取材なんかでギルド(日本のビスポーク工房)に顔を出すと、いつだって一心に靴をつくっている男がいる。挨拶しても会釈程度で、ほとんど言葉を交わすことはなかった。江川治さんは、いかにも職人然としたオーラをもっていて、正直、コエーなんて印象だった。
見方が少し変わったのは、作品展で発表された何ともユニークな靴に驚き、取材を申し込み、初めてきちんと話をしてからだった。その靴は、爪先にミニチュアの鍵盤が埋め込まれていた。ビートルズが好きで、オノ・ヨーコがジョン・レノンに贈ったグランド・ピアノをモチーフにしたんですと語る江川さんは、口数こそ多くはないけれど、誠実で、あたたかみを感じさせた。
人づてに、江川さんが独立したと知ったのは去年だったろうか。独立後はまだ会ってないのだけど、ホームページをのぞくと、教室は賑わっているよう。人柄はもちろんだけど、今、日本で数本の指に入る靴職人と僕は思っていて、生徒が集まるのは当然といえば当然。ホームページを見る限り、ビスポークもやっているよう。興味のある方はぜひ――。
スナッグ・シュー・スクール
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