ハイナンの歴史
ハイナントカゲモドキは雑誌「ビバガ」で取り上げられてからゴニマニア以外にも広くその存在が知られました。昨年の秋についに大量入荷を果たしてから、雑誌などでわかりやすく紹介されていますので、ご存じの方も多いと思いますが、ある意味、大騒ぎの入荷でありました。というのも「ハイナントカゲモドキ」という名前にゴニマニアは憧れを持っていたからです。
ハイナントカゲモドキという名前だけは知られていたのですが、写真もほとんどなく
「どんな生き物なのか?」
「ヒョウモントカゲモドキやニシアフリカトカゲモドキのライバルになるのか?」
という前評判だけは高かったのですが、なかなか両爬愛好界に姿を現さず、まさに幻のトカゲモドキだったのです。
ゴマバラトカゲモドキの顔 写真:幻想熱帯雨林 |
最初にその名前で来日したゴニは「中国産ハイナントカゲモドキ」というよくわからない名前をつけられ、実はあとから
「ハイナントカゲモドキG.l.hainanensisとは別種の新種『ゴマバラトカゲモドキGoniurosaurus luii』である」
と。
アシナガトカゲモドキの顔 写真:幻想熱帯雨林 |
次に「ハイナン」として来たゴニは「ベトナム産ハイナントカゲモドキ」であり
「お、いよいよ来たか!?」
と盛り上がったのですが、結局は
「ハイナントカゲモドキG.l.hainanensisとは別種の新種『アシナガトカゲモドキG.araneus』である」
という顛末でした。
そんな中で、昨年の秋に、まさに三度目の正直。本当の「ハイナントカゲモドキ」が日本にやってきたのでした。
ハイナントカゲモドキの顔 |
ハイナンの魅力
ハイナントカゲモドキの魅力は、ただ単に「幻であった」事だけではありませんでした。私は現在までに、すでに天然記念物となってしまったオビトカゲモドキG.k.splendensとゴマバラトカゲモドキを飼育してきたのですが、今回のハイナン、この二種に比べて、その輸送状態やストックの状況がよかったこともあるでしょうが、本当に飼育しやすい。
ハイナンは大きさも手頃 |
その魅力として、飼育設備が簡素ですむことがあげられます。
もともと夜行性で不活発なこともあり、飼育容器も小さくていいし、紫外線にこだわるような照明も必要ありません。冬の保温はフィルムヒーターで底面から温めれば十分です。
何よりも、これは個人的な価値観の問題でもありますが、フォルムがカッコイイというのは大切なことでしょう。野性的な感じがしていつまでたっても人との接触を避けようとしているような雰囲気は、いかにも「野生動物を飼っている」という満足感を与えてくれます。
基本的に不活発なイメージのある生き物ですが、ハイナンは他のゴニに比べると神経が図太いような印象を受けます。
他のゴニ達は餌のコオロギを投入しても、翌朝見てみたら餌がなくなっていた、というパターンが多く、なかなか活発に餌を食う場面というのは見られないモノです。よくてもシェルター内に入り込んだコオロギに食らいつく姿くらいですが、ハイナンは餌のコオロギが投入されると、すべての個体がすぐにシェルター内から飛び出してかなり貪欲にコオロギを追いかけるという頼もしい姿を、私たちに見せてくれます。
ハイナンに限らず、ゴニの仲間は分布も限られていたり、環境破壊に弱い面がありますので消費的飼育は許されません。ですから常に繁殖技術の確立を目指し、全面的にCBが流通できるようにするのが至上の命題とも言えます。
そういう点で見てもハイナンは比較的、飼育下での繁殖はしやすいように感じます。昨年の秋から飼育されている方がほとんどでしょうから、繁殖の誘発までは不明の部分が多いのですが、少なくとも今年の繁殖実績を見ると、飼育されている方の多くは
「他のゴニよりも簡単であった」
という印象のようです。
ハイナンのベビー 写真:幻想熱帯雨林 |
もちろん一年前まで野性で生きていた個体ばかりですので、野性で蓄えた栄養が十分であり、いわゆる「いい卵」が得られたこともありますが、きちんと2卵ずつ2ないし3クラッチの卵を産み、高い孵化率と幼体の育てやすさは他のゴニの追随を許しません。
まさに「初めてのゴニ」として一押しできるゴニと言えるでしょう。