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革靴の修理で訪れたい男気ある優しさが嬉しいBRASS

2007年夏の創業時から、丁寧で美しい仕事とスタッフの真摯な接客で大好評のBRASS。この6月に店舗がリニューアルされ、より居心地の良い空間となりました。今回はこの店のリペアの魅力をご紹介しましょう!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

繊細なのも、無骨なのも、どちらも得意です!

豊富な修理部材
ヒールにソールにつま先補強…… これらはBRASSが用意している修理用部材のほんの一部です。ドレスシューズに向いているもの、ワークブーツに相応しいもの、どちらも非常に豊富に取り揃えているので迷うのがまた楽しい! スタッフも丁寧にアドヴァイスしてくれますよ。

今でこそドレスシューズを履く機会が多くなったけど、「革靴」を最初に意識して買った一足が、実はレッドウィング等のワークブーツ系だったと仰る方、1970年代以降に生まれた読者を中心に、結構多いのではないでしょうか?お手入れのコツやプロセスは若干異なるものの、「履き主の個性が育ち具合に表れる」のは、どちらも共通。年を経たが故に出来てしまった多少の傷や汚れは、むしろ誇らしくさえ思えることがあるものです。

そしてどちらも、底が擦り減るまで履き切ったあたりが、実は足に一番馴染んでいる共通のタイミング。今のご時世捨てるなんてもってのほかで、ここからが更なる勝負どころな訳ですが、例えばいざオールソール交換となると、いずれのニュアンスも高次元に理解してくれる修理屋さんって、案外少ないのが実情です。設備等の都合でいずれか一方に特化しているか、虻蜂取らずで双方とも中途半端な対応にならざるを得ないケースが大抵で、

「本当はドレスシューズもワークブーツも、まとめてリペアを任せられる器用なお店があったらなぁ……」

とお嘆きの方も、結構いらっしゃるのではないでしょうか?

大丈夫、それを可能にしてくれたお店、ちゃーんとありますよ! と言うことで今回は、先頃晴れてリニューアルオープンした、ドレスシューズ・ワークブーツ双方の修理に卓越した技術を誇る”BRASS(ブラス)”の魅力にじっくり迫ってみます!

トライアンフ
つま先補強用にBRASSが特にお勧めしているのが、このドイツ製のスチールトウ「トライアンフ」です。他のメタル系のつま先補強材に比べ様々なトウシェイプに無理なく対応でき、メッキが分厚いので錆にも強いとのこと。

出し縫いマシンを、靴で使い分ける!

ランディス
BRASSでオールソール交換がなされた、ご存知Edward Greenのフルブローグのつま先です。出し縫いの美しさと細かさに是非ともご注目いただきたい! こちらはオランダ製・ランディス社のマシンで縫われています。

学生と演劇の街・下北沢から、小田急線・井の頭線とも一つ西隣の代田地区に店を構えるBRASS。創業は2007年7月とまだ新しいものの、仕上がりの美しさとスタッフの気さくながらも真摯な接客で、その当初から靴好きの間で一目置かれるようになったお店です。

これまでは東京の大動脈・環状7号線に面した地下一階のガレージを受付兼工房としていましたが、好評を反映してこの5月に早くも店舗リニューアルを敢行。これまでのガレージは工房専用とし、世田谷代田駅近辺の商店街に面した一階を受付にすることで、より充実した応対が可能になりました。

このお店の特徴の一つは、凛々しいドレスシューズであれ無骨なワークブーツであれ、そして繊細なレディスのパンプスであれ靴の特徴をしっかり理解して修理してくれる点にあります。修理内容や選べるパーツもあまりに豊富で、それらを個々に述べ出すと紙面が何ページあっても足りないので、ここではその象徴とも申せる、大掛かりなリペアの代表選手・オールソール交換などに用いる底付け用の出し縫いマシンに注目してみましょうか。ややマニアックな内容になりますが、何卒ご容赦!

