「帝王切開は陣痛なしで楽だ」という勘違い

帝王切開なら陣痛なしという無知や勘違いをなくそう

帝王切開なら陣痛なしという無知や勘違いをなくそう


私は教室やさまざまな講演活動などで、「自然なお産の良さ」を精一杯お伝えしています。それは「陣痛が痛いからお産をしたくない」とか「帝王切開の方が楽に産める」と思っている人に、産まれてくる力のこと、力を出し切ったお産の素晴らしさを理解して欲しいという思いがあるからです。しかしそれは、「帝王切開になってしまったらダメ」という意味では決してありません。

世の中には帝王切開が「陣痛がなくて楽だ」という間違った情報もあるようです。これから産む立場の人がそう思っているなら、それはあまりにも偏りがあります。ぜひ、きちんとした情報やリスクを勉強してから出産に臨んで欲しいと思います。

問題は、「自分自身は自然出産を望んでいたし、そのために食事や運動にも気をつけていたのに、帝王切開になってしまった」という人へのケアです。特にメンタル面で傷ついてしまったという人が多いように見受けられます。その最大の理由が周囲の無知による心ない言葉……。「帝王切開だったから痛くなってよかったね」とか「産道が傷つかなくて良かったね」など。ひどい場合は、「帝王切開だったから産みの苦しみを知らない」「自然分娩で産まれなかった子どもは我慢強くない」など、まったくの迷信ともいえる言葉で心底傷ついてしまったという人もいます。

まず、帝王切開は手術ですから、術後は痛いです。1人目を帝王切開で産んで、とても痛い思いをした人が2人目を身ごもって「とても痛いけど、2人目もがんばって産みます」と前向きに新しい命を迎える心構えをしています。そこには母としての凛とした姿があります。そんな人に向かって、勘違いに端を発した言葉で傷つけるのは本当に嘆かわしいことです。
 

帝王切開になるのはどんなケース?

それにしても「帝王切開」という字面にはちょっと迫力があります。語源については諸説あり、日本語訳はドイツ語の「Kaiser=皇帝」「Schnitt=手術」が元になっているといわれており、日本で最初に帝王切開手術が行われたのは1900年とのこと。このときに産まれたのが後の国立国会図書館副館長で美学者の中井正一という方だそうです。

帝王切開とは、自然分娩つまり経膣分娩が不可能、あるいは危険性が高いと判断された場合に、子宮を切開して、赤ちゃんを取り出す方法です。赤ちゃんの大きさや母親の健康状態などから診断し、陣痛が起きる前に計画的に行う「予定帝王切開」と、お産の途中でトラブルが発生し、母子が危険と判断されたときに行う「緊急帝王切開」があります。

適用されるのは、胎盤が子宮の出口を塞いでいるため赤ちゃんが出てこられない「前置胎盤」、赤ちゃんの頭がお母さんの骨盤に比べて大きかったり、骨盤の形に問題がある「児頭骨盤不均衡」、赤ちゃんが子宮の中で頭を上にした姿勢でいること「逆子(骨盤位)」などのケースがあります。逆子の場合でも自然出産ができる産院もありますが、「赤ちゃんが片方の足を曲げている」といった場合などは、自然出産が難しいとされて予定帝王切開が選ばれることが多くなります。

また緊急帝王切開は、赤ちゃんの出生前に胎盤が剥がれて子宮内に大量の出血が起こる「常位胎盤早期剥離」といった緊急のトラブルが起こった場合に適用となります。

緊急帝王切開と聞けば助産院で出産する予定の人は心配になるかもしれませんが、帝王切開への切り替えを判断するのは、ほとんど分娩第1期の時点で、手術のできる病院へ搬送されます。

この帝王切開は近年、世界的に増加傾向にあり、日本でも約16%、米国では29%の帝王切開率となっております。ブラジルや韓国では約40%とかなり高い数字です。韓国では美容整形率も高いということですので、体にメスを入れることに抵抗感が少ないのではと考えられます。またブラジルには「ハニー・バジョイナ」(甘い膣)という考え方があり、彼を迎え入れる性器としての膣を守りたい。産道が少しでも傷つく可能性を避けて、下腹部を切開したほうがよいという考え方があるそうです。お国柄もあるとは思いますが、WHOは帝王切開率をどんな国でも10%以下にするように勧告しています。
 

帝王切開でも幸せなお産。自然分娩がゴールではない

どんなお産でも、ベストをつくして、その後も続く子育てにつなげましょう

どんなお産でも、ベストをつくして、その後も続く子育てにつなげましょう


帝王切開を受けたことによってメンタル面で傷ついてしまったという人について話を戻します。私はそのとき最善を尽くしたのであれば、いいお産も悪いお産もないと思っています。忘れてはいけないのは、「自然分娩がゴールではない」ということです。予期せず帝王切開となって、それまでがんばってきた人ほど挫折感を持ってしまうかもしれません。でも自然なお産のためにがんばってきたことは無駄ではないのです。

中には予定帝王切開が決まったとたん、マタニティヨガに通うのをやめてしまったという人もいますが、それこそ不自然な選択だと思いませんか? 適度な運動で体を柔らかくしてお産に臨むことは、たとえ帝王切開であっても大切なことです。運動不足で下腹部に脂肪が付きすぎていると、その脂肪をかき分けて切開しなくてはなりません。それは手術する上でもデメリットです。

生理的に順調に進むように最善を尽くし、そして医療が必要な場合は助けを借りる。そうしたプロセスを歩んでいれば、帝王切開でも幸せなお産はいっぱいあります。

そのためには、まず産院の丁寧な説明とケアが必要だとは思います。現在お産がどのような状態なのか、どういう理由で帝王切開が必要なのか、産後のリスクにはどのようなものがあるのかといったことの説明もなしに、有無を言わさず医療介入となってしまったケースに心の傷が残ってしまうようです。「陣痛を体験したい」という人に、一度自然に陣痛がついてから手術を行ったり、帝王切開後でも赤ちゃんを胸に抱くカンガルーケアをしていたり、母乳育児のサポートをしていたりといった配慮のあるケアをやっている産院もあります。

だからこそ「帝王切開については何も知らなかった」ではなく、事前に正しい知識を勉強しておくことが大事です。産院から説明についても、やはり自らが積極的に納得いくまで説明を求めるという姿勢も大切でしょう。

私は小学校で「命の力をお話しする誕生学プログラム」を実践していますけが、各教室には帝王切開で生まれたお子さんも10~15%はいるわけです。そのときには「自然分娩の場合は産道といういのちの道を回って進んで産まれて来るけれど、何らかの理由でそれが難しかった場合は、たくさんの人にいのちの道を作ってもらって、見守られながら産まれて来るという方法もあるよ」ということをお伝えしています。

いずれにしろそうした心の持ち方は子育てに反映されるもの。がんばった末の帝王切開で、自分の命の力に対して真剣に向き合ったという思いを大切にして、どんなお産だったとしても誇りをもって子育てをしましょう。

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