ウィルスは何もできない、持っていない
あまり詳しくしてもなんですから、簡単に言うとウィルスは- 細胞を持たない(通常の生物は細胞でできている)
- RNAまたはDNAの片方しか持っていない(通常の生物は両方持っている)
- エネルギーを作るなどの代謝を行わない(通常の生物は呼吸などによりエネルギーを作って生きている)
- 自分の力で増殖できない(通常の生物は自らの力で増殖できる)
- 運動性はない(多くの通常の生物は自らの力で運動できる)
- ※あくまでもイメージしやすい傾向であって、もちろん多くの例外はあります。
ウィルスが唯一できること
しかし、ウィルスがただの物質でない、生物的な性質を持っているのです。逆に言うと、そのたった一つのことだけができる存在なのです。それが、生物の持つ、もっとも基本的な本能である「繁殖」つまり自らの遺伝子を殖やすために、子孫を残すことなのです。ウィルスは、エネルギーを作ることはできませんので子孫を残すために、他の生物の細胞を利用します。つまり、他の生き物の細胞に取りついたウィルスは、細胞の中に侵入し、そこに自らの遺伝子本体であるRNAまたはDNA(以下「RNA」)を放出します。そして、宿主である細胞の中のDNAを使って、ウィルスのRNAを複製します。さらに宿主の細胞の中の物質やエネルギーを使ってRNAからウィルス本体を大量に作ります。
こうして、作り出された最初のウィルスの子供たちは宿主の細胞から飛び出して、散っていくのです。この時に宿主の細胞は死んでしまったり、ガン化したり異常が起こり、その生物の個体を病気にしたり健康に異常を与えたりするのです。
わかりやすく言うと、ウィルスは「増殖することだけを目的とした機械」のようなものなのです。
抗生物質とウィルス
さて、ウィルスに関してもっともショッキングな話が「ウィルスによる病気を治す薬はない」ということでしょう。もう少し正確に説明しましょう。
例えば結核という病気は、かつては「不治の病」として非常に恐れられていた病気です。
しかし、現在では適切な治療を施すことで治すことができる病気です。これは結核は結核菌という「細菌」による病気であり、我々人類が「抗生物質」という薬を手に入れることができたからなのです。
抗生物質は、簡単に言うと「病原体の生物を殺す物質」です。
ところが、そもそもウィルスは生物であるかさえ疑わしい存在です。生きているかさえ疑わしいのですから、殺すことはできません。
そう、ウィルスを殺す薬を我々人類は手に入れてないのです。もちろん、これだけ科学技術が進歩しているのですから、数種類のウィルスを退治する「抗ウィルス剤」は存在しますが、多くのウィルスには、まさに「つける薬」がないのです。
唯一、私たち生物がウィルスに抗うことができる手段は、生物自身が持つ「免疫」です。誤解を恐れずに言えば「生命力」でしょうか。いわゆるウィルス症の対策として利用される「ワクチン」は、その免疫機構を利用した方法なのです。
しかし、さまざまな理由でワクチンというのは完璧ではありません。そういう意味では、ウィルスは我々人類にとって最後の敵であると言えます。
このような強力なウィルスによって、両生類たちは深刻な状態に陥っているわけで、あとは彼らの「生命力」次第ということですなのです。両生類たちがウィルスに打ち勝つための生命力を発揮できるように、私たちは彼らの生息する環境を大切に守っていかなくてはいけないのではないでしょうか。
果たして今回、国内で発見されたウシガエルのラナウィルス感染症が、もともと国内に存在していたウィルスが原因なのか、あるいは海外から持ち込まれたウィルスなのか、なぜ今回大量死が起こったのか、など多くのことがわかっていません。
これからさまざまな研究と調査が行われ多くのことが解明され、私たち両爬愛好家に何らかの影響があるのかも興味のあるところです。せめて、ラナウィルスが存在しない場所に、ラナウィルスを持ち込んでしまうようなことだけでもしないように注意したいものです。
ツボカビ、ラナウィルスと立て続けに両生類を襲う悲劇を、せめて多くの方々が知って、彼らのことを想っていただければと願ってやみません。
<関連サイト>
ラナウィルスとは 麻布大学