カーメンテナンス/車の点検ポイント

交換サイクルが長いため交換を怠りがち! デフレンシャルギヤオイルの交換

クルマが曲がるとき左右輪に回転差が生じる。それを吸収しているのがデフレンシャルギヤで、潤滑用のオイルが注入されており距離を走れば確実に劣化。交換を怠れば異音を発したりギヤが破損することも。要注意だ。

執筆者:鈴木 伸一


 クルマにはオイルによる潤滑を必要とする可動部が大量にある。しかも、定期的に交換しなければならない個所がいくつもある。その代表格が「エンジンオイル」で、これに関しては誰しも認識しているはず。
 ところが、旋回時の左右輪の回転差を制御する「デフレンシャルギヤ」やMT車の「トランスミッション」用の潤滑オイルの重要性を理解している人は意外に少ない。交換サイクルが3万~4万kmごとと長く、密閉されたケース内に注入されているがために、簡単には点検・交換できないことが要因と思われるが・・・。
 さて、デフやミッションは大きさの異なる様々な形状のギヤの組み合わせから成り立っており、各ギヤは走行中たえず回転している。それだけに摺動面(擦れ合う部分)に発生する摩擦の影響は大きく、かつ駆動時にはギヤの歯にはかなりの荷重が加わる。
 このため、スムーズに回すためにはオイルによる潤滑が不可欠で、一般にエンジンオイルよりもはるかに粘度が高くて高荷重に耐ええる「ハイポイドギヤオイル」と呼ばれるものが使われている(FFの小型車ではエンジンオイルが使われていたり、ATFでデフレンシャルまで潤滑している車種もある)。走行中はかなりの高温になるものの独立した冷却システムを持たないため熱に強く、かつ高荷重のかかるギヤの摩耗防止といった、エンジンオイルとは異なる性能が要求されるからだ。
 しかし、注入量はデフレンシャルが1L前後、ミッションで2~3Lと少なく、ギヤが浸るくらいの量がケース内に溜められているだけ。各部の潤滑は、そのケース内に溜められたオイルをギヤで掻き上げつつ飛散させることで行われている。オイルに混ざりこんだ異物をろ過するフィルターもないのだ。それだけに劣化による影響は大!「ギヤ鳴り」や「ウナリ音」の発生などといった異音の原因になったり、最悪のケースではギヤの破損などによって万単位の修理代がかかることがあるので要注意だ。遅くとも5万km走行したら交換するべきで、通常は3万~4万kmのサイクルを目安に定期的に交換したい。
 なお、デフレンシャルギヤオイルやミッションオイルを交換するためには、クルマを路面と平行になるよう持ち上げる必要がある。排出口(ドレン)がケースの真下、注入口はケースの側面に設けられているからで、点検するにしても交換するにしてもクルマの下に潜る必要があり、個人レベルで交換するにしてもガレージジャッキとリジットラックが必須。しかも、粘度が高いため注入には圧力を加えて圧送する特別な器具が必要となってくる。また、FF車の場合は車種によって指定オイルが異なり、注入口の位置や注入量も違ってくる。さらに「LSD」が組み込まれている場合はLSD専用オイルを使わなければならない。このため、余程のこだわりがない限り、交換はその道のプロに依頼するのがベスト。それもなるべく信頼のおける整備工場に依頼したい。
●リヤ・デフレンシャルギヤオイルの交換
1.注入口と排出口はギヤケースの側面にある
FRや4WDのリヤ・デフレンシャルギヤのケース後方・側面には、注入口とドレンの2個のボルトがセットされている。上が注入口で、下が排出口(ドレン)だ。

2.リフトアップしてドレンを外す
リフトアップして、デフレンシャルの真下に廃油受けをセットし、デフケース側面下部に設けられているドレンプラグを外してギヤオイルを排出させる。

3.3~4万km走ればまっ黒
ドレンプラグの先端には磁石が取り付けられていてオイルに混じり込んだ金属粉を集める働きをしており、3~4万kmも走ると金属粉がたっぷり付着する。また、新品のギヤオイルを透明な容器に入れると裏側が透けてみえるが、3~4万km走行するとまっ黒に・・・。1度でもそんな状態を目の当たりにすれば、交換の必要性を痛感するはずだ。

4.新品オイルは注入器を使用して注入する
オイルが抜けきったところでドレンプラグを取り付け、注入口に注入器のノズルをセットしてギヤオイルを注入する。

5.注入口からあふれ出たところが適正レベル
注入口の下面がオイルレベルで、こぼれ出すまで注入したなら漏れきるまで放置後、フィラープラグを取り付けて終了だ。
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