美しく、かつ逞しい!
Corno Bluの内羽根式セミブローグのオーダーサンプルです。表情が平板な印象になりがちなスエードのアッパーでありながら、これだけ立体的な造形にまとまるのは、清角氏による丁寧な作り込みがあってこそ! |
2008年の今頃だったか…… 東京駅周辺で用事を終えて、帰宅するには中途半端な時間だったので、リサーチも兼ねて丸ビルの中にあるBEAMS HOUSEに入った時のこと。紳士靴売り場ではなく、その向かいにあるオーダーサロンのようなエリアに何気なくディスプレィされていた靴に、ちょっと目を奪われたことがありました。華美にもか細くもなり過ぎない個々の曲線が、文字通り有機的に呼応し、靴全体に逞しくも彫りの深い表情を与えていたのです。
「どちらの靴屋さんのビスポークですか? イタリアとかヨーロッパからだと円安ユーロ高だし(この記事を書いている2009年春とは、状況が嘘みたいに逆!)……」
要は、いいな! と思った靴だったから、思わずこう店員さんに尋ねてしまったわけですよ。が、その答えは、そんな期待を心地よく裏切ってくれるものでした。
「いえ、この靴はビスポークですけれど福岡の靴職人さんの作品で、日本製です。今度こちらで、年に何回か受注会を行うことになったんです。ブランド名はIl Corno Blu(イル コルノ ブルゥ)と言います。」
それからずーっと気になっていたこの靴について、作り手から直接お話をお伺いできるチャンスが、この度ようやく訪れました。ブランド名もちょっとだけ変えたとのこと。と言うことで今回は、福岡の靴職人・清角 豊(せいがく ゆたか)氏が率いるCorno Blu (コルノ ブルゥ)の誂え靴について、じっくり迫ってみたいと思います。
次のページでは、この靴の作り手と工程について!