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銀座ヨシノヤのパターンメード受注会 09秋(2ページ目)

昨年秋に大好評を博した銀座ヨシノヤのパターンメード受注会が、この秋も開催されます。この店が誇る九分仕立てハンドソーン・ウェルテッド製法はもちろんのこと、今回から遂に、「あれ」でも受注可能になります!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

遂にやりますフルハンド!

出し縫い
「掬い縫い」の後、細革とアウトソールとを接合する「出し縫い」の工程です。ハンドソーン・ウェルテッド製法のうち、この工程をミシンで行うのが「九分仕立て」。ご覧のように手で行うのが「十分仕立て(フルハンド)」です。今回のパターンオーダーでは、この「十分仕立て」もオプションで選択可能!(画像提供:銀座ヨシノヤ)


以前の記事でもご紹介した通り、ウェルテッド製法の靴では底付けの際、
  1. アッパー・ライニング・インソールそして細革(ウェルト)を接合する「掬い縫い」
  2. 細革・アウトソールを接合する「出し縫い」
と、縫いの工程が2回入るのが一大特徴です。1.の糸を通すテープ状の布(リブ)をインソール下部周囲に取り付けた上で、1.2.共にミシンで縫われるのが、通常のグッドイヤー・ウェルテッド製法。その一方、銀座ヨシノヤが永年採用している「九分仕立て」のハンドソーン・ウェルテッド製法では、旧来通りリブの代わりにインソール下部周囲を凸状に丁寧に掘り起こし、そこで1.を手縫いした後にミシンで2.を縫製します。

パターンメードでも基本仕様はもちろんこの「九分仕立て」ですが、ズバリ今回の目玉はその上を行くもの。工房の協力も得て上記2.の工程も手縫いとする、つまり底付けがフルハンドの通称「十分仕立て」のハンドソーン・ウェルテッド製法でも、遂にオプションで受注できることになったのです! 手間が格段に掛かるため費用も割高になり、もはや個別の木型作成が前提のフルビスポークの靴でしか事実上お目に掛かれなくなったこの方式を選択できる、大変貴重な機会に恵まれます。

このお店の「九分仕立て」の品質が十分過ぎるほど優れているので、その差は世間的なものよりもかなり少ないのですが、下の写真でもお解りのとおり、「十分仕立て」ハンドソーン・ウェルテッド製法の靴は、やはりメリハリがより滑らかに表現されています! 例えば上記2.の「出し縫い」は手の作とは思えない程緻密ですし、アウトソールの土踏まず部も絞りのダイナミックさが一層増しています。肝心の履き心地については、「九分仕立て」のものが何と言うのか「足場を固めて大地に根を張れる」ような、それはそれで大変素晴らしい感触である一方、「十分仕立て」の靴は「足の一部となり溶けてしまう」ような、それこそ天上界的な印象です。オプション価格は税込み136,500円と確かに高額ですが、足と木型との相性が良ければ試してみる価値は大いにあると思いますよ!

フルハンド・キャップトウ
「十分仕立て」、すなはち底付けの「出し縫い」も手で行われた内羽根式キャップトウ(ストレートチップ)です。「九分仕立て」以上の完成度の高さに、思わず惚れ惚れしてしまいます。税込み価格\262,500~(なお、このデザインは参考商品です) 銀座ヨシノヤ



フルハンド・アウトソール
上の「十分仕立て」の靴を、アウトソール側から撮ってみました。この製法だから可能な土踏まず部の大胆な「くびれ」が、更なる足添いの良さを保証します。フルビスポーク以外の靴でこの製法を採用するのは稀ですが、技術継承の意味でも試す価値は十分にありそうです。




次のページでは、今回も種類豊富なアッパー用の革について。
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