年末調整/年末調整で受けられる控除

老人扶養控除とは?祖父や祖母が対象「老人扶養親族」の要件【動画でわかりやすく解説】

70歳以上の祖父・祖母がいる人は、老人扶養控除の適用が可能かどうか確認し、適用ができるのであれば「扶養控除等(異動)申告書」に記載する必要があります。年末調整時の記載例も含め、「老人扶養親族」の仕組みや基準について解説します。

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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扶養控除・扶養親族、祖父や祖母の場合「老人扶養親族」という

扶養親族」と聞くと、どんなイメージを持ちますか? 通常は、就職が決まる前の子どもがいる場合を想像すると思うのですが、どうでしょうか。何となく「育児」「養育」といった言葉と結びつけ、対象となるのは子どもだけと決めつけていませんか? 扶養控除はおじいちゃん、おばあちゃんも対象にすることが可能で、その対象者のことを「老人扶養親族」といいます。

【老人扶養控除の要件とは?動画でわかりやすく解説】



税務上の扶養控除の要件について整理しておくと、次の4項目になります。
  • 6親等内の血族、3親等内の姻族といった親族であること
  • 合計所得金額が48万円(※)以下であること (※ 2020年からの改正項目)
  • 生計を一にしていること
  • 扶養親族が他の控除対象配偶者または扶養親族としての控除の対象とされていないこと
 

老人扶養親族とは?

上記4つの要件を満たせば、老人扶養親族の対象になるかどうかのポイントは、
  • 年齢70歳以上であること(2020年年末調整および2021年3月期確定申告であれば昭和26年1月1日以前に生まれた人)
が加わるだけです。通常の扶養控除が適用可能で、その人が70歳以上であれば、名称が「老人扶養親族」と変わるだけなのです。

では、老人扶養親族のうち、どのような人が
  • 合計所得金額48万円以下であること
になるのでしょうか。

おそらく収入源の大半は公的年金かと思います。公的年金受給額がいくらまでなら、老人扶養控除の対象となるかを次に見てみましょう。
 

老人扶養控除の要件合計所得48万円以下とは?年金受給者の所得の考え方

サラリーマンやパート・アルバイトの給与所得とは異なり、公的年金の所得区分は「雑所得」となります。雑所得は、公的年金等の収入金額(つまり額面)から「公的年金等控除額」を差し引いて求めます。

この公的年金等控除額とは、年金の必要経費のことであり、年金受給者の年齢によってその額は次のように異なります(2020年年末調整および2021年3月期確定申告の場合)。
  • 65歳以上(昭和31年1月1日以前生まれ)で総収入金額330万円未満
    →公的年金等控除額は110万円
  • 65歳未満(昭和31年1月2日以後生まれ)で総収入金額130万円未満
    →公的年金等控除額は60万円
公的年金等の収入金額-公的年金等控除額=雑所得48万円以下」であれば、老人扶養親族の所得要件は満たしていることになります。
所得が1000万円以下の公的年金等控除額を控除したあとの所得の速算表 (出典:国税庁資料より)

所得が1000万円以下の公的年金等控除額を控除したあとの所得の速算表 (出典:国税庁資料より)




したがって、上の式にあてはめれば

65歳未満の方 
  • 公的年金等の収入金額108万円ー公的年金等控除額60万円=雑所得48万円
65歳以上の方
  • 公的年金等の収入金額158万円ー公的年金等控除額110万円=雑所得48万円
という算式になるため、パートやアルバイトでいわれている基準の「年収103万円以内」より、基準が高いことがわかります。
 

別居であっても老人扶養控除が適用可能なケースも

ではもう一つの要件、「生計を一にしていること」とはどんな意味なのでしょうか。「生計を一にしていること」とは、必ずしも同居している必要はありません

一方で、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にしていること」として取り扱われます。そのため、同居は同一生計の中に含まれると解釈されます。

では、別居でも「生計を一にしていること」とされるのは、どんな状況を指すのでしょうか。例えば、勤務、修学、療養費等の都合で別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金(仕送り)がされている場合などが挙げられます。

したがって、「祖父や祖母を施設に入居させたが、その療養費を負担している」といったケースでは、その負担者からみれば同一生計という要件を満たしていることとなります。
 

同居か別居かで所得控除額に差がある

ただし、同居かつ同一生計であることと、別居だが同一生計であることでは、所得控除額が異なります。同居だと所得控除額は「58万円」なのに対し、別居だと48万円となります。

一般に、病気の治療のため入院していて別居している場合、その期間が結果として1年以上など長期にわたったとしても、同居とみなされます。しかし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません。こういった細かな状況でも相違するので、注意したいポイントです。
 

老人扶養控除のポイントまとめ

ここまでの内容をとりまとめると、以下のようになります。
  • 合計所得金額が48万円以下の祖父や祖母等:通常の扶養親族(控除額38万円)
  • 上記の条件に年齢が70歳以上:老人扶養親族(控除額48万円)
  • さらに、同居が常況:同居老親(控除額58万円)
 

老人扶養控除の申告方法

会社員が年末調整で老人扶養控除の手続きをするなら、「扶養控除等(異動)申告書」の扶養親族の欄に、対象者の名前・続柄・生年月日・住所を記入するだけです。

年間所得の見積額の欄がありますが、前述した「公的年金等控除額を差し引いた残りの金額」(画像の例では佐藤隆雄さん、合計所得金額は30万円)を記入します。

また、「同居」か「別居」かを表すのもこの記載箇所になります。同居であれば、この記載例のように「同居老親等」という箇所に✔マークを付すことにより、控除額がアップします。
(※下記の記載例では、青い枠で囲まれている箇所が注意点です。佐藤隆雄さんが納税者からみて父にあたり、同居老親であることがわかります)
老人扶養親族がいる場合の扶養控除等(異動)申告書の記載例 (出典:国税庁資料より)

老人扶養親族がいる場合の扶養控除等(異動)申告書の記載例 (出典:国税庁資料より)

 

会社に提出する年末調整の書類はコピーをとっておこう

ただし、一つ注意点があります。年末調整の書類は通常、年内に回収されますが、扶養控除等の対象とされる人の年間所得はその時点では確定していません。当然、書類に記入する所得金額も見積り額となるでしょう(確定申告の場合は、書類を作成する時点で年をまたいでおり、確定した金額が判明していることとなります)。

そこで、年末調整で見積額を記載した人で、年明けに正しい所得金額がわかり、税額が変わるようであれば、確定申告が必要となることもあります。

会社に提出する「扶養控除等(異動)申告書」はコピーをとっておき、会社からいただく源泉徴収票に、所得控除額が正しく反映されているかチェックすることをオススメします。

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