスタートした。
今回は、このコンクリンの当時の復刻版と最新モデルの2本をご紹介したいと思う。
ユニークで扱いやすい吸入方式 クレセント フィラー
コンクリン マーク・トウェイン コレクション万年筆
チェイスド ブラック、バタースコッチ 各63,000円
14金ペン先。F(細字)、M(中字)、B(太字)
チェイスド ブラック、バタースコッチ 各63,000円
14金ペン先。F(細字)、M(中字)、B(太字)
コンクリンと言えば、これ!というくらいに有名なものがある。それが「クレセント フィラー」だ。これはインクを吸入する方式で、コンクリンが1891年に開発し、当時大変に人気を集めたものだ。
そのクレセント フィラーを搭載した「マーク・トウェイン クレセント コレクション」が当時の古きよき時代の雰囲気を残しつつ復刻された。マーク・トウェインと言えば、誰もが知る「トム・ソーヤーの冒険」「ハックルベリー・フィンの冒険」の作者である。実は、当時マーク・トウェインがこのコンクリンのクレセント フィラー万年筆を愛用していたそうだ。
ボディに刻まれたロゴが 時代を感じさせる | 「バタースコッチ」というカラーは、 まさにバターの様な濃厚な色あい |
独特な吸入方式のクレセント フィラー
では、このクレセント フィラーのそのユニークな吸入方式をご紹介したいと思う。まさに三日月状のクレセント フィラー
そもそもクレセントとは「三日月」の意味。ボディの中央には、まさに三日月型をしたパーツがポッカリととびだしている。そのクレセント フィラーの根元をぐるりと囲むようにリング状のパーツがある。そのリングには一箇所だけ途切れているところがあるので、クルクルと回して、クレセント フィラーの下にくるようにする。このリングはクレセント フィラーのロック機構の役割をしている。
次に、ボトルインクを用意して、ペン先をインクの中に浸す。
クレセント フィラーのロックを解除し、 | ペン先をインクボトルの中に浸す |
ここまでのところは、リングを回すこと以外これまでの万年筆と、さほど変わらない。
さあ、ここからが、クレセント フィラーの一番の見せ場となる。ペン先をインクに浸しまま、クレセント フィラーを指で押し込む。グニュという感触が指先に伝わってくる。しっかりと押し込み、数秒おいてから押し込んだ指を解き放す。すると、押し込まれたクレセント フィラーがじわりじわりと元の状態に戻ってくる。かすかにチューという音がしてインクを吸い込んでいるのがわかる。先ほどのリングを回してロックをそれば、これでインク吸入はOK。実に簡単だ。
クレセント フィラーを指で押し込んで、 | ゆっくりと指を離す |
説明書によれば、このクレセント フィラーを押す作業を数回やるといいそうだが、私は1回だけにしている。何度やっても同じ繰り返しのような気がするからだ。
表からは見えないクレセント フィラーの板状のパーツがゴムのインクタンクを押し込む
原理としては、ボディの中にゴム状のインクタンクが入っていて、クレセント フィラーを押し込むことで、ちょうどスポイトの原理でインクを吸い上げるというものだ。ボディを分解することなく、軸をひねるといった両手をつかうこともなく、リングのロックだけ解除すれば、後は片手で吸入できる。この手軽さが、万年筆全盛の当時、大変人気を集めたのだろう。
そして、作家であるマーク・トウェインにも気に入られたのだと思う。
実際は、たっぷりのインクが吸い上げられるかというと、必ずしもそうではなく、やはり現代の吸入方式にはかなわない。しかし、このクレセントを押し込むというインク吸入の行為、そのものがとても楽しく心豊かな気分に浸らせてくれる。
ロゴの刻印だけとうシンプルなペン先 | 筆記時にクレセント フィラーは 上にくるので邪魔にならない |
大きなペン先でダイナミックに
書くことができる
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