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子育て@コラム ケンちゃんの卒論(3ページ目)

大学生・ケンちゃんがまとめた卒論のテーマは「家庭教育の失敗における子どもの精神病理」。彼の親世代に近い私は、このタイトルにドキッとしてしまいました。

豊田 眞弓

執筆者:豊田 眞弓

教育費 ・ 奨学金ガイド

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 生まれて間もない子供にとって母親からの愛というのは、食事や睡眠と同様に生きるために必要不可欠なものなのである。にもかかわらず、朝早くから保育所に預けられて何人かの保母さんと1日中過ごし、そして夕方から眠りにつくまでの数時間だけしか母親と一緒にいられないのでは、結局は保母さんたちと過ごしている時間のほうが長くなってしまう。これでは子供も自分の本当の母親が誰であるのかなどと思ってしまったり、誰に甘えたらよいのかわらなくなって混乱してしまうため、しっかりした自我や人格が形成されにくくなる。

 以前ならば、子供が出来ると会社を辞める人も多かったが、近年では、女性の社会進出にともなって産休や育児休業も整備されているので、それらを大いに活用すべきだ。ただやはり、最近の女性は男性以上に向上心が強く、キャリアアップに熱心な女性も多いので、出産直前まで仕事を続けたり、出産してもその直後から子供を託児所やベビーシッターに任せてしまって仕事をする女性がいることも事実なのだ。仕事をするか育児に専念するかは結局のところ本人の意思によるところとなってしまうのだが、子供に対する悪影響もひとしおではない事を考えると、産後の一定期間の育児休業は義務化した方がよいと考える。

 これまで社会的立場の弱かった女性たちが、この男女参画社会の波に乗じて自分のキャリアアップに熱心になるのは喜ばしいことであるが、自分のことばかり一生懸命になってよいのだろうか。独身の時には自分の思うようにやってよいだろうが、結婚して子供が出来れば、その人は1人の女性としてではなく、「母親」としての人生がスタートするのだ。

 育児は夫も手助けする必要はあるものの、母親にしか出来ないことは山ほどある。その母親がいつも自分の目の前にいて、保護してくれないというこよは、「愛してくれない」「冷たくされている」と感じて子供は正常な人格を形成していくことは難しくなるし、常に精神状態が不安定で自暴自棄になったりしてしまうのだ。そうした子供の気持ちを、母親たちは「自分がもし子供だったら親にどう接してもらいたかったか」という、子供の立場に立って物を考えることをしなければならない。

 では、子供の気持ちも分からない、子育ての仕方もわからない親、つまり子供を自らの手で不幸にしてしまいかねない親たちはどうすればいいのか。

 そういう親は子供を教育する前に、自分が子育ての教育を受けるべきだと思う。本来親というのは、子供をしつけ、やっていいことと悪いことの区別を教えて、良識ある正しい道徳感を持った子供に育てるべきなのだが、現代の親たちの多くは自分がしっかりした社会倫理や常識といったものを持ち合わせていないことも多く、そのような人たちが子供を持っても、まともに子育てなど出来いるわけがない。そういった親が子供を育つと、「子供が泣き止まないから虐待死させた」「反抗期の子供に対してどう対処していいのか分からなくて、子供を殺してしまった」などという、少し前の日本では到底考えられなかったような事件を起こしかねない。

 そのような事件が実際に起こっているからこそ、子供の教育を考える前に「親の教育」をしていく必要性を感じるのだ。妊娠をして母子手帳を所持した母親のために、親としての心構えや子供のしつけのしかたを教育する公的機関を設置し、そこで数ヶ月間に渡って親になるための準備をしてもらう。初めて子供を持つ親にとっては子供をどのように育てていいのか困惑することも多いし、出産に向けての緊張も重なって精神的不安も大きい。しかし数ヶ月にも及んで親になるための教育を受けておけば、少しずつでも「自分は親になるんだ」という自覚が持てるようになってくるであろうし、出産を待ち遠しく思うようにもなれるに違いない。

 かつては子供であった親たちだが、自分が子供だったのはすでに数十年も前のことなので子供の立場に立って、同じ目線で物事を見つめるのは少々難しい。そこで子供がどのような状況で何を欲し、母親に何を要求しているのかを母親たちにしっかりと勉強してもらうことが必要だ。乳児期、口愛期、肛門期、思春期と子供が成長するにつれて親は子供に対する接し方を少しずつ変えていかなければならない。だが子供が多感な時期に入っていく前に、親が前もって「子育て教育」を受けておけば何も戸惑うことはなくなるはずだ。
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