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プレーントゥの革靴をビジネスシーンで履くには内羽根?外羽根?

革靴の一スタイルである「プレーントゥ」は、ストレートチップなどに比べ質朴な印象ですが、その汎用性の広さに気付くと面白く履ける革靴です。大きく分けて内羽根式と外羽根式のものがありますが、ビジネスで使うときはどちらがおすすめかなど解説します。

飯野 高広

執筆者:飯野 高広

靴ガイド

プレーントゥの革靴……ビジネスにおすすめなのは?

プレーントゥをビジネスシーンで履くには内羽根?外羽根?

一応全て黒のプレーントウ、しかも全てイギリス製。でも表情は大分異なります。

色が黒なので、チョッと区別が付きにくいかもしれませんが、これらの4種類の靴は、いずれも「プレーントウ」と呼ばれているものです。文字通り、爪先や縫い目などに何も飾りを付けてないシンプルなスタイルの靴を、こう総称します。厳密には、足を紐ではなくバックルやゴムで固定する靴にも「プレーントウ」は存在するのですが、今回は一般的にそう呼ばれる紐靴のものについて、詳しく見てみましょうか。

<目次>  

プレーントゥの「外羽根式」、かつてはビジネスマン必携の靴だった

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外羽根式の代表選手、チャーチのシャノン。イギリス製ですが、この靴はアメリカントラッドな装いの方がマッチします。

上の写真のような外羽根式で鳩目が4~5個あるものを、プレーントウとして真っ先に挙げる方も多いでしょう。ソールも厚く、アッパーとソールの境目を「ストームウェルト」と呼ばれる細い革で覆い、防水・防塵性を高めているので、素朴でどっしりとした印象を与えます。もちろん、履き心地も頑丈そのもの。

1960年代~90年代初めまでにビジネスマンになられた方でしたら、仕事用としてこのスタイルの靴を、一度は履かれた経験がおありかと思います。長く歩いてもヘタリが少ない頑丈さもさることながら、当時のビジネスウェアの基準だったアメリカントラッド的な装いと、この靴の風貌とは大変相性が良かったからです。オールデンなどアメリカのブランドに、このスタイルの普遍的な名作があるのも頷けます。

またカジュアルいやカントリーユースの靴としても、このスタイルは定着しています。その代表例が、イギリスのトリッカーズのものでしょう。一見上記のビジネスユースとは対照的ですが、タフさが求められるという意味では、どちらも共通です。
 

プレーントゥの「Vフロント」は結構使える

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ロイドフットウェアのVフロント。流行をむやみに追わない落ち着いた表情なので、汎用性が本当に高い靴です。

外羽根式のプレーントウのうち、鳩目の一番爪先寄りの位置から羽根がV字状に広がるスタイルのものを、特にこう呼びます。鳩目の数は1~3個と少な目で、その位置も高目なので足の甲部をあまり締め付けず、どんな足の持ち主にも比較的フィットしやすい靴です。

このスタイルは、伝統的にクロケット&ジョーンズのようなイギリスのメーカーのものに傑作が多い気がします。実際イギリスに行くと、黒のキャップトウやブローグ系の靴に混じって、ダークスーツに合わせてこの靴を履いているビジネスマンも多く見かけます。肉体的にも精神的にも、ストレスをあまり感じずに履けるスタイルだからでしょう。

ヨーロッパでも大陸側に行くと、この靴は茶系がイギリスよりも明らかに多く履かれているだけでなく、黒のこれをフォーマルユースに用いるケースも、目立ってきます。例えばタキシードのような夜間の宴用の礼装には、本来は黒のオペラパンプスか内羽根式のプレーントウを合わせるのですが、その代用として堂々と使われているのです。鳩目の数が少ないので、品良く見えるスタイルだからかも知れません。

もちろんジーンズ姿にでも違和感は全くありません。ということで、汎用性の大変高いこのスタイルは、言わば黒のニットタイ的な存在。旅行の際などに黒の靴を一足だけしか持って行けない場合は、これがあると大変重宝しますよ。もう少し日本でも履かれて欲しいスタイルの靴であります。
 

