知られざるチョコレートの街、トリノ
チョコレート味のスプレッド「ヌテッラNutella」をご存じの方も多いでしょう。ヌテッラは、ピエモンテ生まれ。また、「ジャンドゥイア」もピエモンテが発祥の地です。ピエモンテ州の州都トリノは、実はチョコレートでも有名な街。知ってる人は知ってるけれど、知らない人はまだ知らない。そんなチョコレートの街トリノの、チョコにまつわる歴史とおススメのお土産ショップをご紹介します。
14世紀に南米からスペインへ渡ったカカオ
チョコレートの原料であるカカオは、紀元前から南米メキシコで生産されていました。お金の役割を果たす程に貴重な薬として扱われていたカカオ。14世紀、ヨーロッパで勢力を拡大していたスペイン王国が南米アステカ帝国を征服した際、アステカ王よりスペイン軍を率いていたフェルナンド・コルテスに贈与され、それをスペイン王に献上したことが、ヨーロッパ伝承の由来と言われています。スペイン王侯貴族たちの間で、広まったカカオは、たちまちヨーロッパ各地に伝わっていきます。フィレンツェの商人がイタリアに持ち帰ったとか、ベルサイユ宮殿に嫁いだスペイン王女たちが嫁入り道具のひとつとして持ち込んだなどなど。トリノへは、15世紀初頭、サヴォイア王家のエマヌエーレ・フィルベルト王によって、伝えられたそうです。
トリノの王宮で起きたチョコレートブーム
スペイン軍を指揮し、その功績により、スペイン王よりカカオを賜ったエマヌエーレ王は、ご自宅、つまりサヴォイア王家の本拠地・トリノの王宮に、このカカオを持ち帰ります。エマヌエーレ王は、グルメ王としても知られ、トリノのグルメ発展の歴史に欠かせない人物でもあります。彼の食卓には、世界中から取り寄せた珍しい食材が並んでいたそうですが、カカオもしかり。
グルメのトレンド・セッター、エマヌエーレ王おススメのチョコレート・ドリンクは、1587年に行われた息子さんのカルロ・エマヌエーレ1世とスペイン王女カテリーナ・ミカエーラの結婚披露宴で振舞われたのをきっかけに、イタリアの貴族階級の間でブームになります。
そして、100年……。貴族たちの間だけで楽しまれていたチョコレートを、いよいよ庶民も口にするチャンスが訪れます。
サヴォイア王家の配慮で庶民に広まったチョコレート
1678年、サヴォイア王家からお抱えチョコレート職人アントニオ・アッリさんに渡された一通の手紙。そこには、こう記されていました。「今から6年間、チョコレートの販売を一般にも許可する」
つまり、一般販売の公認免許が出されたのです。それからトリノには、次々にチョコレート店が開店。そして、ヨーロッパにも輸出が始まり、各国からチョコレートの技術を学ぼうと、トリノにたくさんの職人さんが集まりました。
当時のトリノは、まさに「チョコレートの都」。チョコレート職人(チョコラタイオ)の繁盛ぶりは、「王様は3頭立ての馬車、チョコラタイオの馬車は4頭立て」と詠われた程だったとか。
そんなわけで、トリノにはサヴォイア家ゆかりの歴史あるチョコレート屋さんがたくさんあり、今でも、伝統的な製法で作られたチョコレートを存分に味わうことができるのです。
次ページでは、サヴォイア王家ゆかりのおススメ店をご紹介。