こんなカラフルな建物は、
日本の寺にはない?
海印寺だけでなく、たいていの韓国の寺は、こんな色に塗られている |
日本の寺って、なんか地味ですよね。日光以外は…
うーん。確かにそうなんですよ。現在はね。でも、もともとは日本の寺も、けっこう派手なものも多かったんです。建物も赤や緑色に塗られていたし、内部にも、韓国の寺と似たような豪勢な模様がありました。お寺は仏様の住む世界ですから、本来、華やかでなくてはいけない場所なんです。なぜならお経に、仏の世界は、極彩色の花々が咲き乱れる世にも美しい場所だと書いてあるからね。
日本の寺好きに大人気の奈良の室生寺。侘びた風情が魅力だが、確かに韓国の寺とくらべると、圧倒的に地味だ |
しかし、日本では、お寺は、本来の仏教とは少し離れた芸術的、歴史的な建造物として扱われる場合が多いです。また、茶道などの影響による「侘び寂びの美」が、価値観の基準として定着していることもあり、古びたものは古びたものとして、現状維持の修復を施すのが普通です。そのため、日本の寺は、多くが、こげ茶色の木でできているように見えますが、造られたときは全然違った姿だった、ということもよくあります。
たとえば、宇治平等院の鳳凰堂の内部にも、そりゃもう豪勢な模様がありました。現在それはCGで再現され、併設の博物館内で見ることができますから、機会があったら、ぜひ、現在の様子とくらべてみてほしいです。
目がくらくらするような色彩と細密な絵。韓国の寺はこうでなくちゃ |
一方、韓国では、まだ仏教が宗教としての本来の姿を保っており、お寺は、歴史遺産である以上に、人々の信仰の場なんだと思います。だから、お寺本来の姿である華やかさを維持しなければならず、彩色がはげたら、そのつどきれいに塗りなおします。そのため、古い建物であっても、まるで最近建てられたもののように燦然と輝いており、日本人の目には、ややもすると「うーん、きれいだが、ちょっと派手すぎでは?」というふうに見えたりもします。要するに、日本と韓国では、美に対する価値観、そして、寺の存在意義が、大きく異なるということです。
次のページではさらに、韓国の寺の色彩と日本の寺の色彩を比較します。