爬虫類・両生類/両生類・爬虫類関連情報

「亜種」に...こだわる?

久しぶりの、超蘊蓄記事です。わかっているようで、よくわからない「亜種」の解説です! これでオンライン図鑑の楽しみ方も増えるはずです!!

執筆者:星野 一三雄

全国の両爬ファンのみなさん、コンニチハ!!

例えば、私が
「おまえは『アカマダラ』飼っているのか?」
と聞かれたら、ちょっと一瞬なんて答えたらいいか迷っちゃうかもしれません。

なぜでしょう???
今回は、そんなお話です。なんのこっちゃ、ってですか?
何って...「亜種」ですよ。亜種。

実は、私のライフワークと化してしまったオンライン両爬図鑑「Terra Herps.」なんですが、それを読んでくれた、私の友人から一言
なんだよ『亜種』って。イミわからん
もちろん、20年以上日本人をやっているわけで、字面からなんとなく意味はわかるのでしょうけど、それをリストみたいにすることの必要性とかまで考えて「めんどくさい」感じがしての言葉なのでしょう。

そういうわけで今回は、両爬を生物学として語るときだけでなく、ホビーとして語る場合にも無視できないような感じもする「亜種」にクローズアップしてみました。

1種1亜種?1種2亜種?

さて、最初の質問に戻りましょう。
アカマダラというのは東アジアに広く分布するナミヘビの一種です。しかし、この「アカマダラ」という言葉には2つの意味があるのです。

アカマダラは読んで字のごとく「赤地に黒色の斑紋」のヘビです。ところが、沖縄の先島諸島にはアカマダラにそっくりですが体色が「茶色地に黒色の斑紋」のヘビがいます。これがサキシママダラです。
頭が黒くなってしまった...暴れん坊なんだもん
アカマダラの基亜種・アカマダラ


体色以外は、ほとんど同じような形態で、近年の遺伝子の解析の結果でも、この二つのヘビはほとんど同じであることがわかっています。
つまり、「色が違うけど、ほとんど同じ種類。でも住んでいる場所によって明らかに色が違う」というヘビがアカマダラには存在しているのです。この時「サキシママダラはアカマダラの『亜種』である」とするのです。

ところが、慣れていないとここからが話が複雑になります。
つまりアカマダラというヘビは
「中国大陸と日本にはアカマダラというナミヘビがいる。しかし大陸のは赤地に黒で、あとから見つかった日本の沖縄にいるのは茶色に黒。だからアカマダラは次の2つの亜種に分けよう。
・アカマダラ・・・中国大陸などにいる赤地に黒
・サキシママダラ・・・沖縄にいる茶色に黒」
というように1種で2亜種に分けて考えることになります。

これでおわかりでしょう。
要するに「アカマダラ」という言葉は「中国大陸と日本に生息している赤地に黒、あるいは茶色に黒の斑紋を持つヘビ」つまり「種としてのアカマダラ」と「日本の沖縄に生息する茶色に黒の個体群を除いた、赤地に黒の斑紋を持ったヘビ」つまり「『亜種』としてのアカマダラ」の2つを指す言葉ということなのです。
これは悪くない写真だと思うのですが
アカマダラの亜種・サキシママダラ(西表島産)

何がわかりにくいのか

さて、アカマダラは1842年、サキシママダラはそのあとの1907年に記載されました。ということは「今まで知られていたアカマダラとは、ちょっと違う感じのアカマダラが沖縄の先島諸島で見つかったぞ」となります。ですから、先に知られていた赤いアカマダラをメインに据えて、あとから見つかった茶色いアカマダラ=サキシママダラは亜種ということになります。

しかし、実際はアカマダラの歴史上、赤い個体から茶色い個体が生まれたのか、あるいは茶色い個体から赤い個体が生まれたのかはわかりませんから、「赤い方が先」というのは、あくまで私たち人間の都合です。ということはアカマダラもサキシママダラも並列の関係ということですから、種としてのアカマダラにはアカマダラという亜種とサキシママダラという亜種が存在する、ということになるのです。
ただし、便宜上、赤い方が先に知られていた、ということで赤い方を「基亜種」としてメインに据えて考えているのです。

だから私は「アカマダラを飼っているか?」と聞かれたときに、「種としてのアカマダラなのか、それとも基亜種の赤いアカマダラのどっちのことを言っているのか?」などとへそ曲がりな考え方をすることになるわけです。いや、本当はそんなことは考えませんよ。どっちもいるし。いぇい。

要するに種名と基亜種名が同じだからわかりづらいということです。

一方、北米の5つの亜種を持つラットスネークはわかりやすいかもしれません。
つまり「亜種全体を含む種としてはコモンラットスネーク」と呼び、「基亜種はブラックラットスネーク」と呼ばれているからです。
こういうわかりにくさ、というのは日本でしか使えない和名や理屈上英語圏だけで通用する英名で考えるからです。
こうなると大切なのは「学名」ということになります。
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