爬虫類・両生類/両生類・爬虫類の病気・健康管理

ツボカビ症対策・前編(診断と治療)(2ページ目)

すでにネット上では多くの情報が得られるようになっていますが、未ださまざまな誤解や理解不足が原因と思われる問い合わせなどがあるツボカビ症です。その診断と治療に関してまとめてみました。

執筆者:星野 一三雄

ツボカビ症の診断

基本的に、そのカエルの様子を見て「ツボカビ」が原因なのか、そうでないのかを見極めるのは非常に難しいでしょう。
簡単な診断テストとして
・カエルの背中を指でそっとなぜる→目をぱちぱちしない(健康なカエルは目をぱちぱちする)
・カエルをひっくり返す→ひっくり返ったまま(健康なカエルは元に戻ろうとする)
・カエルの口を軽く握る(つまむ)→反応無し(健康なカエルは前足を使って逃れようとする)

というのがあります。

ただ、これってツボカビ症で特有の症状ではないですよね。
カエルに限らず健康な両爬だったら反応するし、健康を害している個体は反応はないでしょう。
だからこれはあくまでも「カエル(両爬一般)の健康診断」と考えた方がいいでしょう。つまり
万一ツボカビ症に感染していたら大変なので、カエルの様子がいつもと異なっていないか、あるいは元気があるかを確認してみましょう
ということです。
このテストをしてみて、飼育中のカエルが該当するようなら、ツボカビ症感染を疑ってそれなりの対処を考えるべきだということです。

ツボカビ症に感染したカエルは、感染したあと2-5週間(急性の場合は3-4日間)のうちに死亡します。
したがって、この二ヶ月間、つまり昨年の11月あたりから今までの間に、新しい個体(両生類、観賞魚、水草、砂利、中古の水槽など水が関係するもの)を購入したり他の飼育者から譲ってもらったり、野外から採集してきたような方で、最近飼育中のカエルの様子がおかしくて、診断テストでヤバそうだったら、ツボカビ症感染の可能性はあります。

そういう心当たりがなくてカエルの様子が変である、という方は不必要に不安がる必要はないような気がします。
特に日本のカエルのような温帯性のカエルをこの時期に無加温で飼育してるのならば、冬眠状態になっているでしょうし、寒くて乾燥している時期ですからどんなカエルでもあまり活発ではないでしょうから。

とにかく、普段からよく観察していつもとカエルの様子が違ってないか、を観察しましょう。
カエルは、表情や表現力が豊かな生き物ですから、訴えのサインはわかりやすいはずです。

ちなみに肉眼で見える範囲でも、特別に特徴的な変化は見られないようです。
たとえば発疹ができる、赤くなる、腫れる、しこりができる、などはあるようですが、これもツボカビ特有ではありません。
ツボカビは「カビ」と名がつきますが、菌糸を這わせるような生き物ではありませんから、いわゆる皮膚の表面に糸状とか綿状とかのものが付着する、というようなこともありません。そういうのが確認できるようなら、それはまたそれで別の感染症です。

ツボカビ症の治療

まず第一に、自分で治療しようとは思わない方が良いでしょう。前述したように診断さえも難しいのですから。おかしいと思ったら動物病院に相談することです。しかし、それでも治療法と考えられる術を知っておくことは損ではありません。

ただし治療といっても、相手はツボカビどころか病気に関しての情報もほとんど進んでいないようなカエルですし、一般的には体も小さいですから症状が表れた時にはすでに...ということも十分に考えられます。
ですから、ここで紹介する方法で確実に治る、とは考えないで下さい。仮にそれが、動物病院で獣医師の先生に診療をしてもらったとしてもです。

塩化ベンザルコニウムでの薬浴
塩化ベンザルコニウムは消毒用として販売されている「逆性セッケン」です。これの1mg/Lつまり1リットル中に1mg溶けている濃度にした水溶液にカエルを浸します。
例えばこちらで紹介しているのは10%ということですから、100ml中に10g含まれているわけです。この溶液が仮に1リットルあるとすれば、その中に10g×10=100g含まれていることになります。
1mgは1000分の1gですから、このままでは1リットル中に1000×100g=10万g含まれています。カエルの治療に使うのは1リットル中に1mgですから、これでは10万倍の濃度になってしまいます。したがって、この溶液を10万分の1に薄めることになります。

家庭では1mlとるのは難しいので、調理用の計量スプーンを使ってみましょう。
計量スプーンの一番小さいモノは5mlですから、これを10万倍に薄めます。
一発で10万倍にはできませんので、まず水500ml(厳密には495ml・ペットボトルを利用する)に溶かします。これで100倍です。で、これを同じように計量スプーン小にとって、もう一回500mlの水に溶かします。これで100×100=1万倍。さらにこれを10倍に薄めます。計量スプーン小では厳しいので、計量スプーン大(15ml)にこれをとって、コップ(普通は180ml)の水8分目(145mlくらい)にすると計算上は目標の濃度になるはずです。
おさらいしてみましょう。

・10%塩化ベンザルコニウム水溶液を計量スプーン小にとる
・ペットボトル500mlの水に溶かす
・これを計量スプーン小にとる
・再び500mlの水に溶かす
・今度は計量スプーン大にとる
・これをコップ8分目の水に溶かす
・できあがり


こうして作った消毒液に1日1時間、2日おきに浸します。個体ごとに溶液は交換します。

・加熱による治療
ツボカビは熱に弱いので、感染したカエルを高温に保温した状態で飼育して治療をするという方法です。あくまでもオーストラリアの樹上性カエルでの成功例ですのでご了承ください。
37℃で8時間以上静置する。これを二日連続で行う。

その他の方法は、一般の方には無理と思いますので、ここでは割愛します。

次のページでは、ツボカビ症に詳しい獣医師の先生方「ツボカビ症・コア獣医師」の一覧をご覧いただけます。
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