日本を代表する温泉研究家、郡司勇(温泉レポート)と、藤田聡(日本の名湯)両ガイドによる、年末恒例の特別対談!互いの温泉観も含め、今年も温泉好き必見の奥深い対談となりました。
それでは今年も早速、温泉好きによる、温泉好きの為の対談を始めます!なお、過去の対談は以下にあります。特に、当対談の主旨説明は2006年の冒頭にありますので、今年初めてご覧頂いた方は、2006年の対談も合わせて参照願います。
今年の温泉ベスト10 <2006年 対談前編>
今年の温泉ベスト10 <2006年 対談後編>
今年の温泉ベスト10 <2007年 対談前編>
今年の温泉ベスト10 <2007年 対談後編>
【 対談目次 】
- 温泉とは五感から官能的に湯を体験すること…1page
- 奥深く非常に楽しい香りの世界…2page
- 湯の色と析出物を観察する楽しみ…3page
- 温泉ベスト10 藤田分五位 天然高濃度炭酸泉 山里の湯…4page
- 温泉ベスト10 藤田分四位 垂玉温泉 山口旅館…5page
- 温泉ベスト10 藤田分三位 妙見温泉 妙見石原荘…6page
- 温泉ベスト10 藤田分二位 相乗温泉 羽州路の宿 あいのり…7page
- 温泉ベスト10 藤田分一位 地獄温泉 清風荘…8page
温泉とは五感から官能的に湯を体験すること
対談前の郡司勇、藤田聡両氏。群馬県みなかみ町内の公共の温泉宿にて。※写真はクリックで拡大。 |
<藤田> 郡司さん、今年も大変にお忙しい中、当対談にお時間を頂きまして、有難うございます。過去二回の対談では、今まで一般的には、あまり語られて来なかった事に意図的に焦点を当ててきました。結果として、温泉好きとしてはどうしても語っておきたい、温泉そのものに関する本質的な考え方を、一通り語り合うことが出来たように思っております。
そこで今後は趣向を全く変えて、毎年大きなテーマを設定して、そのテーマで語り合ってみたいと思っています。今年、私がテーマにしたいと思ったのは五感です。「五感で感じる温泉の魅力」のような感じで、温泉の魅力について、五感毎に語り合ってみたいと思っております。私は以前から、温泉好きが温泉地で経験する全ての楽しみは、最終的には「官能評価技法」とでもいう名前で、体系的に取り纏められるべき奥深さを持っていると感じているのです。今回の対談で、「五感で感じる温泉の魅力」について、全体的に語り合うことで、その序章のようなものが出来ればと思うのですが、いかがでしょうか?
<郡司> 藤田さん、毎年恒例の対談企画を設定していただき、ありがとうございます。今年もよろしくお願い致します。五感とは、なかなか面白いテーマを選択されましたね。それで行きたいと思います。
それに関して、まず申し上げておきたい事があります。温泉における大きな楽しみの一つに、暖かい湯に入浴するという点が考えられます。入浴自体が快感であることは事実ですし、重要な要素ではあります。しかし、それだけなら水道水の沸かし湯でも良いことになってしまいます。そこには温泉である必然性や意義はありません。多くの方は湯に浸かるという快楽感だけで満足してしまい、その先にある温泉の奥深い訴えかけを知らずに過ごしているのではないかと、私には思えてなりません。折角温泉に入浴しても、その本質に思いを馳せないとしたら、本当に惜しいことです。
私は以前から色、味、匂い、体感などによって、温泉の本質を感じる魅力を発見し、さまざまなメディアでその重要性を訴えてきました。温泉とは、まさに五感から官能的に湯を体験することだと言えます。そして五感を研ぎ澄まして行くことによって、湯の感触をより一層味わい、癒されることにもなるのです。そして最終的には、温泉本来の自然が持つパワーを体験できるようになると考えています。
<藤田> テーマに賛同いただいた上に、五感の重要性まで詳細に解説頂き、ありがとうございます。また「温泉本来の自然が持つパワー」とのご指摘は、実に奥深いものがあると思います。
昨年の対談でもそうでしたが、郡司さんの第一声には毎年驚かされます。司会進行役として、郡司さんに伺いたいこと、また最低限ここまでは聞き出そうなど、私もいろいろ考えて臨んでいます。しかし、そうした小手先の目論見の先まで見通されたようなご指摘に、本当に恐れ入る次第です。こうした指摘の中に含まれている温泉への無限の愛情と、純粋無垢な温泉追求の果てに温泉を極めて尽くしていらっしゃる、天性の直感とでも呼ぶべき物こそが、私が郡司さんに凄みを感じる所以です。
郡司さんと親しくさせて頂く中で、そうした凄みを感じる瞬間が多々あるのですが、この私だけが知っている素晴らしい瞬間を、多くの温泉好きの読者と分かち合いたいというのも、実はこの対談を企画し開始した目的の一つなのです。