宝石博物館めぐりの締めくくりは、ヴェネツィアを象徴するバシリカ、《サン・マルコ聖堂》です。金のモザイクをふんだんに使った聖堂の内部は、建物そのものがまるで黄金づくりの巨大な宝石箱のよう。右の側廊に行くと「宝物室(TESORO)」と書かれた目立たない入口がありますので、まずはここから見学してみましょう。
小さな宝物室のガラスケースには、ビザンツの素朴なエナメル画、聖杯、聖遺物容器、十字架などが並んでいます。特に、コンスタンティノープルで作られたという聖ミカエルのイコンは、クロワゾネやシャンルベ(ともにエナメルの一種)、とりどりの宝石で華やかに彩られていて、色の華やかさに目を奪われます。
ただ残念ながら、この宝物室のほとんどの宝石類は模造。オリジナルの石は、抜き取られて別な聖具に転用されてしまったのでしょう。高位聖職者がはめていた大きな指輪も興味深かったのですが、やはり宝石は模造品でした。
▲左:「聖ミカエルのイコン」コンスタンティノープル、11~12世紀。
金細工とエナメル、多数の宝石で描かれた大天使。
剣を手にしていることから、ミカエルであることがわかります。
優れたエナメル技術が申し分なく発揮された佳品。
右:「ニコポイアの聖母子」ビザンツ、12世紀。▲
私が拝観したときには、このイコンは展示されておらず
聖母子を飾っていたダイヤモンドの宝飾品のみ公開されていました。
Copyrights: Scala/Firenze,1999