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ローファーの意味と魅力は?デザイン・履き心地のいい革靴とは

ここでは、スリッポンの代表格・ローファーを採り上げます。学生向けのイメージが強いですが、本当に気楽に履きこなすためには、実はある程度の年季も必要な革靴なんですよ! 今回は、ローファーの意味や魅力、サイズ選びのコツなどをご紹介します。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

ローファーとは? スリッポンの代表格でもある革靴

 ローファーの意味や特徴を解説
スリッポンは靴を足に固定させるのに、紐もバックルとストラップも用いません。それゆえフィット感だけでなく、使い方も異なります、本来は。

基本的な靴のスタイルには、履き口を靴紐に締め上げるレースアップシューズ、バックルとストラップで締め上げるモンクストラップシューズなどがあります。また、単にスタイルの違いのみならず、その靴に相応しい「場」も大きく異なります。

今回は、「スリッポン(Slip-on)」あるいはスリップオンと呼ばれる種類の靴を見てゆくことにいたします。紐やバックル・ストラップのような履き口を締め上げる部品が原則存在せず、靴全体の形状だけで足に固定させる履物、それがスリッポンです。

今回は、スリッポンの中でも代表選手とも言えるローファー(Loafer)を採り上げます。日本ではそれこそ子供からお年寄りまで、ドレスシューズの中でも一番幅広い年齢層に受け入れられている存在ですが、細かい仕様の違いを想像以上に楽しめる、実に奥深い靴でもあります。それでは基本形から見てゆきましょうか!  
 
<目次>
 

ローファーの意味!デザインの特徴やスタイルの印象

リーガルのローファー
この靴はかつてREGAL SHOESのお店で売られていた、W745という名のコインローファーです。大変履きやすく、Weejunsの流れを汲む基本的なディテールをしっかり備えていた名品でした。現在は生産を終了しているのがなんとも残念!

アッパーの甲周りがU字の蓋状に縫い付けられ、その上から飾り帯状の革(これを「サドル」とか「レザーストリップ」などと呼びます)が水平に縫い付けられているスリッポン、それがローファーの大まかな定義です。ローファーとは英語で「怠け者・無精者」の意味で、紐やストラップを締め上げることなく文字通りユルく履けるのにちなんだ、極めて図星の命名。かつてはアメリカの今は亡き靴メーカー・ネットルトン(Nettleton)社の商標だったのですが、今日ではすっかり一般名称化しています。

上の写真のようにサドルに切れ込みが入ったものは、特に「コインローファー」とか「ペニーローファー」などと呼ばれます。そこにアクセント兼お守りとして1ペニー(1セント)の硬貨を埋め込んで履くのが1950年代のアメリカ、特に東海岸の大学生に大流行したのがその名の起源で、もはや中南米製になってしまいましたが、アメリカ・バス(Bass)社が1936年に発表し現在も販売されている「ウィージュン(Weejuns)」が代表例です。足馴染みの早いマッケイ製法、つま先と踵に芯がなくライニングも付かない簡単な構造、そして懐に優しい価格もあって、気軽に履け礼儀も何とか失さずに済む靴として、彼らは大学の中だけでなく校外でも大変好んで履いていたことが、当時の多くの写真からも見て取れます。

そのイメージが未だ残っているからでしょうか、日本だとこのスタイルはどうも学生、特に近年では高校生あたりであっさり「卒業」といった感が強いですね。確かに仕事の場・スーツスタイルではちょっと「軽すぎる」靴ですし、名前のごとく無節操に履くのもどうかとは思いますが、全く履かずに若い世代の専売特許にしてしまうのはちょっと勿体無い! カジュアルな場でデニムやチノーズなどと合わせて、軽快な履き心地をもっと味わって欲しいものです。
 

オールデンのローファー(コードバン)が別注ブームの引き金に

オールデンのローファー
ちょっと価格は張りますが今日のローファー好きが一度は必ず憧れる、オールデンのローファーです。製法はグッドイヤー・ウェルテッドながら、アッパーのコードヴァンの質感も相まって、アメリカのローファーらしいユルい履き心地は健在です。

バスのウィージュンに代わって、日本では1980年代ごろから急速に靴好きの心を捉えだし、未だにその勢いが衰えていないローファーが、このオールデンの作品です。先ほどのコインローファーに比べ、幾分どっしりとしたシルエットになっていることにお気づきの方も多いでしょう。それもそのはず、製法がより頑丈なグッドイヤー・ウェルテッドに変化しているからです。

このモデルのアッパーには、一般的なカーフのスムースレザーのものやスエードのものももちろんあるのですが、やはり真骨頂は素材自体が眩い光沢を放つコードヴァンのもの。ライニングが付き(付かないものもあります)つま先にもごく薄い芯が入るものの、踵にはそれがないアメリカのローファーらしい素朴な作りと、コードヴァンのやや粘り気のある素材感が相まって、履いていると何とも形容しがたい寛容さに包まれます。そう、かつてのアメ車のソファーと似たような感覚。

またこのコードヴァンローファーは、オールデンが通常製造しているオリジナル品だけでなく、著名なセレクトショップが独自に若干アレンジした「別注品」が日本国内で多く出回っていることでも知られた存在です。木型違い、サドルにある切れ込みの形状違い、さらにはコバの幅違いなどその内容は様々。アメリカントラッドの雄・ブルックスブラザーズが、昔からここにライニング無しのものを特別に作ってもらっているのを、今日セレクトショップと呼ばれる商売形態がその創成期に見習ったのがきっかけだと思われますが、靴に限らず今でこそ我が国で当たり前になった「ショップ別注品」の先駆け的存在なのです。
 

ローファーのサイズ選びには注意しましょう

紐靴とローファーの違い
紐靴とスリッポンの靴としての違いは、単に紐のあるなしだけではありません。踝周りを覆う「トップライン」の形状も全く異なり、スリッポンは極めて直線的です。

これはローファーに限らずスリッポン全体に言えることなのですが、レースアップやモンクストラップとは形状のみならず「履かせ方」が明らかに異なることを、是非とも忘れないで下さい。踝周りを覆う「トップライン」の形状も他の靴と全く異なり直線的なのも、上の写真をご覧いただければお解りでしょう。何度も申しますが、自身の形状だけで足を覆う靴ですので、フィット感の微調整など無理な話。

よって合う・合わないの感覚差が、他の靴よりも見事なほど如実に出てまいります。「スリッポンだと他の靴に比べ、少し小さいサイズの方が快適に履けてしまう」とか「スリッポンでは『ちょうどいい』と思える靴が、全く見付けられない」と嘆かれる方が少ながらずいらっしゃるのも、別に不思議なことではありません。室内では靴を脱ぐ習慣が昔からある日本では、脱ぎ履きのしやすい靴として年齢を問わず人気の高いスリッポンですが、「踵が抜けないか?」「トップラインが横に広がり過ぎて脱げそうにならないか?」など、選ぶ際はサイズ標記に惑わされず、他の靴以上にフィット感を慎重にチェックして下さいね(「フィット」の目安については、別の機会に改めて記事にいたしますので、ご期待下さい)。

そうそう、小生以前スリッポンで実験をしたことがあるんですよ。ある年の年初にちょっと決心して、丸々1年間この種の靴を全く履かないで過ごしたのです。翌年の新年早々、漸く解禁して一番フィットすると思われたものを履き丸一日過ごしたのですが、その結果は…… 翌日、下腿部と臀部に見事に痛みが走りました(ああ情けない)! 他の靴とスリッポンとでは履く時に動かす筋肉も微妙に異なることを、我が身をもって文字通り痛感した次第。

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