車検ごとには交換したいブレーキフルード

F1のブレーキローターがブレーキング時にまっ赤に焼けているシーンを1度は目にしたことがあると思う。一般走行ではそこまで温度が上がらないもののかなりの高温となることは確か。必然的にブレーキフルードにもかなりの熱が伝わる。

では、その熱によってブレーキフルードが沸騰してしまったらどうなるか。配管内に気泡が発生してしのうのだ。気体は液体と違って圧力がかかると体積が小さくなるため、そのような状態になると伝達効率が低下し、スポンジを踏んでいるかの如くペダルの踏み応えがなくなってくる。そして、最悪の状況ではスコンと床についてしまうことに。いわゆるペダルが抜けるといった状態で、ブレーキがまったく効かなくなってしまうのだ。

これは「べーパーロック」と呼ばれるトラブルで、それを防ぐためにブレーキフルードには高い「沸点特性(沸騰しにくさ)」が要求される。性能ランクを表わす表記としてもっとも一般的な「DOT規格」は、その「沸点特性」を定めもの。新品時の「ドライ沸点」や吸水状態における「ウェット沸点」、「動粘度特性」などからDOT3~5というランクに分けられており、数字が増えるほどに高性能になる。具体的には、DOT3でドライ沸点が205℃以上、ウェット沸点で140℃以上。DOT4はドライ沸点で230℃以上、ウェット沸点で155℃以上、DOT5はドライ沸点で260℃以上、ウェット沸点で180℃以上、と規定されている。

さて、ブレーキフルードは一般に湿気を吸いやすい「グリコール・エーテル」を主要成分としており、使用していると水分を含んでくるのだ。「ウェット沸点」はそのような状態になったときの性能を表したもので、使用していれば沸点が低下してくる。水は100℃で沸騰するからで、古くなればなるほどに「ベーパーロック」を起こしやすくなるのだ。しかも、水分を含んでいるため、そのまま使い続ければマスターシリンダーやブレーキシリンダーの内壁にサビを誘発。その面を摺動するカップやシール類が酸化物の突起に擦れることで傷付き、圧力が低下すると共に液漏れを引き起こす結果ともなる。

1度でも経験すれば身に染みるが、走行中にそのようなトラブルに見舞われると大変危険な状況となる(筆者は過去に実際に経験したことがある)ため、神経質になるほどチェックするようになる。が、そんな経験はしないに越したことはない。ブレーキの効かないクルマは走る凶器で、自分ばかりか他人をも危険な目にあわせることになるからだ。

このため、ブレーキフルードは定期的に交換したい。それも正常に機能しているうちに交換することが重要だ。その交換サイクルは1年ごとが理想だが、最低限2年に1回(車検ごと)。自身の安全のために、この最低限の交換サイクルは順守したい。
 

ブレーキフルードは劣化すると変色してくる

新品のブレーキフルードは右側のように透明で、劣化してくると左側のように茶色く変色したり、濁ってくる。つまり、目視で判断できるわけで、安全を期すなら、少し透き通った程度の茶色をしているうちに交換したい。なお、ピストンカップ(シール)が摩耗・劣化するとゴムが溶け出すことで黒く変色してくる。このため、もしも黒っぽく変色していたら要注意!ただちにプロにチェックを依頼したい。


 

劣化したブレーキフルードの交換

1.古いフルードを抜き取る
まず、吸引機を使用してリザーバータンク内に残っている古いフルードをすべて抜き取り、新品のブレーキフルードを注入する。

2.交換機のアダプターをセットする

リザーバータンクにフルード圧送用のアダプターを組み付ける。

3.廃油受けをセットし電源を入れる

ブレーキキャリパーのブリーダーボルトに廃油受けをセットし、ブリーダーボルトを緩め、注入機のスイッチをON。これで自動的に入れ替わる。なお、整備作業に精通した人なら専用機器を使わずとも交換可能だが、ビギナーがヘタに手をだすと痛い目にあうので要注意!交換作業はすなおにプロに依頼した方がよい。


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