通常の修理工房では、設置スペースやランニング・メンテナンスコストなどの制約条件ゆえ、出し縫いマシンは1台、若しくは1種類であらゆる種類の靴の底付けを行います。それはそれで決して悪いことではないのですが、BRASSでは敢えて靴の種類に応じて2種類の機械を使い分けているのです。具体的にはドレスシューズにはオランダのランディス社のもの、ワークブーツにはデンマークのペデルセン社のもので出し縫いを行いますが、どちらもその世界では最高峰と言われている、文字通りの「伝説の名機」です。

実際の仕上がり具合を見ればキャラの違いは歴然で、前者はとにかく細かく、かつ美しい縫いをできるのが特徴。微妙なピッチ調整も可能なので、靴メーカーにより本当に微妙に異なるウェルトの縫い跡に、極めて忠実に糸を添わせることが可能になります。対照的に後者は縫い目こそやや大き目に仕上がるものの、ワークブーツの底のような「厚物縫い」には抜群のパワーを発揮してくれます。両者を上手に使い分けられるのは、勿論BRASSのスタッフの高度な職人技があるからなのですが、

お客様からだけでなく、マシンからも教わることが、日に日に実に多いんですよ……」

と謙虚に話してくれる彼らの姿勢からも、思わず「任せましょう!」と全幅の信頼を寄せてしまいたくなってしまうのです。

ペデルセン
こちらはBRASSでレザーソールの下にハーフラバーソールが縫い付けられた、ワークブーツ最高峰・White’s Semi Dress Bootsのつま先です。厚物縫いに抜群の性能を発揮するデンマーク製・ペデルセン社のマシンを用いているので、もちろんオールソール交換でも、このように二重縫いでガッチリ仕上げてくれます。

持ち主が望む「オリジナル」を再現させます!

トリッカーズ
履き込むことを通じて見事にエイジングされた、Tricker’sのカントリーブーツです。が、よーく見ると何となくどこかが違うような…… これはBRASSのスタッフが自分用にリペアしたものですが、どうリファインさせたか、解りますか?

BRASSのスタッフがリペアの際に心掛けているのは、一言で申せば「オリジナルを再現する」ことです。ただしこの「オリジナル」なる表現は、

「その靴が製造された時と全く同じ仕様にする」

なる原典忠実主義的な狭い意味に限定されたものではありません。むしろ

「持ち主が『こう履きたい!』と望む最善の状態に、靴のコンディションを回復・向上させる」


的なニュアンスで捕らえていただいた方が、遥かに的確でしょう。

つまり持ち主の体格や使い方に応じて、元来の仕様とは異なるパーツを装着する柔軟な発想も、嬉しいことにBRASSは持ち合わせているのです。例えばこのページにあるトリッカーズのカントリーブーツも、本来はレザーのダブルソール。それを自らの履く場面に今まで以上に適合させるべく、軽くてクッション性に優れたVibramのスポンジソールに変更しています。なのに視覚上の違和感を全く受けないのは、本来のトリッカーズの様式美を知り尽くした上で、個々人に応じた真の意味での「カスタマイズ」を行えているからです。

またどのような内容の修理であれ、BRASSでは外注に出したり別地の作業場に靴を持ち出したりすることなく、お客様の要望を耳にしたスタッフが同じ屋根の下でリペアに直接腕を揮える環境にあることも、それを可能にしている大きな要因でしょう。

「これまでどのように履かれ、これからどのように履いてゆきたいのか?」

を皮膚感覚で理解できているか否かで、修理の精度や美しさとは確実に変化してしまうものなのですが、その割には上述のような環境はこの業種では大変貴重!

だからでしょうか、この店には靴の種類にかかわらず十年以上履きこまれた正に「歴戦の勇士」と呼ぶに相応しいものや、他店で修理を断られてしまった難問奇問も、結構多く持ち込まれるようです。取材当日もたまたま、写真と似たようなカントリーブーツをオールソール交換に持ち込まれたお客様から

「履き心地は同様のままで、もう少しソールを厚く換えられないか?」

とのお題をいただいた場面に出くわしましたよ。

「昔の靴の素晴らしさも発見できるし、お客様と一緒に解決方法が見出せた瞬間は『これで新たな修理メニューができた』と、引き出しが増えたことを素直に喜べます」

と4人のスタッフは、それを苦労と感じるどころか、ある意味楽しんでしまっているみたい。本当に靴が好きなんだなぁ……となると、BRASSのメニューはリペアだけではないことは、もう容易にご想像できますよね?当然ながら「その先の世界」に踏み込んでしまっている訳ですが……

アウトソール
上の写真の答え。アウトソールがオリジナルとは全く異なるのです。レザーソールからVibramのスポンジソールに変えたことで、軽さとクッション性が一気に高まったそうで、BRASSはこんなカスタマイズにも柔軟に対応してくれます。

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