男の靴・スニーカー/ドレスシューズ

スコッチグレインのゼルビーノシリーズ(2ページ目)

日本のビジネスマンの足元を支えるスコッチグレインから、「ゼルビーノ」と言う新シリーズが発売されました。最大の特徴は、恐らく靴史上初めてであろう独特の革質です。靴を「育てる」のが好きな方、必見です!

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

この革は、育ちます

ケア前とケア後の比較
向かって右が靴クリームを入れる前。左が黒のクリームをと入れた後。手入れの方法で表情がガラッと変化するのが、このシリーズ最大の特徴です


純粋無垢である、と言うことは、すなわち履き方やケアの仕方次第で靴自体の個性が劇的に変化する、と言うことでもあります。この革をカジュアル用からドレスシューズ用に改良する際、一番のポイントは「お手入れを愉しめる革にする」ことだったそうで、各色の出し方も、それを反映したものになっています。

例えば黒のこの靴は、上記向かって右の写真ように、店頭に並んでいる時はまるで「炭を濁らせたような」渋い色合いですが、靴クリームでお手入れすると向かって左の如く、同じ革とは信じられないほど明るいツヤと透明感が出て、表情がガラッと変わります。ともすれば没個性的になりがちな黒で、これだけ色の変化を愉しめる靴って、そうザラにはありませんよ! 小生ならば敢えて黒ではなく紺の靴クリームで磨き、インクのブルーブラック色のように育ててみたくなります。

もちろん茶やベージュと言った他の色も同様で、素朴さが華やかさに次第に変化してゆく過程を、是非とも各自のやり方で味わっていただきたいと思います。小生も実験させてもらいましたが、靴クリームを笑ってしまうほど素晴らしく吸収する革なので、お手入れが苦痛ではなく、必ず愉しみになりますよ。

履きはじめだけ、少々注意

茶・内羽根キャップトウ
ゼルビーノシリーズの茶色です。まるで紅葉の枯葉のような渋い色合いが、時を経て鮮やかに変化してゆきます。茶色の替え紐で顔立ちに品を加えることも可能です
ただし純粋ゆえの注意点も少々ございます。上述の話しでも察しがつくとは思いますが、この革は水分や油分を大変吸収しますので、履きはじめの段階で雨に濡らしてしまうのは、シミが残る原因になるので極力控えたいところです。

また、履きはじめの段階で革の表面にキズが付いた場合、普通はそれを目立たなくさせるべく靴クリームを塗りたくなりますが、これも控えた方が良いでしょう。シミの原因となり却って逆効果、目立ってしまうからです。そのため最もキズの付きやすいつま先部にのみ、新品の時点で同色の油性ワックスで仕上げを入れてますが、結果的にこれが後の手入れの目安の色にもなるようです。

小生の「シューケア技術向上講座 一番の基本。スムースレザーの革靴のケア!」のいきなり例外になってしまいますが、履きおろしの際に靴クリームを塗る必要は、この靴に限ってはありません。この革の持つ素朴な風合いをまずは堪能しましょう。次第に履きこんで汚れやキズが目立ち始め、オリジナルの一足にしたくなった時、初めて靴クリームを用いてお好みの色合いに仕上げてゆけば宜しいかと思います。

ところで、これって何かの愉しみ方に似ていませんか? そうそう、美味しいコーヒーの飲み方と一緒です。初めはブラックで素材そのものを味わい、後半戦はミルクと砂糖とのハーモニーを思いのまま愉しむ。この靴でも汚れや焼けも後で生かして手入れをすればいいわけで、時を経て初めとは違った味わいとなる「粋」が解る方に履いてもらいたい1足です。

この靴のもう一つの特徴などは、
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