プレーントゥの「内羽根式」はかなりかしこまった印象

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内羽根式の代表選手、エドワード グリーンのカーネギー。この種の靴が今一番多く見られるのは、確かにクラッシックのソワレのコンサートの、舞台上です。

汎用性の高い外羽根式のものに比べ、内羽根式のプレーントウは畏まった印象が、大変強くなります。個人的には、このスタイルだけは同じプレーントウでも茶系は眼中になく黒のみ、使い方もビジネスユース以上で、できればセミフォーマルユース以上に限って使いたくなります。

実際黒のこのスタイルは、燕尾服やタキシードと言った「夜間の宴用の礼装」には欠かせない靴です。より厳密には、このような場には黒のエナメルのオペラパンプス(甲に蝶ネクタイ状の飾りが付いた男性用のパンプス)や、内羽根式のプレーントウでも黒のエナメルのものを履いてゆくのが正式です。

エナメルの黒が選ばれたのは、舞踏会で一緒に踊る女性のドレスを靴クリームで汚してはならない、と言う古の紳士の配慮から。でも今日の普通の男性にとって、エナメルの靴とかパンプスを履くのはもはや心理的にシンドイですし、当の靴クリームも19世紀に比べれば格段に進歩しています。なので、黒の表革のものであっても、ピカピカに磨き上げた内羽根式プレーントウであれば、格式ある場でも今日ではまず大丈夫です。

ただし、モーニングなどの「昼間の儀式用の礼装」に合わせるのは、このスタイルではなく「内羽根式のキャップトウ」の方がより相応しいとされています。そのあたりの微妙なマナーの違いには、十分に気を付けて下さい。
 

プレーントゥの「ホールカット」は技術力がないと作れない

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ロイドフットウェアのホールカット。この靴店はこのスタイルの靴でも、以前から定評があります。

プレーントウのうち、縫い合わせが踵部にしか存在せず、「タング」と呼ばれる鳩目の下で甲を包むパーツ以外は一枚の革で構成されたものを、特にホールカット(Whole Cut)と呼びます。ワンピースと呼ばれる場合もあります。

縫い合わせが最低限の分、写真でご覧の通り見え方もシンプルの極致。ただ、その分製造技術や木型の良し悪しが如実に現れてしまう靴でもあるわけです。また、通常よりも大判の革を用いなければ裁断できないため、革の品質も高いものが求められます。つまり、このスタイルの靴を売れること自体が、靴メーカーやブランドとして品質に自信を持っている何よりもの証明、と言えるのです。

いや、シンプル以上にミニマルな印象が全面に出てくるスタイルなので、合わせられる服の範囲は広いものの、その合わせ方にはチョッとしたコツが要ります。ビジネスであれカジュアルであれ、複雑な柄物より無地であまり凝ったデザインでないものと組ませるのがお奨めです。しかも身体にしっかり合ったものを選べば、靴も服も不協和音を出さずに、着る人自身を引き立てる装いとなります。
 

単純だからこそ面白いプレーントゥ

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プレーントウ、特に黒のVフロントは「履き回す」のを覚えるのに相応しい靴です。ジーンズはもちろん、タキシードでも、どうにか合わせられます。

いかがでしょう?同じ「プレーントウ」の名を持つ靴でありながら、その性格はプレーンどころか、それぞれの味付けが濃厚に加わっているのがご理解いただけたかと思います。英語の「Plain」には、「装飾のない」という意味だけでなく、「単純な」とか「明瞭な」いう意味も同時にあるはずです。これらの靴を眺めていると、それは突き詰めていったがゆえの単純さ、複雑なものを包括できる明瞭さなのだと教えてくれます。

汎用性が高くて、装飾もないので靴磨きも簡単! ですから革靴初心者の方にも安心してお奨めできるスタイルではあります。でも、一番履いていただきたいのは、「Plain」の真意が理解できる、年齢ではなく精神面で大人の男性です。

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