コントラスト、暗部階調の進歩を背景に、
むしろ、誇張のない自然で雄大な映像を味わわせる
昨年秋に初代KUROが登場した時からの課題、暗部を中心によりきめ細かい階調ステップ、という点で今年のKRP-600AとKRP-500Aは大きな進歩を遂げたのでしょうか。コントラストのダイナミックレンジはさらに大きくなりました。
例えば、ブルーレイディスクの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の冒頭のシーンを昨年のKUROと比較して見ると、コントラストレンジの拡大を背景に、映像の基本である輝度表現が深く厚くなっている事がわかります。この点で、KUROのコンセプトをさらに発展させたのが今年のKRP-600AとKRP-500Aであることが伝わってきます。
件の、最重要課題である暗部階調のステップのきめ細かさはどうでしょう。この映画の前述のシーンや油井に湧き出す原油の薄闇の中のさまざまな黒から灰色の描写で、進境がうかがえます。しかし、やはり絶対的な黒のさらなる伸びの方が勝っていて、肌理細やかなフィルム的、アナログ階調表現という新たな出発点に立った印象で、パナソニックと共同開発する次世代の製品への期待がふくらみます。
これだけテレビが「特別な注目」を集めることは珍しい。付加価値創出という点では紛れもなく成功したのだが。KRP-600A 希望小売価格 \940,000(税込) |
KRP-500A/600A(KRP-600M)は、セルの蛍光体がEBU(欧州放送連合)に替わっています。アメリカや日本のテレビで使われているものとは色相を異にしているのが特徴です。昨年のKUROで、セルの予備発光を減らした副産物として低輝度領域での原色の純度を高めたのは記憶に新しいですが、9Gは黒輝度が更に低下して相対的に色の鮮やかさが増しているのも印象的です。
例えば、ジュリー・テイモア監督の『アクロス・ザ・ユニバース』は、エヴァン・レイチェル・ウッド演じる、恋人をベトナムで失った娘がリヴァプールからやって来た若者と恋に落ちるシーンで、彼女の輝く金髪と恋のときめきで紅潮した白い肌の対比が、作為的にならない範囲で生き生きと描き分けられ、描写されます。
KRP-600Mから搭載のディレクターモードはテレビタイプの全機種にも搭載されますが、現行の家庭用ディスプレイの中で最も素直な特性の映像で、映画に適した6500k(晴天時正午の自然光を基準に、映画や放送が製作の基準に置く色温度)やガンマカーブ2.2乗(映画素材とテレビの映像特性を一致させる基本の補正値)、EBU蛍光体(先述)という条件下で、ホワイトバランスと輝度がリニアリティを最高度に発揮し、出力の上下によってホワイトバランスが狂ったりすることがなく、あくまで正確なバランスを保持し続けることが特徴です。
薄型テレビの環境との一体化をリードするメーカーがパイオニア。ようやくパイオニアの描いた設計図が現実のものになろうとしている。 |
さて、ついに登場したKRP-500A/600Aは、決してプラズマテレビの完成形ではありません。技術成果に溢れた、優れた製品であるからこそ、先に例に挙げたきめ細かな階調表現を始め、プラズマテレビには、まだまだやることは多いことを告げています。
しかし、同時にKRP-500A/600Aは、「ここにしかない」魅力が横溢している製品なのです。映像とサウンド、さらに環境との一致のすべてに妥協を許さず取り組んできたパイオニアの理想主義の輝きを感じられる製品です。同時に、持つことの喜びを味わわせる稀有な製品です。
モニタータイプのKRP-500M/600Mの場合、近日発表のパイオニアのブルーレイディスクレコーダー(チューナー搭載)とコンビネーションを組む使い方が考えられます。こうした余地を考えてあなたの「理想の一台」を選んでみてください。
【関連リンク】
・パイオニア KURO
■ガイドのこぼれ話が読めるメルマガはこちらからどうぞ。