久しぶりに、両爬の各グループごとの魅力などを概観してヨイショする「両爬の魅力シリーズ」です。
今回は「禁断のワニ」です...
ワニを一般の両爬と同等に並べて「ペット」としてその魅力を語ることに関しては賛否、いや否定する意見が多いし、もちろん私だってそう思っています。
しかし、根強いワニファンが存在するのも事実。きっとワニには、それと一緒に生活することに何らかの魅力的なことが存在するのでしょう。
特定危険動物の記事でも紹介したように、1匹のワニとの生活を始めて1年が経とうとしている私の経験を中心に、ワニと生活するということはどういうことなのかを、結局書いていたら長くなってしまったので前後編の2回に分けて考えてみました!!
ワニという動物
ワニは爬虫類の中のワニ目に分類される動物で、驚くべきコトに現生の鳥類はワニともっとも近いと言われています。鳥類は恐竜とも近いということがわかっていますので、と言うことはワニは恐竜にも近いわけです。ジョンストンワニ |
鳥類に近いからというわけでもないのかもしれませんが、ワニは仔を守ったり子育てを行うなど、比較的社会性を持って生活をしています。中には1-2年間も親が仔を育てる種もあります。そういう意味では、他の爬虫類と一線を画す存在であると言えるでしょう。
よく知られていることですが、ワニは声を使ってコミュニケーションをとることができると言われています。例えば、卵から仔が孵化したときに、仔が声をたてることで親ワニが巣を掘り返して孵化した仔を取り出したり、孵化を助ける行動をとります。
また仔ワニが敵に襲われたときなどの鳴き声を親ワニだけでなく、その声を聞きつけた成体ワニが助けに来ることもあります。
もちろん、雌雄の繁殖行動やオス同士の闘争なども声を使います。
現生の爬虫類で、これだけ声を使ってコミュニケーションを行うのもワニだけといえるでしょう。
水際で獲物を狙うこれだけの大型動物は哺乳類には存在しないため、まさにワニは「水際の王者」と言えます。しかしこんな水際の王者ですが現在、世界中に2-3科23-4種しか知られていません。
アリゲーターとクロコダイル
ワニの仲間は大きく分けて2つの科に分けられます。つまりアリゲーター科とクロコダイル科です。アリゲーターとクロコダイルは何が違うのか、よく論じられますが、簡単に言えば
- 口を閉じたときに下顎の第4歯が外から見えるのがクロコダイル、見えないのがアリゲーター(右下の写真参照)
- 腹を地面につけず体を持ち上げるようにして歩くのがクロコダイル、腹を地面にくっつけて歩くのがアリゲーター
- 腹に感熱器官があるのがクロコダイル、ないのがアリゲーター
クロコダイルの特徴 赤矢印が下顎の第4歯 |
ということになるのですが、外見上の特徴は例外もあるため確実な方法とは言えません。
一般的にはクロコダイルの方が口吻が長く、アリゲーターは太短い印象が強いです。
その他に「カイマン」と呼ばれるグループがいますが、カイマンはアリゲーター科に属すとされています。
また「ガビアル」と呼ばれる、非常に口吻が細長いワニがいます。ガビアルはガビアル科として独立する場合もありますが、クロコダイル科に入れる方が一般的なようです。
これらの種の区別の方法は慣れていないと難しく、一般的には歯の並び方と首にある大型の鱗の数や配置で見分けるのがもっとも簡単な方法のようです。
ワニと免疫
残念ながらワニの仲間は、さまざまな理由でその個体数が激減しており、絶滅の危機に瀕している種も少なくありません。「ワニなんて危険な動物、減っていったっていいじゃん」
なんて人間の都合で言われてしまうかもしれません。
しかし、実はもしかするとワニは今後、私たち人類をある危機から救ってくれる存在になるかもしれないのです。
それは最近の研究によって注目を集めている「ワニの免疫機構」です。
野生のワニは、比較的汚い水の中でも平気で生活していることが多く、またオス同士の激しい闘争などで、大変な傷を負ってもすぐに治癒してしまう現象が知られています。
これはどうやら、ワニには非常に強い免疫力があって、雑菌による感染症を防いでいることが原因であると考えられています。
さらに注目されているのは2005年にオーストラリアの研究チームが発表した「ワニの血液にはエイズウィルス(HIV)に対して無力化する力があるらしい」という研究結果です。
もちろん、これは試験管内での実験の話ですし、大なり小なりどんな生き物にも免疫力があるわけですから、とりたてて大げさに騒ぐ話題ではないのですが、改めて自然の奥深さや生命の神秘を感じさせる話題と言えるでしょう。
存亡が危ぶまれるワニが、まさに文字通り「水際で」存在価値を見出されて、より保護に注目されるかもしれませんね。
ワニ以外でも、いろいろな野生の生き物たちがもしかすると、一般の方にもわかりやすい存在意義を持っていて、それを見出されて大切にされていけば良いんですが。