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子育て@コラム ケンちゃんの卒論(4ページ目)

大学生・ケンちゃんがまとめた卒論のテーマは「家庭教育の失敗における子どもの精神病理」。彼の親世代に近い私は、このタイトルにドキッとしてしまいました。

豊田 眞弓

執筆者:豊田 眞弓

教育費 ・ 奨学金ガイド

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 そのようにしっかりとした子供の出産体制を整え、いつ子供が生まれても大丈夫な環境にしておけば早く子供が生まれてほしいと思うだろうし、そうやって望まれて生まれてきた子供へそそぐ親の愛情はいっそう大きくなることだろう。先ほどは親の教育などと言ってしまったが、要するに胎児が母親のお腹の中にいる間に自然と子供への愛情作りをしていければよいということだ。

 それでも人間というのは完璧な生き物ではないから、親といえども子供の気持ちを理解できないでいたり、勝手で自分の意見ばかりを押しつけて、「ああしなさい、こうしなさい」という親も当然のことながらいる。そのような親に対してはっきりと自分の意見を言える子供ならよいが、たいていの子供というのは親の意見がすべてであり、中学を卒業するあたりまでは親の意見に逆らうこともできない。たとえ親が間違ったことを言っているとしてもそれに従わざるを得ない場合もある。

 このような状況でも親子関係は歪んでくるので、これを子供の立場に立って救おうとするならば、家庭以外の場所で専門家に相談できる場所を設けるのが得策である。子供は毎日学校に通っているので、学校で夕方まで授業を受けて、掃除をして、ホームルームをやって、それから部活動をしてから家に帰る。だから、学校から帰ってから専門家に相談に行くとなると時間的にも厳しいし、1人で相談しに行くというのは相当な勇気がいる。

 ならばいっそのこと学校にそのような専門家に相談できるような場所を作ればよいのではないかと私は考える。学校にそういった場所があれば、ちょっとした授業の休み時間、放課後の部活動前などに気軽に相談できる。しかも学校にそのような場所があれば、友人にも付き添ってもらえるというのが本人にとって非常に大きいことだ。家族に相談できないことというのは、やはり一番仲のいい友人に打ち明けるだろうから、その点でも学校という場所は都合がよい。

 そして、相談所で相談を受けるのは保健の教諭ではなく、児童心理などをしっかりと専門に勉強し、より高度な知識をもった臨床心理士を配置させるのがよい。私の友人で臨床心理士を目指している者がいるが、現在、臨床心理士は資格を取っても職に就くのはかなり難しいそうだ。なぜなら臨床心理士が飽和状態だからだそうなのだが、困っている子供がいて、困っている人のために働きたい人間がいるということは、もっと臨床心理士の需要を拡大すればより多くの人が困難な状態から抜け出せる可能性が広がってくる。

 人間は、大学生ともなればアルバイトをしたりサークル活動をするなどして交友関係も広がって多くの人と接することにより、自分だけの小さな価値観から抜け出し、さまざまな視点から物事を見つめることができるようになる。だから、自分の親が間違っていると分かってもある程度親の言うことに対処できるようになる。

 しかし、小学校から高校にかけてのいわゆる「思春期」の子供たちにとっては、大人といえば自分の両親と学校の教師くらいしか知らない上に、近年の教師というのは、昔の教師のように「生き方の見本となる」のではない。教師が少女を買春したり、生徒へのわいせつ行為が頻発しているのでも分かるように、むしろ悪い大人の見本となっているため、子供にとって大人の像が揺らいできている。

 そこで臨床心理士は、世の中にはいろいろな考えを持った大人がいて、どういう考えを持っていて、どれほど自分の子供を愛しているかということを子供に教えてあげればよい。すると、子供たちは学校という同世代の人間しか存在しない小さな社会で生活しなければならなくても、大人というものの理解を多少なりとも深めることができる。それにより、家族関係の修復・改善に役立つことができるのではないだろうか。そういう意味においても臨床心理士の必要性が今後増してくる。

 では親の立場から親子関係を円滑に進めようとするならばどうすればいいのか。親からしてみれば、子供というのは非常に手がかかり、時には理解に苦しむようなことも多くある。そのような時には「経験者に聞け」と提言したい。よって、前述の子供が生まれる前に親になるための教育を受けても、子供が生まれてからなお対応に困る親には、一度子育てを経験してきた、いわゆる子育ての先輩にアドバイスをもらうというシステムを作るのがよい。

 現在の日本は世界一の長寿国になり65歳以上の高齢者人口が総人口の18.5%という高い割合占めている 。こんなにたくさんの子育て経験者がいるならば、是非力を借りればよい話である。現在の高齢者層のお年寄り達は、第二次世界大戦後の日本復興のため、「産めよ増やせよ」の政策のもと、たくさんの子供を生んで立派に現代の日本を作ってきた人間を育ててきた。よって、何人もの子供に世話を焼いてきた高齢者にしてみれば、子供の一人や二人育てるのに苦労している親の相談を聞くことくらいたやすいことである。
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