温泉/温泉を楽しもう

今年の温泉ベスト10 <2007年 対談後編>(5ページ目)

今年の温泉ベスト10!日本を代表する温泉研究家、郡司勇(温泉レポート)と、藤田聡(日本の名湯)両ガイドによる、年末恒例の特別対談!互いの温泉観も含め、今年も奥深い対談となりました。温泉好き必見です!

執筆者:郡司 勇

温泉ベスト10 郡司分五位 栄の尾温泉 緑渓湯苑 90

栄の尾1
白濁した硫黄泉の浴槽がいくつもある緑渓湯苑
<郡司> 霧島温泉の中心部にある、昔の林田ホテルは現在、いわさきホテルとなっている。遥か以前に入浴したが、記憶はほとんどない。大きな体育館のような温泉だった記憶である。その記憶をたどってみると、たしか単調な湯で、数々の浴槽があるがすぐに出てきた。10分ほどだったのか、それを見た受付の人が驚いて、2千円近い入浴料の半額を返してくれたことを思い出した。

さて、その温泉に再度入浴しようかなあと思い再訪する。しかし、本館の温泉は入浴するのをやめた。宿の奥の、栄の尾温泉付近に温泉が湧出して、露天風呂が造られているということを聞いた。いわさきホテルの駐車場に車を止め、10分ほど渓流を登ってゆくと、思ったよりもずっと野性的な露天風呂群が出現した。川の両側に大小8つの露天風呂が点在し、島津家の殿様の名前が付いている。どれも白濁しており、適温からやや熱めの浴槽で、豪快に掛け流しされている。湯量豊富なのであろう。緑渓湯苑と名付けられた、大露天風呂天国であった。
栄の尾2
渓流に沿って野湯のようである


白濁、少酸味、硫黄臭の湯で、明礬系というよりも硫黄泉であろう。濃い白濁の湯から薄白濁がほとんどであるが、一つ透明の湯もあった。タオルを腰に巻いて入り歩き、小一時間入浴を楽しんだ。野趣に富んだ露天風呂群であった。湯が多く新鮮で、渓流の自然をうまく生かした造りで野湯のようであった。良い源泉で硫黄分も多く良い評価とした。

<藤田> いわさきホテルは、実は霧島における私の愛用の宿で、以前の記事でも紹介しました。愛用の理由は、硫黄臭の濃厚さです。霧島の硫黄臭は、疲れた感じが特徴で、それによって印象が薄くなることがあるのですが、いわさきホテルの硫黄臭は、有機的なクセのある香りで、ハマッてしまうのです。

緑渓湯苑は本当にワイルドで、私も野湯の一種のように思っています。宿泊者は、夜のツアーがあるのですが、あまりにもワイルドなので、ちょっと怖い感じがする程です。しかし、これこそ自然の湯という感じですね。

温泉ベスト10 郡司分四位 木賊温泉 岩の湯共同湯 再訪 90

木賊1
大岩の底から湯が湧出している
<郡司> 木賊温泉の川沿いにある、岩の湯共同湯は有名である。木賊温泉井筒屋のすぐ下流にある。上流から見ると川の中に突き出した形で小屋掛けしてあり、洪水があればひとたまりもなく流されてしまうように見える。井筒屋の湯小屋も同じように川に突き出している。岩の湯共同湯の真上には旅館「湯の上」がある。立派な曲屋の造りで屋根に寺院のような垂木が見えて良い建築である。次に木賊温泉に来た時には泊まりたい宿であった。

岩の湯共同湯は川に突き出してコンクリートで固められた床があり、河岸側にの天然岩が露出していてその底から自噴している温泉である。足元湧出の源泉浴槽で、2つの浴槽があり上流側の足元から大量に温泉が湧出し、下の浴槽に流れている。湯量がかなり多く、この湯が絶品であった。透明、たまご味、はっきりとした硫黄臭である。浴槽の底は大きな玉石が敷いてあり、一部コンクリートで固めてあるが、源泉湧出部分は石を置いてあるだけで、底から熱めの湯が湧出している。湯量があるので湯の流れが体感できる。かなりの良い湯で、その旅行で一番高い評価とした。天然岩の足元湧出温泉は貴重で、大切に守ってほしい温泉である。以前は湯の花が多量に舞っていたとのことである。
木賊2
手前の浴槽に川のように湯が流れ込んでいる


連休のころは、川が雪解け水で増水していて激しい流れになっているが、以前夏に訪問したときは、井筒屋前の川の中から各所に湯が湧出していて、そこに手掘りの浴槽がいくつか作ってあった。川の流れが少ない時ならば、河原のマイ浴槽を造ることができる。なお井筒屋の内湯も足元湧出の温泉で、コンクリートで固められた底の一部が穴になっており、そこから源泉が湧出している。

<藤田> 木賊温泉岩の湯は、湯も風情も本当に素晴らしいですね。本当は空いている時に、存分に堪能したいのですが、素晴らしいので人気も高く、空いている時に出会わないのが、唯一残念です。その分、混雑していない昼間の井筒屋にも魅力を感じますね。

→次ページは、三位と二位の発表です!>>>
  • 前のページへ
  • 1
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます