皮膚呼吸
記事にもあるのですが、これらの肺がない両生類たちは酸素と二酸化炭素の交換つまり呼吸のほとんどを「皮膚呼吸」に頼っています。もちろん、両生類は肺がある種類でも、多くを皮膚呼吸に頼っていますが、肺のない種類はその依存度が大きいわけです。
気体は、水に溶けるときに「低温ほど溶けやすい」というルールがありますから、今回のボルネオバーバーガエルもハコネサンショウウオも冷水の環境で生活していますし、両生類が高温に弱い原因の一つでもあるわけです。
また皮膚呼吸を能率良く行うためには、皮膚の「表面積」を大きくする必要もあります。
写真を見る限りでは、ボルネオバーバーガエルもやや皮膚がたるんだ印象を受けます。
ただし、この特徴は日本をはじめ、世界中のカエルでよく知られた現象で、関東地方などの山地に生息する「ナガレタゴガエル」は繁殖期になると、ほとんどを水中で生活するため、皮膚呼吸を能率良く行う工夫として、著しく皮膚が伸びて垂れ下がって異様な印象のカエルになります。
肺がないカエル
と、このような多くの「肺がない両生類」を知っている、我々両爬ファンから見てしまうと、今回のニュースにはそれほどのインパクトがなかったわけですが、英文の解説などを読むと、なかなか「ほぉ、なるほど」と思うようなことも書いてあります。つまり「なぜボルネオバーバーガエルには肺がないのか」という理由です。
今回の発表をしたデビッド・ビックフォード氏が言うには「浮力を捨て去るため」であろう、ということでした。
つまり、生息環境が山地の渓流で流れが速い場所だから、浮力があると流されたり、うまく泳ぐことができない。そこで、もともと両生類なわけで、皮膚呼吸ができるのだから「浮力の原因になる肺」は不要どころか邪魔。それなら捨て去ってしまえ。ということで肺がなくなってしまったのだろう、と。
どうです?なかなかなるほどでしょう。さすが学者さんです。
さらに想像すれば、浮力を失ったことで、浅い場所で生活しなくてはいけなくなった、浅い場所では天敵から襲われやすくなるので周囲に警戒を常にしておかなくてはいけない、さらに浅い場所は少ない餌の量も限られるから、餌を見逃さないためにも目が大きく前方についていると。
で、こう考えれば、たぶん、今まで知られているカエルの中にも「肺がないカエル」っているんじゃないでしょうか?今回みたいに解剖所見が知られていないだけで。
と言うわけで、イマイチ、インパクト不足だった今回のニュースも、カエルの特異な形態と肺がない理由を考えることで、これだけイマジネーションが広がって楽しくなるわけです。
どんなに知識があっても、こういうイマジネーションによって、さらに楽しみも倍増するという例ですよね。
っていうか、確かに「肺がないカエル」自体が世界初なんだけどね。
<参考サイト>
日本と世界の両生類の図鑑サイト「びっきとやまどじょう」
<関連サイト>
カエル from All About 両爬サイト
有尾類 from All About 両爬サイト