飲酒運転は減少傾向にあるが……

2007年、2009年と道路交通法が改正され、2014年には自動車運転死傷処罰法が施行されるなど、飲酒運転への罰則が強化されました。これにより飲酒運転による事故は減少していますが、直近は減少幅が小さくなっています。(警察庁ホームページより一部抜粋)。

■飲酒運転事故件数の推移

•2000年:2万6,280件
•2005年:1万3,878件
•2010年: 5,556件
•2015年: 3,864件
•2016年: 3,757件

罰則の強化と社会の目の厳しさが増し、飲酒運転による事故は減りつつあります。とはいえ、完全になくなったわけではありません。また上記は飲酒運転事故の統計であり、飲酒運転そのものの全体数はこれより多いと想定されます。


事故件数は減少傾向にあるが……

事故件数は減少傾向にあるが……


自分が飲まなくても、運悪く飲酒運転の車にぶつけられ、被害者になることも考えられます。その場合、加害者の保険による補償を受けることができるのでしょうか? 今回は、飲酒運転の場合に自動車保険(任意保険)が使えるかどうかについてご案内します。

飲酒運転は「免責事由」の代表例

自動車保険(任意保険)には「免責事由」というものがあり、これに該当する場合には、基本的に保険が使えないことになっています。飲酒運転や無免許運転は、この免責事由の代表例ともいうべきものです。

つまり、飲酒運転をすれば、運転者が事故によってケガをしたり、命を落としたりしても、搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険による支払いを受けることができません。当然のことながら、車両保険についても補償の対象外ですので、愛車の修理代は「自腹」ということになります。「飲酒運転をした人」つまり、ドライバーは保険金を受け取ることはできないのです。

対人・対物については補償が受けられる

しかし、運転手の飲酒運転による事故で被害者が補償を受けられないとなると、保険が持つ被害者救済の理念から離れてしまいます。

そこで、飲酒による事故であっても、任意保険の対人・対物賠償責任保険については、被害者に対する保険金が支払われるのです。 被害者救済を意義とする自賠責保険も同様に、被害者に対して支払われます。

飲酒運転による事故のケース・スタディ

ある日のこと、Aさんは車でコンサートに出かけ、現地でBさんと待ち合わせました。コンサートは大いに盛り上がり、勢いでBさんと少し飲んで帰ることにしました。この時点では、車は駐車場に停めておき、電車で帰るつもりでした。しかし、お酒の席は長時間となり、終電を逃す事態となったのです。一緒に飲んでいたBさんは、お酒にはめっぽう強く、顔色ひとつ変えていません。

Bさん:代わりに運転して一緒に帰ろうか?
Aさん:うーん、そんな遠くないし、大丈夫だよね、じゃあ頼むよ!

と、Bさんに運転をお願いして、愛車で帰ることにしました。

ところが、帰りの途中、Bさんは飛び出してきた猫を避けようとハンドル操作を誤り、道路わきの電柱に激突して車が大破してしまったのです。2人とも命に別状はありませんでしたが、救急車で病院に運ばれて、そのまま揃って入院することになりました。

「まぁ大丈夫」と軽い気持ちで飲酒運転したせいで事故を起こすケースは後を絶たない

「まぁ大丈夫」と軽い気持ちで飲酒運転したせいで事故を起こすケースは後を絶たない


Aさんの愛車は「全損」となってしまいました。まだローンは20回残っています。

自賠責保険からの支払いは?

このケースでは、2人とも自賠責保険による保険金の支払いを受けることができません。Bさんは飲酒運転の張本人ですし、Aさんは自分に対する賠償義務が発生しませんので、自分名義の自賠責保険を使うことができないからです。

任意保険からの支払いは?

任意保険から保険金が支払われるかどうかは、Aさん、Bさんで異なります。

■Aさんの場合
  • 対人賠償…補償されません
  • 対物賠償…電柱に対して支払われます
  • 搭乗者傷害保険…補償される可能性があります
  • 人身傷害補償保険…飲酒運転は「故意または重過失」となる可能性があり、その場合は補償されません
  • 自損事故…保険会社により判断が分かれます
  • 車両保険…補償されません

愛車を失ったAさんは、残ったローンを自腹で支払い続けなければいけませんが、他人の持ち物である電柱の修理代は対物賠償保険で補償されます。

■Bさんの場合
  • 対人賠償…補償されません
  • 対物賠償…電柱に対して支払われます
  • 搭乗者傷害保険…飲酒運転の本人であるため補償されません
  • 人身傷害補償保険…飲酒運転の本人であるため補償されません
  • 自損事故…飲酒運転の本人であるため補償されません
  • 車両保険…飲酒運転の本人であるため補償されません

Bさんにとっては酷ですが、保険会社が設ける免責事由に従うと、これが現実です。それほどまでに飲酒運転とは認められない行為なのです。

実は2016年の飲酒運転による死亡事故は、213件あり死亡事故の構成率6.2%を占め、前年比+12件、+6.0%となっています。誰が亡くなるかの内訳は、運転者と同乗者が多く、約25%が第三者です。このケースでAさん、Bさんが亡くなっても自動車保険の対人賠償からの支払いは受けられそうにありません。

上記の「補償されるorされない」は、個々の状況と保険会社によって異なります。実際にこのような状況に陥ってしまったら、加入している保険会社に相談してください。なによりも、くれぐれも「飲んだら乗るな!」を忘れないでくださいね。

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