遺体の処理
特にツボカビ症が原因で命を落としてしまった個体の遺体の処理には十分な注意が必要です。またツボカビが入り込んでしまった可能性がある飼育施設で飼育されていたカエル以外の生き物に関しても同様です。絶対にしてはいけないことは
・土に埋める
埋葬です。
大切に飼育していた個体ですから、土に返したいという気持ちになるのは十分に理解できますが、これだけは厳禁です。
本当にこんなことは書きたくないのですが亡骸の処置方法は
・火葬する
・可燃ゴミに出す
・ホルマリンやエタノールで固定する
のいずれかになります。
ただポジティブに考えれば、今はペットの葬儀ビジネスがさかんですから、そういう業者に相談をしてしっかりと火葬してもらって供養をできる、という方法もありなのではないでしょうか。
カエルの生息地への足の踏み入れに注意する
おそらく、世界中にツボカビが蔓延してしまったのは、私たち人間が知らず知らずのうちにカエルの生息地にツボカビを運んでしまったからでしょう。もちろんワザとするわけではないのですが、今後はいつでも私たち飼育者や愛好家、研究者がツボカビの運搬者になってしまうことを肝に銘じなくてはいけません。
特に、今の時期はアカガエルやヒキガエル、止水性のサンショウウオが産卵地に集まってくる季節です。また水温も低く、ツボカビが死滅する可能性がありません。万一、そのような産卵場所にツボカビが侵入してしまった場合は、その個体群が壊滅するおそれは十分にあります。
考えられるパターンはいくつかありますが、次の3点に絞って考え、カエルの生息地にツボカビを持ち込まないようにしましょう。
1.飼育者の踏み入れ
特に、ツボカビが飼育施設に入り込んだ可能性が考えられる飼育者は、カエルの生息地に不必要に足を踏み入れないようにしたいものです。
どうしても、足を踏み入れる場合は「クツ」を、前回の記事で紹介した方法で消毒してから行きましょう。また不必要に生息地のカエルに触れることも慎みます。
逆に帰ってきたときも、家に入る前にクツや手を消毒することを忘れずに。実は、すでにその生息地にツボカビが入り込んでいて、自分の飼育施設にツボカビを持ち込んでしまう可能性もあります。
2.研究者の移動
カエルの研究や調査などに携わっている研究者や学生、ボランティアの方々も注意して下さい。
これらの方々はいくつかの調査地点を移動することが多いと思います。
すでにツボカビが侵入している場所から、別の場所にツボカビを持ち込んでしまわないように細心の注意をする必要があります。
具体的には
- クツや手の消毒
- 自動車のタイヤの消毒
- 採集器具など備品の、異なる地点での共用を避ける
- 不必要に生体をハンドリングしない
特に、研究に使われているアフリカツメガエルはツボカビのキャリアとして疑われています。研究室でアフリカツメガエルを飼育している場合は生息地に行く場合に十分な注意をしましょう。
3.生体の採集
1.や2.と同じようなことかもしれませんが、両生類は一般の方がはじめて両爬を飼育する場合に選ばれることが多い生き物です。注意を喚起する意味でも改めて。
ツボカビの事だけではありませんが、
飼育のために採集する数は最小限に抑えましょう。
飼育しきれない数を採集してしまったら、それを逃がすという選択をする可能性が非常に高いでしょう。自分の手、家のまわりにツボカビがいる可能性は0%ではありません。
一度持ち帰ったら、二度と外に出さないように心がけて下さい。
餌用に採集する場合
カエルをヘビの餌として採集している方も多いと思います。
ツボカビの遊走子が冷凍によってどうなるかは情報がありませんが、少なくとも冷凍する方がしないよりはリスクが少ないでしょう。
ですから、餌用のカエルは冷凍をして、解凍後にヘビに与える方が良いでしょう。そうしてもほとんどのヘビは食うはずです。寄生虫対策にもいいでしょうから。
ただ、注意したいのはヘビの消化管内でツボカビが死滅するかはわかっていません。
できればフンなどの排泄物やヘビの飼育水を捨てるときは消毒を行った方が良いでしょう。
以上、3回にわたってツボカビの対策をテーマに記事を書いてみました。
日本のカエルたちを守るためにも、できる限りのことをするのが、同じ両爬の飼育を楽しむ私たち愛好家や研究者の義務であると思います。
<関連サイト>
WWFジャパン
ツボカビ症に関する解説書(PDFファイル) from 麻布大学
ツボカビに関するQ&A from 麻布大学
カエルのツボカビ検査の受け方 from 麻布大学
<関連記事>
緊急記事・カエルツボカビ症
ツボカビ症の対策1・診断と治療
ツボカビ症の対策2・検疫と消毒
<関連INDEX>
病気・健康管理(動物病院検索)