繰り上げ受給すると1カ月ごとに0.5%減額される

年金を早く受け取れる分、年金額は減額される

年金を早く受け取れる分、年金額は減額される

老齢基礎年金は原則65歳が受給開始年齢ですが、60歳から65歳になるまでの間、1カ月単位で繰り上げ受給することができます。その場合、1カ月繰り上げる毎に年金の0.5%が減額されます。

例えば、5年繰り上げて60歳から受給すると、一生涯年金から30%(=0.5%×12カ月×5年)がカットされ続けます。繰り上げ受給を申請すると取り消すことはできません。注意が必要です。
 

50%弱が繰り上げ受給を考えている

「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚生労働省)によると、老齢基礎年金のみの受給権者の30.8%(前年は32.3%)、老齢厚生年金受給権者の0.3%(同0.2%)が繰り上げ受給を選択しています。
 
令和元年の「年金制度に関する総合調査」(厚生労働省)では、「年金を受け取りたい(受け取り始めた)年齢は?」に対して、50~59歳の17.8%、60~64歳の49.7%、65~69歳の44.9%が「65歳より前」と回答しています。理由のトップはいずれの年齢層でも「自分がいつまで生きられるかわからないので、受け取れる間に受け取りたいから」でした。

 
繰り上げ受給の減額率と損益分離年齢

2022年4月以降は繰り上げ受給する人が増えるかも……。

 

2022年4月から減額率が0.5%➡0.4%に!

繰り上げ受給で最も気になることは、俗にいう損益分岐点(=65歳受給開始で受け取る合計額が繰り上げ受給のそれに追いつく年齢)でしょう。60歳開始では78歳8カ月、61歳では77歳8カ月、64歳では80歳8カ月になります。
 
この損益分岐点が遅くなる、そんな年金制度改正法が2020年5月29日成立、6月5日公布されました。2022年4月適用です。この改正で損益分岐の年齢が、60歳受給開始では80歳10カ月、61歳は81歳10カ月、64歳では84歳10カ月、と4年2カ月も伸びます。
 
2022年4月以降、公的年金繰り上げ受給の損益分岐点一覧表

繰り上げ受給を選択する人が増えるかも……。


 

在職老齢年金の減額基準額が47万円に!

繰り上げ受給を考えている人の後押をするもう一つの改正も行われました。それは、在職老齢年金の減額基準額の引き上げです。
 
厚生年金に加入しながら働いている60~64歳の年金受給者の中には、月給と年金の額に応じて年金の一部あるいは全部が支給停止される在職老齢年金制度により、年金カットの憂き目にあっている人が少なくありません。現在の減額基準額は28万円。これが今回の改正で65~70歳未満と同額の47万円に引き上げられました。2022年4月から適用されます。
 
以上のように、2022年4月からは繰り上げ受給を選択した際のダメージ、一生涯続く年金受給額の減額と在職老齢年金による年金カット、は低くなります。しかし繰り上げ受給のダメージは、お金だけではありません。
 

繰り上げ受給で失くす権利は大きい!

繰り上げ受給を選択すると、年金の減額だけでなく次の権利を失います。
  • 障害基礎年金を受けることができない
  • 寡婦年金(※)の受給権を失う
  • 配偶者が死亡した時、65歳になるまでには遺族厚生(共済)年金と併給できない
(※)寡婦年金
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が25年以上ある夫が死亡した時に、10年以上の婚姻関係があり生計を維持されていた妻に60歳から65歳まで支給される年金。ただし、夫が障害基礎年金や老齢基礎年金を受給していた時には支給されない。

これらの権利は、本人が障害状態になる、配偶者が死亡する、など家族環境が急変した時に効果を発揮します。ある意味その後の生活の支えになるものです。それを失権するわけですから、大きなダメージを受けることになります。
 

健康寿命は男性72歳、女性74歳

将来的に年金給付の水準が低くなっていくのは明らかですが、とはいえ年金が老後の収入の柱の一つであることに変わりありません。そんなに重要な年金の制度はますます複雑になっています。繰り上げ受給の損益分岐点の年齢予測も、雇用や経済状態、出生率、死亡率、労働者人口など様々な不確実要因の影響を受けるので、「損・得」の判断は簡単ではありません。
 
繰り上げ受給は、損・得をベースにするのではなく、老後資金や自分の健康状態、税制、社会保障制度などを基にキャッシュフロー表を作成して判断するといいのではないでしょうか。 そうすれば損をしても後悔することは無いでしょう。因みに、2016年日本人の健康寿命は、男性72.14歳、女性74.79歳です。また、60歳の生存率と平均余命は、男性93%/23.84年、女性96%/29.04年(平成30年「簡易生命表」より)です。
 
*健康寿命:健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
*生存率:10 万人の出生に対するその年齢の生存数の割合
*平均余命:年齢ごとに算出した「あと何年生きられるか」という期待値

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