協会閉鎖で通検・V通検が試験直前に中止
通訳技能検定試験(通検)やボランティア通訳検定試験(V通検)などを実施してきた日本通訳協会が、11月4日付けで閉鎖を発表。11月9日に実施予定だった試験が中止されるという事態になりました。突然の試験中止にショック…… |
協会閉鎖と試験中止が報道されたのは試験前日の11月8日。試験中止に関して、受験者には葉書でお知らせがあったようですが、あまりに急な出来事に不安と混乱が広がったことは言うまでもありません。
サイトには「業界の各社と協議中であり、 皆様方の受験料がむだにならないように努力していく所存です。」とあり、受験料の返還はない模様。受験会場は東京・札幌・仙台・大阪・名古屋・那覇の6箇所のみだったため、新幹線などを予約していた受験者も少なくなかったようです。受験日に合わせて海外から帰国したというケースもあり、もう少し早く発表することはできなかったの? と思わずにはいられません。
試験に向けて費やしてきた貴重な時間が無駄になった、と呆然とする受験者も多く、被害は受験料や交通費だけの問題ではありません。通訳を目指す皆さんが、このことによってやる気を失わないことを願わずにはいられません。
民間団体ゆえの突然の倒産?!
しかし、なぜ実施が決まっている試験が突然中止になるような前代未聞の事態に陥ってしまったのでしょうか。実は、日本通訳協会は民間団体で、そのため昨今の厳しい不況の影響をまともに受けてしまったのかもしれません。通検・V通検とも民間資格でしたが、社会的な認知度や影響力は決して低くはなく、通訳を目指す学習者にとっては数少ない通訳関連の資格として目標とされてきました。
通訳に関する国家資格としては国土交通大臣が実施する「通訳案内士試験」がありますが、こちらは通称「通訳ガイド試験」と呼ばれるように、旅行者を外国語で案内する観光ガイドのための資格。会議通訳者のための資格しては日本通訳協会の通検しか存在しなかったので、今回の協会閉鎖と試験中止は会議通訳者を本気で目指す人にとっては大変ショッキングな事件だったのです。
いつかボランティア通検を受験しようと思っていたが…
私もいつかV通検を受験しようと思っていただけに、今回のニュースには少なからずショックを受けました。ボランティア通検は、プロのための通訳検定ではありませんが、ボランティアを通じて英語力を活かしたい人には支持の高い資格でした。
ボランティア通訳に詳しい友人によると、例えばワールドカップのような大きな大会でボランティア通訳を募集するような場合、希望者も多いため、選別試験のようなものが行われることもあるのだとか。そんな時にV通検を持っていると有利だったそうです。英語を学びなおして国際交流に活かしたい、そんな学習者を応援してくれるような資格がなくなってしまうことは、非常に残念です。
通訳の仕事は経験と実力がものを言う世界。必ずしも資格が必要というわけではありません。時代の流れに負けることなく、優秀な通訳者が活躍されることを心から願うばかりです。
日本通訳協会は現在業界各社と協議中で、11月下旬頃に今後の方向性について概要をウェブサイトに掲載する予定としています。受験者が納得できるような充分な説明がなされることを期待し、経過を見守りたいと思います。