子どもが幼稚園・保育園に馴染めないとき

子どもが幼稚園・保育園に馴染めないとき

子どもが幼稚園・保育園に馴染めないとき


「よりよい園」を探して入園したはずなのに、子どもが園で馴染めない……。「何か「おかしい」と気づいたとき、親はどうすべきか。今回は、そんな経験をしたある親子の体験談をもとに、「親としてできること」について考えてみたい。  

ある日、園から呼び出されて「入園が早かったのでは」と言われ

 
 朝起きることをあまりに嫌がるときは、子どもの話をよく聞いてあげて

 朝起きることをあまりに嫌がるときは、子どもの話をよく聞いてあげて

東京都内に住むYさん(38歳)は長女・長男と2人の子どもを持つ専業主婦。現在小学校1年生の長男が幼稚園に入園したばかりの頃のある出来事が忘れられない。

2人目の子どもである長男(当時3歳)が3年保育の幼稚園の年少クラスに入園して1ヶ月。5月の連休明けに先生に「お子さんについてお話したいことがあります」との連絡を受けて園に出向いたYさんは、そこで思いがけない話を聞く。「一旦引き受けておきながら申し訳ないが、もうしばらくお母さまのお手元におかれたほうがいいのではないか」と。

先生の話によると、長男はクラスで一斉に行われる「リトミック」や「折り紙」などのカリキュラムに参加することなく、教室を飛び出して人のいない小部屋に逃げ込む。クラスの友達が「遊ぼう」と声をかけてくれても逃げるばかりだとのこと。上の子である長女は当時5歳で年長クラスに通っており、その園の教育方針には信頼を置いていただけに、Yさんにはショックだった。
 

幼稚園・保育園が「個性」を競う中、置き去りにされる子供たち

現在の幼稚園・保育園は少子化の中、「早期教育的な要素を多く取り入れている園」から「外遊び中心でのびのび・どろんこ系の園」など多様化している。「いい園」の基準が各家庭の方針ごとに、大きく異なるのが現状だ。そのため、親の考える「いい園」と子どもにとっての居心地のよさが、乖離してしまうということも起こり得る。一般的に人気があって「いい」と言われる園でも、子どもによっては雰囲気に馴染めず、苦痛な時間を過ごしているということもないわけではない。
 

入園前:子どもに園が合っているか見極める方法

前述のYさんは「思い返すと、長男は早生まれで上の子である長女(当時5歳)に比べて言葉も遅かった。でも長女はこの園で楽しく過ごせているから長男も大丈夫だろう、と楽観的に考え過ぎていたのかもしれませんね。」と当時をふり返る。

しかし一方でYさんは、「でも入園前に行われた1日入園で見極めるのは無理だったと思います。泣いている子はたくさんいるし、母親から離れられない子も多かったので、特にうちの子だけが合わないようには見えませんでしたから。」とも語る。

入園前に「自分の子どもと園の生活ペース・リズムが合っているかどうかを確認する」などのことはもちろんすべきだが、心配し過ぎるのもいかがなものか。

「“何か問題が起こったときにはきちんと対処するんだ”という意識を親が持ってさえいれば、それでいいのではないでしょうか。園選びに必要以上に神経質になるのも、あまり意味がないと思います。」とYさんは言う。

入園前にできること
  • サイン……見学や1日体験入園などのときに、子どもがその場所にいること自体を嫌がらないか?
  • 対処法……自分の子どもと園の生活リズム・ペースが合っているかどうかを確認する。しかし、入園前の見極めには限界も。心配し過ぎは禁物!
 

入園後:子どもが何かおかしいと思ったら?

Yさんは園の先生から「もうしばらくお母さまのお手元で」という話があったあと、子どもはすぐに休園させた。このまま園生活を続けて、「園での約束を守れないダメな子」というレッテルが子どもに貼られてしまうことだけは避けたいと思ったからだ。

「子どもが登園を嫌がった場合は、できる限り子どもの訴えを受け入れて休ませるべき」と言うのはカウンセラーの内田良子氏である。子ども相談の現場で30年あまりの経験を持つ内田氏の著書『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』では、最近の園児の登園拒否についてこう書かれている。

かつて、就学前の幼い子どもたちが、集団生活を嫌がって、泣いて駄々をこねたり、裸足で逃げ帰ってくるのは当たり前のことでした。親も先生も、笑って見過ごす日常的な光景の一つでもありました。ところが最近の相談では、親にも、幼稚園、保育園の先生にも、まるで余裕がないのです(中略)。「休みグセをつけたくない」という先生と親にはさみうちにあった幼い子どもたちは、正直に「幼稚園に行きたくない!」と口ではいえず、からだで行きたくないと表したり、行動で訴える表現が目立っています。 

言葉で表現できない気持ちが、身体の不調となって表れることもある。そういった点から考えると、「園が子どもにとって不快な場所だったとしたら、できるだけ早く環境を変えたほうがいいだろう」というYさんの判断は、適切だったと言える。内田氏によれば、「行きたくない」と言えずにいるうちに、子どもに「園で食事ができなくなる」「チック(咳払いなど)」などの症状が出る場合もあるとのこと。

そういった事態を避けるためには、まずは休ませて子どもの「行きたくない」という気持ちを受け止めるべきであろう。その先のことは、それからゆっくり考えればよいのだ。子どもの心と身体以上に優先すべき園生活などないのだから。

入園後、異変に気づいたら

サイン
  • 朝、行きたがらない。休日は早起きなのに、平日になかなか起きない。
  • 「登園時親と別れるときには泣くが、その後はケロッとして遊んでいる」なら、あまり心配はいらない。
  • 「親の姿が見えなくなってからもずっと園で泣いている」などの場合は要注意。
対処法
  • 園児の場合は「登園をいやがったら休ませる」が基本。
  • 同時に園の先生に相談。担任で納得がいかない場合は主任や園長にも話してみる。
  • 子供が納得するまで休ませる。
  • 年少児の場合は、成長を待つことで年中・年長からスムーズに復園できる場合もある。もしくは他に合う園があれば、転園するという選択肢も。
 

園に馴染めない……子どもときちんと向き合う

Yさんの場合、当初は年中から復園するつもりでいたが、その後他の園を見学するうちに、幸い長男の個性を受け入れてくれる小規模の認可外保育園に出会うことができた。

「成長すれば解決する問題なのか、その子の個性と園の相性の問題なのかを1年間考えて、うちの子の場合は転園という結果になりました。」とYさんは言う。転園後の園で充実した2年間を送った長男は、現在元気に小学校に通っている。

「子どもによりよい環境を」というのは多くの親の願いである。「でも、“よい環境”を大人のものさしで考えただけでは、どうしても“受け入れられる子”と“受け入れられない子“が出てくるのは避けられないことではないでしょうか」とYさん。

園と子どもの相性。事前に見極められればそれに越したことはないが、後からでしか分からない部分が大きいのが現実だ。入園の前でも後でも、子どもの様子について「何かおかしい」と思ったら、「そのうち慣れるだろう」と見過ごしてしまわないこと。

子どもの言葉と身体表現の訴えに耳を傾け、まず子どもの気持ちを受け入れることが大事だ。それさえできれば、どんな選択をしようと子どもを必要以上に傷つけることは避けられるのではないだろうか。

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