メクラヘビの飼育
さて、こんな変な生き物としてトップクラスであるメクラヘビたちなんですが、これを飼ってみたい!って奇特な人も世の中にはいるんです。私?ええ、その一人ですとも。基本的な飼育施設はケージ、フタ、土、水容器そしてエサです。
飼育容器はしっかりとフタができる入れ物なら何でもいいのですが、あまり大きすぎると土の中の彼らの様子を観察できませんから、それほど大きくない方がいいでしょう。ブラーミニならプラケースのSSサイズでいいと思われます。私の友人はコーヒーのビンで飼育していましたから。
問題はフタです。とにかく細い生き物ですから、プラケースのフタのメッシュは通って脱走してしまいます。目の細かい布や、クワガタ飼育用の小バエ避けなどを使うといいでしょう。
土は、厚めに敷きます。飼育容器の高さの2/3程度まで入れる方がいいと思います。
思ったほど湿らせる必要はありませんが、乾燥させすぎると弱りますから、できれば底の方に保湿できる素材のモノを敷いて、定期的に側面から水を差すくらいの管理は必要です。
また飲んでいるところは見たことはありませんが、念のため小さめの容器に水を入れて常設しておきましょう。
メクラヘビのエサ
問題はエサです。彼らはアリの卵やサナギ、幼虫などを食べると言われています。また今回の新種もシロアリの卵や幼虫を食べていると考えられています。
と言われても、アリの卵とかサナギなんて本当に食べるの?って思ったもんです。昔は。
しかし、オーストラリアのヘビ図鑑には、本当にアリの巣を襲ってアリのサナギをパクパク食べているメクラヘビの写真が出ているんです。これを見て私も確信を持ちました。
ただ、実際に飼育をするとなると、コンスタントにアリとかシロアリの卵なんて準備できません。これがメクラヘビの仲間の飼育の壁だったんです。
ところが、大型のメクラヘビは弱らせたコオロギの成虫とかを食べるのが知られていましたから、日本でも多くのパイオニアというかチャレンジャーがブラーミニでさまざまな挑戦をしてきたわけです。
そして、どうやら食べているらしい、そしてそれを与えていればとりあえず生かしておいて、繁殖まで行けるらしいということになっているのが、エサに「コオロギの卵」を使うことです。
つまりヨーロッパイエコオロギとかフタホシコオロギとかの成虫を飼育して、卵を産ませ、それをメクラヘビのケース内に入れる、という飼い方です。あるいは、産卵間近のコオロギのメスの成虫を数日間、メクラヘビのケースで飼育すると、たくさんの卵を産みつけてくれますので、それでもいいでしょう。
あんまり「飼育している」という実感がわきにくい方法ですが、こうすれば、この変な生き物と同じ時間を共有でき、幸せになってもらえるというか支配できてしまえるのですから素晴らしいことだと思いませんか。
ただ、ちょっとした手抜きで簡単に餓死、乾燥死が訪れてしまう生き物であることも忘れずにいましょう。自分が、そういう生き物を飼育するのに向いている性格かも大切なファクターです。
世界最小のヘビ、というのは、実はこんなどーでもよさそうな変な生き物であったわけです。しかし、私がメクラヘビに屈折した賞賛を送り続けていることを代弁してくれるように、今回のヘビを発見したHedges博士は、こんな趣旨の言葉を述べているようです。
曰く
「外見上は区別がつかないが、DNAレベルで見ると近縁種ととてもかけ離れていることがわかった。こんな小さな生き物なりに、しっかりと種としての個性を持っているのは素晴らしい」
そう、私たちから見て、どうでもいいようなこんな小さな生き物ですが、大きな生き物と同じ「いのち」を持って、私たちと同じ時間を地球で過ごしているんです。
ブラーミニよ、もうオマエのことをけなすまい...いや、褒めているんだって!
R. endoterusの頭部。上顎が扁平で大きく下に曲がっている。こういう個性が、またメクラヘビの魅力 |
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