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両生類を襲う!ラナウィルス!!(2ページ目)

ツボカビの話以上に両生類にとって恐ろしい病原体が、ついに国内で記録されました...その名も「ラナウィルス」!一体、どういうことなのか!?ウィルスに関する基礎知識も論じてみました!

執筆者:星野 一三雄

ラナウィルス感染症

これまでにわかっているラナウィルスに感染したカエルに見られる臨床的な症状はさまざまですが、主に
・皮膚の赤みと潰瘍、出血が特に口の周りや排泄孔周辺に目立つ
・指先や水かきが欠損するなどの四肢の壊死が見られる
・無気力
・水ぶくれ
・痩せている
というものです。また有尾類の場合では
・動きが緩慢で姿勢が保てない
・皮膚の出血、赤み、腫脹、水ぶくれが見られる
というようなものです。
またカエル、有尾類ともに
・肝臓、腎臓、肺の腫れ、出血、壊死
という内臓の症状も見られるようです。

また、実験によると、あるサンショウウオの場合は感染から発症までの潜伏期間が2週間であったということもわかったようです。

何よりも、感染が流行している生息地では、特に幼生を中心に、毎日のように数千から数万尾の大量の不自然な斃死が見られるというのが最大の特徴と言えます。
魚類に多く見られるウィルスということを考えれば、ラナウィルスは水に依存するウィルであることが想像されますので、両生類の場合は水中生活を行う幼生に多く見られるのかもしれません。しかし、一般的に両生類は幼生時には一つの生息地に非常に多くの個体が生息していますので、大量死が目立つのであって、何も幼生だけに感染するというわけではないようです。
これまでにも、成体のカエルが大量死していることが確認されていますし、さまざまな実験により成体にも感染することが確認されているようですので。

このようにラナウィルスは、地球上に住む両生類に対して深刻な打撃を与えるおそれがあるとして、ラナウィルス感染症は世界中の家畜や野生動物の病気に対する国際的な組織である世界動物保健機関OIEで狂牛病や狂犬病、口蹄疫、野兎病などの有名で恐れられている動物の感染症と並んで「重要監視疾病」として指定され、発生が確認された場合はOIEに報告をすることになっています。

なお、念のため強調しておきますが、ラナウィルスは人間には感染しません。

ウィルスとは

と、まあこの程度の内容の記事なら、他のさまざまなサイトを見ればわかることです。で、せっかくですから、また私が本業を生かして、ちょっと余計なウンチクを語ってしまいましょう。

今回も、そうですし、最近は新型インフルエンザのパンデミックなどが話題になっていますが、こんな時、一般の方々ってどれくらい「ウィルス」というモノに対して正確な知識があるのかと疑問に感じることがあります。だって、これだけ生き物とか生物学とが好きな私だって、大学の時にあった「水族病原ウィルス学」なんてさっぱりわからなかったんですから。やはり物事の本質を知った上で、真の恐怖なり、あるいは正しい対応なりを考えてみたいものです。
そういうわけで、ここではごくごく基本的に「ウィルスって何?」というお話を少しだけしておきましょう。

ウィルスと他の病原体

病気の原因となる生物にはさまざまなものがあり、一般の方は「バイ菌」とひとくくりにされて語られることが多いのですが、ちょっとそれは乱暴すぎます。
いわゆる「バイ菌」と呼ばれる病原生物は
  • 細菌・・・肺炎、結核、コレラ、赤痢などの原因
  • 真菌・・・いわゆるカビ。水虫、カエルツボカビ症などの原因
  • 寄生虫・・・フィラリア症、エキノコックス症、回虫、ギョウ虫などの原因
  • 原虫・・・アメーバ類。アメーバ赤痢、マラリア症、クリプトスポリジウム症などの原因
  • リケッチアやクラミジア・・・全然違うが、ここでは便宜上、一緒に。細菌に近いと考えて良い。ツツガムシ症、クラミジア症の原因
  • ウィルス・・・インフルエンザ、B型肝炎、エイズ、ヘルペス症、はしかなどさまざまな病気の原因
などがあります。
まず、これらを整理するためには、病原生物の大きさを比較するとイメージできやすくなります。だいたい大きい順に
寄生虫>原虫>真菌>細菌・リケッチア・クラミジア>ウィルス
となるでしょう。

さて、ここでウィルスですが、これは他の病原生物群と決定的な違いを持っています。
簡単に言うと「ウィルスは生物と非生物の中間的存在である」ということです。つまり、ウィルスは一般的な生物が備えている、さまざまなものを持たず、生物が行うさまざまなことができないのです。
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