5.温暖化の被害を受ける歴史都市・集落の世界遺産
2002年に大洪水に見舞われたプラハ。近年しばしばヨーロッパを大洪水が襲っている。©牧哲雄 |
かつてロンドンは、嵐と満潮が重なると海の水がテムズ川を逆流し、洪水に悩まされることがあった。1970年代にテムズ・バリアが造られると洪水はなくなったが、19世紀には毎年0.4mm、20世紀には毎年2.2mmの海水面の上昇により、まもなくこのバリアも役に立たなくなると言われている。
水の都ヴェネツィアは100年に10cmの割り合いで沈み込んでおり、また20世紀には地下水のくみ上げによってさらに10~13cm沈んでしまった。加えて海水面の上昇が加わって、高潮による洪水は年々回数を増し、激しくなっている。
2002年8月、中欧を記録的な豪雨が襲った。プラハでは地面から最高2mもの高さまで浸水し、20万人が避難。チェスキー・クルムロフでは最高4mにも達して150棟ものゴシック・ルネサンス式の建物が被害にあった。こうした気候変動も地球温暖化が原因とされており、同様の災害の再来が懸念されている。
砂漠化も気候変動の大きな脅威だ。トンブクトゥ周辺では1901年から1996年の間に平均気温が1.4度上昇。遺跡が砂漠化の脅威にさらされているだけでなく、砂嵐や干ばつによる飢饉などが起きている。一方で1999年、2001年、2003年には集中豪雨に見舞われ、泥の建物が軒並み被害を受けた。同様に、レバノンのカディーシャ渓谷でも極度の乾燥地帯が広がりつつある。
■温暖化の被害を受ける歴史都市・集落の世界遺産8件
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