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男気ある優しさが嬉しいBRASS ブーツ編(4ページ目)

靴修理店BRASSのもう一つの顔、それはブーツメーカーとしての顔です。シューズは作らず色も黒だけと一見頑固な姿勢の裏には、履き手と一緒に靴を育ててゆきたいスタッフの純粋な思いが込められているのです。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

自然なホールド感に酔いしれます!

サンプルブーツ
デザインこそ異なれど作り込みは製品と全く同じの、サイズチェック用のサンプルブーツを履いてみました。一見細そうに見えますが、収まるべきところに自然に収まるフィット感は、絶対にクセになります!


とまあ色々と述べてみましたが、一番肝心な履き心地はどうなのだよ? と読者の方からの声が聴こえて来そうです。はい、実際の商品と同様に作り込まれたサイズ決定用のサンプルブーツを、ちゃんと試着してまいりましたよ! BRASSのブーツは一見極めて細面で、しかも1サイズに付きウィズ展開は1つのみですので、JISベースでD相当と足が細いことを自認している小生でも、「流石にこれは、ちょっと幅を出してもらわないといけないのかな?」と半ば恐る恐る足を入れてみたのですが……

コレが嘘みたいにストレスフリー! 小生は左足の方が右足よりも大きいせいか、左の薬指の感触がその靴が足に合うか合わないかの重要なマーカーになるのですが、感触は右のその部分とほとんど変わらず快適そのもの。これなら左右別サイズにする必要もありません。甲周りはアッパーの革がピタッと納まり、土踏まず部も快適に持ち上がり不自然な突き上げ感が全くないのです。これは小生より太い足の持ち主でも問題なく履けそう!

より具体的には、すこぶるスマートながらも内くるぶし側への「振り」のバランスに大変優れたトウシェイプ(なので同一サイズで木型を数種類用意する必要がない)や、立体的かつ深く抉られた土踏まず部、細かい所では内くるぶし側をかなり長めに設定したかかと部の月型芯や土踏まず部を覆うように据え付けた中敷きなど、端的に申せば、修理で様々な時代の様々な靴をつぶさに解剖してきた経験が、仕様や履き心地に極めて的確に反映された、多くの方が長く快適に履けるブーツに仕上がっているのです。ただしその分木型の造形は複雑そのもので、BRASSのスタッフによれば「とてもとても作り難い靴」なのだそうです。特に釣り込み以降の底付け工程は、熾烈を極めるとのこと。

それでも端正なブーツ作りを可能にしているのは、リペアの際にお話し致したのと同様に、ブーツ作りに関しても、この店内で事実上100%行える環境が整っているからでしょう。外注に出しているのは、アッパーの型付けに関する僅かな工程のみ。「九分仕立てハンドソーン・ウェルテッド製法」を採用しているアトリエが大抵は外部の業者に請け負わせてしまう出し縫い工程も、このページでお話しした店内にあるランディスとペデルセンの「伝説のマシン2台」をモデルの特性に応じていずれか選択し、しかも縫いのピッチを最適化した上でフル稼働させることで、自らがすべき領域では決して人任せにはしないモノづくりを徹底しているのです。

因みにこのお店のブーツは、くるぶしを覆う「丈(シャフト)」の部分がやや後傾しているのも特徴です。こうすると脱ぎ履きがし易くなるだけでなく、足首の運動域が広がる為、甲周りだけでなく丈の部分にも「美しい横ジワ」が出るそうで、こちらは「最後の最後に靴として仕上げていただくのは、やっぱり履き手の方」なる謙虚な姿勢の表れでしょう。

個人的にはこれまで「黒のブーツ」と言えば、男っぽさが全面に出てくるが故「履くにはまだ、早過ぎる……」印象も正直持っていました。が、BRASSのブーツの表情には凛々しさや武骨さだけでなく、作り手の姿勢に由来する優しさも滲み出ていて、この種の靴に対する一種の呪縛を解いてくれたような感を受け、より肯定的に考えが改まりました。ブーツが大好きな方だけでなく、あまり縁がないよなぁ…… と思っていらっしゃる方も、間違いなく必見です!



【店データ】
BRASS(ブラス)
所在地:〒155-0033 東京都世田谷区代田5-8-12
地図: Yahoo!地図情報
Tel/Fax:03-6413-1290
営業時間:12:00~20:00 水曜定休
交通:小田急線世田谷代田駅北口より徒歩3分、京王井の頭線新代田駅より徒歩6分 または小田急線・京王井の頭線下北沢駅西口より徒歩10分
HP:BRASS
ブーツ基本価格:\157,500~(全てのモデルの税込み基本価格です。オプション等で変動します。詳しくはこちらをご参照願います)
ブーツ基本サイズ:UK5ハーフ~9ハーフ(乗せ甲・幅出し等の若干の修正は可能)
納期:約4ヶ月


内くるぶし側
BRASSのオックスフォードブーツの内くるぶし側からのショットです。土踏まず部の抉れの鋭さがお解かりいただけるかと思います。履き心地の向上にこれが大いに役立っているのですが、これだけの曲面を出すのにはアッパーを釣り込む時とか、作る側の手間は大変だろうなぁ……



側面
今度は側面から撮ってみました。くるぶしより上の丈(シャフト)の部分がやや後ろに傾いているのが、BRASSのブーツの一大特徴。脱ぎ履きのし易さと「美しい横ジワ」の為の、さりげないけど技アリの一工夫です。

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