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あの世界遺産も見納め?消えゆく26遺産 後編(2ページ目)

多くの世界遺産が直面している地球温暖化の脅威。ユネスコ発表の『気候変動と世界遺産のケース・スタディ』が伝える危機に瀕した26件の世界遺産の概要をお伝えするシリーズ後編。各データへのリンクも充実!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

5.温暖化の被害を受ける歴史都市・集落の世界遺産

プラハ
2002年に大洪水に見舞われたプラハ。近年しばしばヨーロッパを大洪水が襲っている。©牧哲雄
人々の生活は気候と密接に関係している。温暖化による気候変動は建築物はもちろん、人間の生活そのものを脅かしすらしている。

かつてロンドンは、嵐と満潮が重なると海の水がテムズ川を逆流し、洪水に悩まされることがあった。1970年代にテムズ・バリアが造られると洪水はなくなったが、19世紀には毎年0.4mm、20世紀には毎年2.2mmの海水面の上昇により、まもなくこのバリアも役に立たなくなると言われている。

水の都ヴェネツィアは100年に10cmの割り合いで沈み込んでおり、また20世紀には地下水のくみ上げによってさらに10~13cm沈んでしまった。加えて海水面の上昇が加わって、高潮による洪水は年々回数を増し、激しくなっている。

2002年8月、中欧を記録的な豪雨が襲った。プラハでは地面から最高2mもの高さまで浸水し、20万人が避難。チェスキー・クルムロフでは最高4mにも達して150棟ものゴシック・ルネサンス式の建物が被害にあった。こうした気候変動も地球温暖化が原因とされており、同様の災害の再来が懸念されている。

砂漠化も気候変動の大きな脅威だ。トンブクトゥ周辺では1901年から1996年の間に平均気温が1.4度上昇。遺跡が砂漠化の脅威にさらされているだけでなく、砂嵐や干ばつによる飢饉などが起きている。一方で1999年、2001年、2003年には集中豪雨に見舞われ、泥の建物が軒並み被害を受けた。同様に、レバノンのカディーシャ渓谷でも極度の乾燥地帯が広がりつつある。

■温暖化の被害を受ける歴史都市・集落の世界遺産8件
  • ウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター大寺院及び聖マーガレット教会(イギリス):1987年、文化遺産(i)(ii)(iv)
  • ヴェネツィアとその潟(イタリア):1987年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi)
  • ロンドン塔(イギリス):1988年、文化遺産(ii)(iv)
  • トンブクトゥ(マリ):1988年、文化遺産(ii)(iv)(v)
  • チェスキー・クルムロフ歴史地区(チェコ):1992年、文化遺産(iv)
  • プラハ歴史地区(チェコ):1992年、文化遺産(ii)(iv)(vi)
  • 河港都市グリニッジ(イギリス):1997年、文化遺産(i)(ii)(iv)(vi)
  • カディーシャ渓谷(聖なる谷)と神のスギの森(ホルシュ・アルツ・エル-ラーブ)(レバノン):1998年、文化遺産(iii)(iv)


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