小動物/鳥類の飼い方

鳥が「噛む」のは本能的な行動? ペットで鳥を飼うときの注意点

鳥が飼い主を噛むのは本能的な行動なのでしょうか? 今回は鳥が噛む理由として多い「鳥の本能による行動としての噛み」についてご説明します。また、あまり知られていない正しい手乗りや芸を通した鳥と飼い主のコミュニケーションについても解説。

執筆者:村田 亜衣

鳥の本能による行動としての噛みについて解説

鳥の本能による行動としての噛みについて解説

ペットが噛む理由はいろいろありますが、今回は、鳥の噛む理由に多いのに飼い主さんが気が付いていないことも多い「鳥の本能による行動としての噛み」について、説明したいと思います。正しい「手乗り」とは何か、など飼い主さんが間違えてしまいやすいことについても説明しますので、間違えないようになってくださいね。
   

鳥をペットとして飼う時、飼い主が鳥の行動範囲を制限することも重要

ペットが「コンパニオンアニマル」と呼ばれるようになり、家族の一員として飼う人が増えたように思います。しかし、「家族の一員」ということで勘違いをしてしまう人も少なくなく、ペットをペットとして飼えていない人がときどきいます。

ペットを飼うということは、本来彼らの生息域ではない私たち人間の生活環境の中で、飼い主の管理下において飼育することです。思いっきり走らせてあげたいとか、大空を飛ばせてあげたいとか思うことがあっても、それが許されない環境で危険を覚悟でさせるのが「ペットを飼う」ことではありません。また、飼い主の言うことを聞かないどころか、ペットの望むとおりに飼い主が動かされているようでは、「管理下にある」とも言えません。

ペットとして鳥を飼うということは、家族の一員として迎えるだけでなく、飼い主が与えることができる範囲という制限の中で鳥にとって快適な環境や食事を用意し、飼い主が管理することだと思います。飼い主も鳥もお互いに気持ちよく、楽しく暮らしていくためには、我慢することや譲ることも必要になってきます。

ペットを飼う上で、飼い主が管理できる範囲内にペットの行動範囲を制限することは、どうしても必要になります。鳥だから、とペットが望むままに外に飛ばしてしまったら、そのまま帰らぬ子になってしまうかもしれません(すべての鳥が無条件に外を飛びたがるわけではありません)。

甘やかすことは愛情の1つですが、すべてではありません。可愛いわが子だからこそ、危険な目にあわないように我慢させることだって必要です。ペットは家族ですが、赤ちゃんがお母さんやお父さんの庇護(管理)下にあるように、ペットは飼い主の管理下にいるものです。

ペットとして鳥を飼うということは、家族の一員だけれどもペットだということを忘れずに、鳥には鳥の習性や本能があることも忘れずに、自分たちができる範囲内で鳥にとって最適な環境を作り、維持することでしょう。もちろん、たっぷりの愛情をかけながら。
 

鳥をケージから自由にさせすぎると、本能が呼び覚まされる可能性あり

鳥をケージから自由にさせるとどうなる?

鳥をケージから自由にさせるとどうなる?


鳥を飼っている飼い主さんの多くは、鳥をケージの中に入れている時間が長いことを気にされるようです。そして、時間が作れればいつだって、鳥をケージから出し、部屋に放して遊ばせているようです。

「かごの中だけの鳥」には私も大反対ですので、毎日時間を作って、鳥をケージから出して遊んであげて欲しいと思います。ですが、ケージから出して自由にさせすぎてしまうと、本能が呼び覚まされてしまいますので注意が必要です。

古くからペットとして飼われ、ブリーダーさんが繁殖した子が流通してもいる鳥たち。野性味はとっくに薄れてしまっているように思われがちなのですが、実は鳥って野性味がすごく強いんです。限られた部屋の中だけであっても、飛ぶことが増えるとそれに従い、鳥の本能は呼び覚まされていきます。

