天空の城 クラック・デ・シュバリエ
クラック・デ・シュバリエ全景。城内へ侵入するための攻城塔や、カタパルトによる投石を防ぐため、山頂に築城され、周囲は即斜面となっている。外壁が中の城壁より低いのは、両方から矢を同時に放てるようにするため ©牧哲雄
同時に、花々が咲き誇る高原に白く可憐に座したその姿から、旅人たちはこの城を「天空の城」と呼ぶ。今回はシリアの世界遺産「クラック・デ・シュバリエとカラット・サラディン」をご紹介しよう。
高原にたたずむ白く可憐な城、クラック・デ・シュバリエ
クラック・デ・シュバリエの城壁。守備塔は城壁に7つ、外壁に8つあり、この間に堀があって、かつては跳ね橋によってつながれていた ©牧哲雄
白レンガが隙間なく積み重ねられたクラック・デ・シュバリエの美しい城壁 ©牧哲雄
雨のほとんど降らない荒野をはるか彼方まで見渡す高原は暖かくなった日ざしに感謝して、一面に野花を花開かせて春を歓迎する。その頂には白く華麗なお城が一基。
天に向かって純白の塔を放ち、大地をがっちりつかむその城は、完成したのち完全に攻略されたことがなく、いまも一帯をやさしく見守るようにたたずんでいる。
朝霧が立つ日、城はまるで雲の上にそびえる天空の城。朝日を受けて白く輝いて、神々しく光り出すのだという。
クラック・デ・シュバリエ=騎士の砦。映画『アラビアのロレンス』で有名になったトーマス・エドワード・ロレンスは、この城を「十字軍の城の中では世界でもっともすばらしい」と評したという。いまでは宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』のモデルだったのではないかなんていう噂まで流れていたりするが、残念ながら確証がない。