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コモドオオトカゲの単為生殖(4ページ目)

ビッグなクリスマスプレゼントが、動物の神様から我々に贈られてきました。世界最大のトカゲ・コモドドラゴンが、なんとよりによって単為生殖をしている...遺伝の勉強も少し入った記事になっています!

執筆者:星野 一三雄

性の決定

もう少し、生物の基礎の勉強にお付き合い下さい。

さて、人間には46本の染色体があるわけですが、これは減数分裂によって半分になってしまうため、すべて同じ染色体を二つずつ存在して対になっています。人間の場合は23種類の染色体が23対になっています。この中の1対が性を決定する染色体「性染色体」と呼ばれるものです。この機構は生物の種類によって種類があり、人間の場合はXY型と呼ばれる形です。

XY型の性決定とは、X染色体とY染色体の2種類の性染色体の組み合わせで性を決定します。
つまりXYの組み合わせを持つのならば男性、XXの組み合わせならば女性になります。
YYの組み合わせはありません。なぜならY染色体は男しか持っていません。そのためYYになるためにはオスの配偶子どうし、つまり精子が2つ合体しなければ作れないからです。

つまりオスはもともとXYの組み合わせで染色体を持っていて、減数分裂をすることでXを持つ精子とYを持つ精子を作ります。
一方メスはXXですから、作る卵細胞はXの染色体を持つものだけしか作れません。
そして受精の時にXの精子とXの卵が受精すれば生まれてくる子はXXですからメス、Yの精子とXの卵が受精すればXYになるのでオスになるわけです。

コモドオオトカゲの性決定はZW型

ところが、今回のコモドオオトカゲを含めたトカゲやヘビの仲間(有鱗目)はZ染色体とW染色体の2種の組み合わせのZW型の性決定を行います。
※ただし、多くの爬虫類には温度による性決定(TSD)が知られていて、この場合は性染色体の組み合わせは無関係です。

※上記の記述ですが、これを読んで下さった方から「コモドオオトカゲはZW型でであるが、トカゲの仲間でもXY型の性決定をするものも非常に多く知られている」との貴重な御意見をいただきました。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。

これはXY型と逆でオスがZZの組み合わせ、メスがZWの組み合わせになります。
もしもコモドオオトカゲが、オガサワラヤモリやブラーミニメクラヘビのような「クローン」を作る単為生殖ならば生まれてくる子はすべてZWの組み合わせのメスになります。

しかし、コモドオオトカゲの単為生殖は異なります。詳しくはわかっていないのですが、おそらく次の通りではないかと考えられます。
メスの体内で配偶子(卵細胞)が作られるときに減数分裂が行われZの染色体を持つ卵とWを持つ卵が生じます。
減数分裂は、このあと「第二分裂」という全ての染色体の複製を作ってから再度分裂を行います。これによって「Zを1個だけ持つ卵細胞」が2個と「Wを1個だけ持つ卵細胞」が2個の計4個の卵細胞を作ります。

ところが単為生殖を行う時に、第二分裂が染色体だけで行われ、細胞自体は分裂しないという現象が起こります。こうなると結果的に一つの卵細胞の中にZの染色体を2つ持ったZZの卵細胞が生まれます。もちろんWWの卵も生じますので、計「ZZの卵」と「WWの卵」が1個ずつで2個の卵しかできません。ところがWWの組み合わせはあり得ない(おそらく致死性の組み合わせで発生せずに死んでしまう)ので、ZZの卵だけが残ります。

この卵はZZだけでなくすべての染色体を対に持っているので、結果的に受精した卵と同じことになり発生を続けて個体になっていきます。そしてこの個体は「ZZなのでオス」になるわけです。
このようにして得られた子はZ染色体だけでなく、残りの染色体もすべて対になっているものどうしが複製されたものになっているので遺伝子情報が同じになっています。

以上が、単為生殖によって生まれたコモドオオトカゲがすべてオスである、という説明です。
簡単に言えば、今まで知られていた爬虫類の単為生殖は「メス親の普通の細胞のクローン」であるのに対して、コモドオオトカゲの単為生殖は「Z染色体を持つ卵細胞のクローン」であるわけです。

今回、得られたチェスター動物園のFrolaの卵の遺伝子の情報とロンドン動物園のSungaiの子たちの遺伝子の情報は、ZZ型であることは当然ですが、他の対になっている染色体も完全に複製されていたものであることが確認されたため、以上のような仕組みで単為生殖されたものであると結論づけられたわけです。
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