鳥にそんな強い野性味があるとは思っていない飼い主さんは、鳥のためにと思って部屋に放す時間を多く作っているだけですから、鳥が本能に目覚め始めているなんて気が付きません。そしてある日、鳥が手乗りじゃなくなっていることに気が付きます。いえ、気が付きません。手よりも肩や頭に乗ることが増えたように感じる程度でしょう(手乗りについては後程説明します)。

いつもと同じに接しているのに、鳥が触られるのを嫌がったり、触ろうとした手を噛まれたりして、小さな衝撃を受けるようにもなります。でもきっと、小さい衝撃なのでここではあまり気にしないでしょう。けれども、鳥にしてみれば飼い主が行動を正さなかったことで自分の意思が通ったと判断することができますので、より本能が呼び覚まされていきます。
 

鳥をペットにするなら羽は切るべき?

野生動物や野性味の強い動物を飼う場合、彼らの本能が目覚めないように注意しながら飼う必要があります。野生動物の本能は、野生下での行動を思い起こさせる行動によって目覚めることがあるようです。

鳥の場合、室内であっても「飛ぶ」という行動が本能を目覚めさせるきっかけになることが多いようですので、「ケージの中ばかりじゃ可哀想」と思ってもケージから出す時間を制限したり、飛べないように羽を切ったりすることで、いつまでも従順なペットとして飼いやすくなります。

鳥の飼い主さんには羽を切ることに抵抗のある方が少なくないと聞きますが、羽を切ることは悪いことではありません。羽を切ることで行動を制限することができますし、以外と多い室内での飛行事故(窓ガラスに激突してしまうなど)を防ぐこともできます。

飛べないことがストレスになると考える飼い主さんもいるようですが、同じ種類の鳥を2羽、同じ環境で片方は羽を切り、もう片方は羽を切らずに飼った場合、健康状態や寿命に差はないそうです。鳥が飛べないことで受けるストレスはかなり少ないと考えられますので、羽を切ることで与えるストレスはさほど心配する必要はないと思います。

鳥の羽は、一度切ってもまた生えてきます。ですので、一定期間羽を切って行動を制限し、飼い主との関係を強くしたのち、羽を切らないようにしてもいいと思います。ただし、自由に飛べるようになったことで我が強くなるようでしたら、再び羽を切って飼い主との関係を強くした方がいいでしょう。
 

鳥の正しい「手乗り」とは?

鳥の正しい手乗りはあまり知られていない

鳥の正しい手乗りはあまり知られていない


私は親バカですので、ペットが私に登るのに抵抗はありません(我が家では、私に登ることは「ママ登り」という遊びになっていたりします)。ですが、常にペットが私より高い位置にいるのは許しません。高いところにばかり行きたがる子がいたら、わざと登らせないようにしたり、私が下ろしたりして、家族内での順位を間違えないようにさせています。

鳥が肩に乗ったり、頭に乗ったりするのも可愛いものです。でも、肩や頭ばかりに乗せているのは問題です。鳥に、あなたより優位にあると勘違いさせてしまうおそれがあるからです。

多くの動物において、群れの上位の者が高い位置を陣取ります。鳥もそうです。常に飼い主の肩や頭にとまっていると、家族という群れの中で飼い主と同じ順位か飼い主よりも優位にあると考えやすくさせてしまいます。そして、飼い主の言うことを聞かなくなったり、飼い主を自分の都合で動かすようになったりします。

鳥によっては、犬の問題行動のように飼い主を困らせる行動をとることがあります。ケージから出たいときには大声で叫び続けるなど、経験はしていなくても聞いたような話ではないでしょうか? 鳥は賢いがために、飼い主の動きや感情を読み取り、理解し、操作することを学ぶことができてしまいますので、飼い主を困らせるような問題行動を起こしてしまうこともあるんです。

「手乗り」に育てた子が肩や頭に乗るとき、その子は手乗りではなくなっています。「手乗り」は「手」に乗ることであって、肩や頭に乗ることではありません。肩や頭にばかり乗せていると、手には乗らない子になってしまうこともあります。ささやかな、順位上げの行動です。

