(2003年10月31日「日本人観光客A子さんの場合」より) ◆コラム~近況報告━━━━━━━━━━━━━━━━ 仕事先で、日本人の観光客の方とちょっとだけお話する機会があり、「一人旅がしたかったんだけど、親が反対するから・・」と、添乗員付きのツアーに参加した後、一人だけ日程を延長して、ローマに数日残って旅を続けてらっしゃるA子さんと知り合いました。
実質それは一人で旅行してることになると思うけど、ご両親の反対はなかったのかな~などと疑問を残しつつ、お年頃20代後半の「一人旅」満喫中のA子さんとの会話は、なかなか面白い展開をみせました。 何しろ、開口一番が、この発言。
A子:ローマって・・・なんだか情緒のない街ですよね。 筆者:は? A子:観光するところがボーンボーンとあるだけだし。 筆者:ボーンボーン・・。どちらに観光されたんですか? A子:え~?大きな丸い球場みたいなとことか、カラカラなんとかって言う・・。 筆者:その丸いのはコロッセオだと。カラカラは浴場跡ですよ。 ・・・2千年前の遺跡なんですよね、世界遺産にもなっていて・・・。 A子:(説明しても全然聞いてない様子で) あんまり面白くなかったな~、情緒がないって言うか・・。 筆者:情緒・・・。では、どちらの街が情緒がありました? A子:フィレンツェ!フィレンツェは街に「情緒」があってぇ、カワイイ街でした。
ははあ、なるほど。 筆者:大型バスで回ったの?ローマも歩いてみると、石畳の素敵な街の様子がわかるかもしれませんよ。 A子:歩いて回ったんですよ。もー疲れるだけ、って感じ。 筆者:あ。そ、そうですか。
永遠の都ローマを「情緒がない」と言い切るA子さんに、もはや筆者は興味津々。きっとローマのようなダイナミックな街はお好みに合わなかったのか。
筆者:ローマに滞在を決められたのは、なぜですか? A子:小さな田舎町をお散歩したかったんですけどね。なんだか難しそうだったから・・。ツアーの最後がローマだったんで、まあ、いいか。と。 ところで、トスカーナって日本語で言うとなんですか? 筆者:は? あ、しまった!と恥ずかしそうな表情で、 「あ・・もしかしたらワインの名前でしたっけ?」と続けたA子さん。 ご両親が一人旅を心配したのがわかるような気がしました。
最後に「ローマで何食べたらいいですかねえ。友達に生ハム・メロンは絶対食べた方がいいって言われて、昨日食べたんですよ~美味しかった~。やっぱり本場で食べると美味しい!」そりゃ、ローマじゃなくてパルマじゃないか?と口の中でつぶやくのみにとどめ、 筆者:そうですねー。じゃ、「イタリア料理」がいいんじゃないですか?」(←半ば諦めている) A子:なるほど~! おいおい。
まだ続きます。 筆者:レストランも一人では入りにくいと思いますが、どうされてるんですか? A子:そう。それが心配だったんですが、結構大丈夫なんですよ。同じ仲間がすぐに見つかるもんなんですよね。ほら、一人旅してる人同士ってなんとなくお互いの気持ちが通じ合うっていうか。すぐ友達になれるんですよ。旅を愛する仲間って感じで・・。でも今日は疲れちゃったから、ホテルでカップラーメン食べようかな。いろいろ日本食も持ってきたんですよ。何しろ旅の途中は日本食が恋しくなりますからね。それに明日は早いから、早めに寝なくちゃ。一人旅の最中は無理は禁物ですからね!
「一人旅」を絶好調で満喫中のA子さんの旅レクチャー(?)に、最後には筆者が「なるほど~(苦笑)」を連発。ついでにグッチやプラダが大好きなA子さんは、ドルチェ&ガッバーナやエトロは、「日本人好みではない」とブランド批評までされてました。
後で同席していた友人と「ある意味シアワセな人生を送っている人だよね」と、盛り上がってしまいました。自分の半径1メートル以内にだけ注目して生きている。それ以外のことなんて、本当は知る必要なんかないのかもしれない・・。なーんて、人生談義を呼び起こした去っていったA子さん。素敵な思い出を胸に無事に日本に帰国されていることを、祈る・・。
10月31日 雨のローマにて・・秋は雨ばかり・・・