オプションのカラーセンサーでセンシングの
自動化を進め、環境との一体化で他社を再びリード
「リビングモード」も、KRP-600AとKRP-500Aで第二世代になりましたが、環境の分析能力と適応をさらに進めています。別売のカラーセンサー(ハマフォトグラフ製)をディスプレイ本体に専用ケーブルで装着すると、白熱照明か蛍光灯か、自然光かという室内照明の種別を認識し、本体に内蔵済みの照度計の測定結果とあわせて室内環境を判定します。
映像のジャンルの認識も去年よりきめ細かくなり、昨年はワンフレーム(一コマ)全体の情報だったのが、今年は部分まできめ細かく精査して精度を高めています。アニメと言ってもピクサーのフル3DCGとジブリの2Dアナログアニメでは、色も画の質感も違うわけですが、色の分布特性でそれを判断、アニメの中の映像の違いまで認識して映像調整に反映させるというから驚きます。
リビングモードは照度連動して音質も最適化しますが、暗い場所だと鋭敏になる人間の聴覚特性に注目して、環境が明るい場合、細かな音が聞き取りやすくなるように、高域の一定の周波数を3DB程度イコライジングします。
オプションのカラーセンサーを装着すれば、室内照明の種別まで自動入力される。「リビングモード」は、照度連動の画質調整、さらに音質まで連動させる一歩先を行く機能 |
デジタル技術に頼らず、アンプとスピーカーを
薄型にあわせて新たに開発した「音のいいテレビ」
「音のいいテレビ」に最も正攻法で取り組んでいるのが、今年のKRP-500A/600Aです。薄型テレビのデザインの流れとして、スピーカーの存在を「隠す」方向にありますが、パイオニアが、自社のユーザーを調査した結果、4割がテレビに付属したスピーカーで聞いていることが分ったそうです(パイオニアのユーザーで4割ですから、薄型テレビ全体では8割がそうでしょう)。
KRP-500A/600A の場合、壁掛けして美しいスタイルをもう一度追求することが当初から求められていて、スピーカーの横幅を105mmから85mmへ、エンクロージャーの容積2.4リットルを2.0リットルへ縮小しながらいい音を出すことが課せられました。このあたりがパイオニアらしいのですが、他社製品ならDSPを使って聴き映えする音質を演出するところですが、そうはしないのです。
まず、アンプ基板とスピーカーユニットを新開発しました。スピーカー振動板は、スピーカーのコーンをフレームにつなげるエッジ部分にコルゲーションエッジを採用、コーンの振れ幅を取り、低域の立ち上がりを改善し再生できる低音から高音までの幅(Fレンジ)も広くなりました。波状の切れ込みをトゥイーターの振動板に入れ、レスポンスを改善しました。
アンプ部も同様です。基板の薄型化に併せて高さを抑えたコイル、コンデンサーを新開発し、コイルは巻線と磁性粉の、コンデンサーは電解質のグレードを上げました。さらに、電源ケーブルはOFCの極太18番線を使った縒線を奢っています。
ここまでやって音がよくならないはずはありません。効率探求がすべての潮流にあえて抗う、この頑固さ。「だから、やっぱりパイオニアなんだよな」とまたまた溜飲を下げるファンは多いことでしょう。
次のページでは、KRP-600AとKRP-500Aの画質について紹介します