手に乗らなくなっても肩や頭に乗るからいいか、と手乗りでなくしてしまうと、鳥は自分が飼い主と同列の順位に上がることができたと考えてしまうことがあります。そして、飼い主より上位に行こうと噛みついたり、言うことをきかなくなったりすることがあります。

「手乗り」に育てた鳥は、いつでも「手乗り」になるように、肩や頭にとまることがあっても、手にしかとまらせない時間も作ってください。常に手にしか乗せてはいけない、というわけではありません。飼い主が手に乗せたときには手だけに乗っていられるようにして欲しいのです。

ペットは、飼い主が気にしないような小さな行動から自分の順位上げをはじめます。ですので、どっちでもいいように感じることでも、それを譲らないことでペットにわかるように飼い主が上位なのだと示してください。飼い主が上位にいると理解していれば、飼い主に攻撃することはまずありません。
 

鳥と飼い主は「芸」を通してコミュニケーションを図る

みなさんは、「芸」と聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか?
サーカスなどで命令に従わされる動物でしょうか?
歌を歌う小鳥でしょうか?

「芸」という言葉に悪いイメージを持たれている方もいるでしょう。動物を紐などでつないで無理に動かせることや、鞭や棒などで威嚇して動かせることを思い浮かべる人もいると思います。でも、私がここで言う「芸」はコミュニケーションの1つの方法です。ペットに無理矢理させることではありません。右手を出したら右手に乗り、左手を出したら左手に乗る。そんな程度の鳥に負担にならない動きを、飼い主の意思に沿ってしてもらうことです。

「芸」を教えることで、飼い主は鳥にして欲しいことをどう伝えればいいのかを学び、鳥は飼い主が言いたいことをどう読み取るかを学ぶことができます。お互いに、より相手のことを知ることができますので、芸ができるようになるかどうかは気にせずに、挑戦してみてください。芸をマスターできなかったとしても、教える前よりはお互いに、少しだけでも相手のことがわかるようになると思います。

芸の教え方はいくつもあるのですが、簡単と思われる飼い主の手を移動する芸の教え方を以下に紹介します。

まず、テーブルの上などに手を乗せて、鳥を乗せてください。

次に、もう片方の手でテーブルを叩くなどして鳥の興味を惹きながら、 鳥が乗っている方の手を傾けて不安定にしてください。

不安定な手から鳥が降りたら、もう片方の手に誘導します。もう片方の手におやつなどを持って誘導するのもいいと思います。

もう片方の手のところに来たら、さらに誘導して手に乗ってもらい、ご褒美をあげます。ご褒美におやつや食べ物を与える場合、与える前に声で褒めるのを忘れないでください。

これを両方の手で繰り返していると、不安定にしなくとも鳥が手を移動するようになるでしょう。テーブルを叩くときに決まった掛け声をかけていれば、その掛け声で移動するように教えることもできると思います。

鳥によっては覚えるまでに時間が必要な場合がありますが、その時間こそが飼い主と鳥とが相手を理解するのに必要な時間ですので、たっぷり時間はかけて教えてください。芸を教えるのではありますが、芸ができるようになることよりも、飼い主が望むことを読み取る力をつけさせてあげることの方が大事ですので、時間はかけた方がいいんです。

「芸」であっても飼い主の希望に沿った動きをするということは、それだけで飼い主を上位に認めているということになります。簡単な芸は鳥の問題行動の予防にもなると思いますので、鳥との遊びの1つとして、コミュニケーションの1つとして、芸を教えてみてはどうかと思います。

なお、芸を教えるときのコツは、飼い主も鳥も楽しみながらやることです。「今日中に教えなければいけない」などと自分たちを追い詰めたりせずに、鳥といっしょに楽しむつもりでゆる~く教えてみてください。きっと、楽しいコミュニケーションがとれると思います。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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