今回は、新年早々から大騒ぎになってしまった「カエルツボカビ症」の対処法を2回に分けてご紹介しましょう。
ただし、今回、紹介する方法はあくまでもネット上などで収集できる情報だけで、別に目新しいものがあったり、特別に有効な方法であったりするわけではありません。
ただ、いまだ誤解があったり、情報が散在したり、明らかにもっとも啓発が重要そうな「マニア」まで行かない一般の飼育者の方たちに理解とか実行ができなさそうな書き方をしている場合が多いようですので、ここではわかりやすく「まとめ」的な感じで記事にしてみました。
特に同じ時期に宮崎県で鳥インフルエンザ発生のニュースが流れてしまい、一般の方々の不安を煽ってしまう結果になったようです。
前編である今回は「診断と治療」をまとめてみました。
生物としてのツボカビについて
まずツボカビの対策をするために、ツボカビのことを知りましょう。ツボカビと呼ばれる生物は、生物学上ではツボカビ目と呼ばれる菌類の仲間ですが、今回のカエルのツボカビ症の原因になっているのはBatrachochytrium dendrobatidis という種類です。
今回のツボカビの一生(生活環)は非常に単純です。
ちょっとここでお馴染みの生物の基礎の勉強を。
「生活環」とは生物の成長と生殖の一回りの流れを表すものです。
例えば、私たち人間の場合は非常に単純です。
個体(人間)→配偶子(精子や卵)→受精→個体(人間)→精子や卵→・・・・
と、個体(人間)と配偶子(精子や卵)のくり返しです。
これが例えば高校の生物で出てくるシダ植物になると
胞子体(いわゆるシダの状態)→胞子→配偶体(前葉体)→配偶子(精子と卵)→胞子体→・・・
というわけで、ちょっと複雑です。つまり「胞子」を作って、それが独立した個体になって精子や卵を作るわけです。
あまり適切な例えではありませんが、これを人間に例えれば、私たち人間が自分の生殖器を切り離し、その生殖器が独立した生き物になって(キモイ...)精子や卵を作って、どこか全然別の場所で受精させて、その受精卵から私たち人間ができて、その人間がまた自分の生殖器を...おぇ、書いていて気持ち悪くなった。
で、話を戻して今回のツボカビですが、その生活環は「遊走子」という言葉が出てくるのでちょっとわかりにくいです。しかし基本的には私たち人間と同じような単純な生活環です。
つまり
胞子体(遊走子嚢)→遊走子(胞子)→胞子体(遊走子嚢)→・・・
と、いうわけで遊走子嚢と呼ばれる遊走子を作るための器官だけでできている胞子体(これがツボの形をしているのでツボカビと呼ばれる)と遊走子のくり返しです。
「遊走子」とは「運動するためのべん毛を持った胞子」のことです。
例えるならば、西遊記に出てくる孫悟空が、自分の毛をちぎって息を吹きかけると自分の分身がたくさんできて、という術を使いますが、それに似ています。
とにかく、ツボカビは遊走子が水中を泳いで移動して、カエルの表皮に寄生します。寄生した遊走子は、そこで胞子体である遊走子嚢に成長しますが、この時にカエルの表皮にある「ケラチン」を栄養源にします。
遊走子はカエルの表皮に寄生するときに穴を穿ち、その中でツボのような形の遊走子嚢を作ります。この時にカエルの皮膚で行われている機能を阻害するためカエルの生命活動に重大な影響を及ぼすのです。
一般には100個程度の遊走子の寄生により感染し、発病するのですが、ツボカビは水の中を泳いで移動しますので空気による感染はしないと考えていいでしょう。
遊走子は消毒のためのカルキ(塩素)が入っている水道水の中で3週間、何も入っていない精製水の中で4週間生存できることがわかっています。また池や湖の水や飼育水ではもっと長く生きると考えられています。
やや低温を好み、成長に適した温度は17-25℃で、23℃がもっとも適した温度です。実験では高温に弱く28℃で成長が止まり、30℃で死滅したそうです。
では、次はいよいよ「診断と治療」に関してです。