子宮って、赤ちゃんを育てるだけ?他に何かしているの?
子宮は、赤ちゃんを育てることだけに特化した「スペシャリスト」です。卵巣は盛んにホルモンを分泌しているけれど、子宮は特に何も出しているわけではありません。医学的な機能はただ、毎月繰り返し受精卵のベッドを準備し、受精卵が来たらそれを受け入れ、育てるだけなのです。ただ、本当にそれだけのことなのだけれど、これがとても大きいことみたいです。というのは、子どもをはぐくむ子宮は、女性らしさのシンボルなんですね。それで、筋腫などで子宮を摘出すると、自分が女性でなくなってしまうような喪失感を感じる人がいます。
それで最近は、医学的な意味はなくても、また「もう子どもは産まない」という人でも、できるだけ子宮をとらないように治療すべきだという考えも出てきました。子宮がなければ生理がなくなって楽、と思う人もいますが、ある意味では、子宮は子どもを育てるだけではないのです。
人口子宮ってできるんでしょうか?もし、できたら、
女性のからだの外にある人口子宮で赤ちゃんが育つ日が来る?
最近は、できないだろう、と言われています。子宮というモノを作ることはできるかもしれないけれど、その中で赤ちゃんを育てていくのがとても難しいから。子宮は胎盤を通じて栄養を送るけれど、それも、ただ送っているだけではありません。微量な物質を送っていることがわかってきて、その赤ちゃんにいいように調節しているのです。
羊水の量なども、とてもうまく調節されています。すべてがうまくバランス良く管理できるのが、子宮のすごいところなのです。お腹の中の環境に何か問題が起きて、たとえ早産になっても早く生まれた方が安全と判断したら、陣痛を起こして赤ちゃんを出そうとする--そんなことまで、できるんですよ。
また、このごろは、母と子との関わり合いが注目されています。少し前は、人間もタマゴにして産み、あとは機械にまかせてしまうと楽なのではないか、と考える人もいたようです。でも今では時代が変わり、たとえ可能でも、人口子宮の意義は薄れたように思います。
子宮にしかないユニークな特徴って?
子宮は、一見したところ単純な筋肉の袋に見えますが、驚くことがたくさんあります。最も驚かされるのは、自分ではない存在を受け入れ、育ててしまうこと。身体は、他のどの部分でも、自分ではないものが来たら受けつけません。それが子宮は、たとえば代理母のように、他人の子どもであっても受け入れることができるのです。この、すべてを受け入れてしまう寛容さは、本当にすごいと思いますね。
~子宮のすべてシリーズ~
・実感!これが子宮です
・妊娠が始まる時の子宮
・臨月の子宮は普段の100倍!
・産後の子宮
・子宮の一生
・人口子宮はできる?
■監修・竹内正人先生(東京・葛飾赤十字産院 産科第二部長)
マタニティ誌やNHK教育「すくすく子育て」でご存じの方が多いかもしれません。毎日たくさんのお産や手術をこなす中、説明と笑顔を忘れないフレンドリーなドクターです。