狙われる日本人旅行者
バッグに気をつけて!
「どこででも多少の英語でなんとかなる」とか、「ガイドブックがあるから」「二人だから大丈夫」などの甘い考えは持たないようにしましょう。まずは渡航先の危険を把握することです。ガイドブックの活用も、事前に、特に安全対策のページをじっくり読むようにするといいでしょう「なんとなく被害に遭わないような気がする」「今どき、それほど危険なところはないでしょ」といった漠然とした考えはやめておきましょう。
また、日本の常識と思われていることが世界ではむしろ常識とは限りません。24時間営業のコンビニがいくらでもあり、夜中でも女性がミニスカートで携帯電話をしながら歩く……こんな情景はほとんどの外国ではあり得ないものです。「安全な国・日本」から警戒心を持たずに外国に行く日本人旅行者は、大金や何枚ものクレジットカード、キャッシュカード、携帯電話、デジタルカメラやビデオ、ブランド品などを持った、「狙いやすい・狙いたい・狙える対象」なのです。
渡航前に情報を得よう
渡航前には、外務省の「海外安全ホームページ」で、渡航先だけでなく、海外で起こりうる事件について知っておきましょう。たとえば、ヨーロッパでは「スリ」や「置き引き」が多いことや、東南アジアの国々では詐欺事件が多いなど、警戒すべき点が微妙に違うことがあります。とはいえ、狙われるのは、現金、財布やカード類、パスポートなど、またそれが入ったバッグ等ですが、場合によっては身体への暴行もあり得るでしょう。パスポートは、それ自体がまず狙われています。普段持ちなれないものですから、慎重に取り扱いましょう。人目に触れるように持って歩いたり、バッグにしまうところを見られないように注意が必要です。いずれにしても、日本人は現金やパスポート、カード類など価値の高いものを持っていると思われており、実際にそうしたものが盗難被害に遭っているのです。ネットで検索して、海外における被害について生の声を調べておくのもいいでしょう。
海外の危険情報をまず知っておくことが何よりも大切です。そして、その状況や結末をわが身に置き換えて考えてみることです。結果から逆算することで、弱点が見えてくる。その弱点を補強しておくこと」が、防犯ガイドが常々提案している安全対策の秘訣です。たとえば、「ヨーロッパでスリや置き引きに遭う」としたら、どんな状況か想像してみましょう。渡航先の空港で飛行機を降りたらそこはもう外国です。警戒心のない日本人旅行者はすでに目をつけられています。
「ちょっとトイレに」と思っていたらもうバッグ類がない、ショルダーバッグに入れておいたクレジットカードが全部入った財布がバッグの底を刃物で切られて抜き取られていた……そうした被害が自分の身に起きることを想像してみると、どうすればそういう被害に遭わずに済むか、自分で考えるでしょう。つまり、「さまざまな危険の実態を知って情報を得る。そしてそこから、自分の想像力を働かせて、そういう結果を招かないために何をすべきか事前に考えておく」ことが自己防衛の極意です。
つまり、自分に害をもたらそうとする者たちの情報(その手口など)を知っておき、自分の対応能力、警戒心の持ち方、被害に遭わないためにどうするかなどを知っておくことこそが、被害を防ぐ秘訣になるのです。これは中国の兵法家・孫子の“兵法”にある、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず(彼を知り己を知れば百戦殆からず)」相手のことを知っておき、自分の力も知っておけば何度闘っても負けることはない。というものです。