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チーニーの靴はなぜ日本で愛されるのか?その魅力と特徴とは

英国既製靴のなかでも、とくにコストパフォーマンスが高いと評判のチーニー(CHEANEY)。有名セレクトショップから絶大な支持を受けているブランドでもある。今回はチーニーのセールスマネージャーであるフィリップ氏にアレコレ質問してみました。

倉野 路凡

執筆者:倉野 路凡

メンズファッションガイド

チーニーというブランドの特色

英国のチーニー(CHEANEY)のセールスマネージャー フィリップ・ウォルトン氏が来日し、運良く取材する機会に恵まれました。
 
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チーニーのセールスマネージャーであるフィリップ・ウォルトン(Philip Walton)氏。日本へは年に2度来日。イギリス国内をはじめ、アメリカ、イギリス、オランダ、フランス、ロシア、北欧など、世界中を飛び回っている多忙な方なのである。


僕自身、チーニーの歴史とか、チャーチと同じグループであるとか、セレクトショップで扱っているといった情報くらいは知っているものの、それほど詳しくは知りませんでした。ここぞとばかりに、あれこれ聞いてきました。

倉野:チーニーの特色を教えてください。

フィリップ氏:英国ノーザンプトンの他の靴メーカーはクラシックな路線を継続しているところがほとんどですが、チーニーはクラシックな路線をおさえつつ、コンテンポラリーな靴も製造しています。お客さんの要望だったり、自分たちの提案を反映させているわけです。しかも自社でデザイナーを抱える、ノーザンプトンでは珍しいメーカーです。

倉野:いつ頃からそういう方針で靴を作っているのですか?

フィリップ氏:11年前に現在の社長が就任してから根本的に変わりました。お客さんが求めているものを作るということです。これまでチーニーの靴は靴専門店でしか販売していませんでしたが、イギリスでは7年ほど前からメンズショップで扱うようになりました。

日本ではもっと昔からポール・スミスやセレクトショップで展開しています。ファッションと靴は常に連動していますから、すばやく我々の耳にトレンドの情報が入ってきます。

倉野:日本ではセレクトショップの別注モデルのイメージが強いですね。

フィリップ氏:そうですね、現在ではトゥモローランド、エディフィス、シップス、ユナイテッド・アローズ、MEN’S BIGIなどで取り扱っていただいています。各ショップのバイヤーがここ(渡辺産業)へ来て、アッパーのデザインや、どのラスト(木型)にするかなどを決めます。その企画を持ち帰ってノーザンプトン州のデスバラーにある自社工場で製造するというわけです。

倉野(心の声):別注が多いというのはいいことだけど、チーニーのオリジナルデザインが見えてこない……。チャーチやエドワード・グリーンみたいにラスト(木型)の番号で覚えられないし……。そのあたりを聞いてみますか。

倉野:現在どのくらいのラスト(木型)の種類があるのですか?

フィリップ氏:古いラストも使ったりしますから、最低でも50ラスト。トゥモローランドはあえて古いラストを使ったりしています。

倉野:そんなに!すごいですね。代表的なラスト(木型)とかあるのですか?

フィリップ氏:ラスト3888はチーニーのオンリーネームで日本でも展開しています。ベーシックなラストだと思います。他にはロングセラーになっているラスト10298です。
 
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ラスト10298を使ったRALEIGHというモデル。アッパーはチェスナット ハンドバーニッシュドカーフ。この形けっこう気に入りました。

 
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上のモデルを横から見たところ。適度なロングノーズがいい感じです。

 
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トゥはセミスクエアでチゼルトゥ。洗練されているけれど、しっかり主張しているトゥです。


倉野:ラスト10298はロングノーズですね。少しチゼルトゥ気味のセミスクエアですか。このくらいのロングノーズならコーディネートしやすそうですね。ボクでも履けそうです(笑)。世界的に見てロングノーズはどうなんですか?

フィリップ氏:もうイタリアではラウンドトゥになっていますね。日本もそろそろ……。これは余談ですが、最近まで日本ではUチップが人気でしたね。でもイギリス、フランス、アメリカなどの世界の靴マーケットを見ても、Uチップが売れていたのは日本だけなんですよ。

倉野(心の声):間違いなくエドワード・グリーンのドーヴァーの影響だな……。
 

内外価格差がほとんどない

倉野:代表的なラスト(木型)があるということは、チーニーネームの定番モデルもあるのですか?別注モデルを見る機会が多いので……。

倉野(心の声):かなり鋭い質問をしちまったぞ。怒ってないかな。

フィリップ氏:セレクトショップ的な視線でいうと、ラスト3888のプレーントゥやストレートチップが定番でしょう。繰り返しになりますがチーニーはクラシック&コンテンポラリーな靴作りをしているユニークな存在なんです。そういう意味でチャーチのチェットウィンドのような定番モデルは存在しません。
 
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ラスト3888を使ったUチップ、プレーントゥ、ストレートチップ。こちらはすべてWネームではなく、チーニーのオリジナルです。


倉野:フレキシブルがウリのチーニーらしい技術はないのですか?

フィリップ氏:このクラス、価格帯の英国既製靴のなかでは、いち早くアンティーク仕上げを採用しています。他には、2年ほど前に開発したマトリックスソールです。グッドイヤー・ウエルト製法ではどうしてもコバ(革の裁断面)が張り出してしまいます。
 
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これがマトリックスソール。コバを削って丸みをもたせているので、ドレッシーな雰囲気がでる。グッドイヤーウエルト製法特有の無骨な感じが苦手という人にもおすすめ。


この特殊なソールはコバを削って丸みをもたせています。しかも真横から見るとソールがかなり薄い。しかし体重がかかり磨耗しやすい要所は、普通の厚さを保っています。耐久性と見た目のエレガントさをあわせもったソールです。最近はチャーチの一部のモデルもこのソールを採用しています。
 
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マトリックスソールはソール全体を薄くするのではなく、体重のかかる部分(ちょうど文字が刻印されいるあたり)は普通の厚みにして、磨耗の少ない縁側のみ薄くしている。


倉野:チャーチとは同じグループですが、技術交流とかあるのですか?

フィリップ氏:このソールは例外的なもので、工場も違いますし、デザインも別です。

倉野:チーニーはチャーチの半分の価格設定ですが、クオリティも劣っているのですか?

倉野(心の声):またしても鋭い質問をしてしまった。でも知りたい……。

フィリップ氏:日本での販売価格はチャーチの半分程度の4万円台後半です。実は、海外との内外価格差をなくす努力をしているため、ロンドンでも220~230ポンド(4万円台半ば)くらい。廉価モデルで140~150ポンド(約3万円)くらいです。

工場で1足あたりにかける作業は160工程で、チャーチとそれほど変わりません。ただチャーチのほうがハンドで行う工程が多いです。アッパーの素材や表からは見えない部材もチャーチのほうが厳選された上質のものを使っています。といってもチーニーも上質のものですよ。

倉野(心の声):内外価格差があまりないというのはありがたいことだ。腕時計でいうとブライトリングみたいなもんだな。ウエストンなんか価格差あり過ぎだもんねー。
 
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今シーズンの新作モデルがずらり。洗練されたデザインが目立つのもチーニーらしい。


渡辺産業が運営するBRITISH MADEの記事「スタッフに聞く ジョセフチーニー サイズの選び方」で、それぞれのモデルの解説、Q&A形式のインタビューなどで、サイズと選び方について紹介しています。チーニーに興味を持った方、これから購入予定の方はご参考にしてみてはいかがでしょう?

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