旅情を誘う美しき廃墟 タイの古都アユタヤ
アンコールを彷彿させる寺院や、ミャンマーのパガンを思わせる仏塔、タイ特有の僧院まで、東南アジアの文化を融合して14世紀に誕生したアユタヤ王朝。その王都アユタヤはビルマとの戦争で破壊され、廃墟となってしまったが、なぜだか胸を打つほどに美しい。今回は、タイの首都バンコクから日帰りで行くことができる世界遺産「古都アユタヤ」を紹介しよう。
旅人を魅了する旅情の廃墟、アユタヤ
アユタヤのハイライトであるワット・ヤイ・チャイ・モンコンの仏像群。1357年、ウートーン王が建築し、度々増築された。黄色い袈裟は僧が寄進したもの
高さ5m、体長28mを誇るワット・ロカヤ・スタの寝釈迦仏。入滅(釈迦の死)直前の釈迦の穏やかな表情を描いている
東から旅してきた者は、アンコールで見たクメール式の寺院にひと目で気づくはずだ。西から旅してきた者は、インドやスリランカのヒンドゥー寺院やストゥーパ、ミャンマーのパゴダの面影を見るだろうし、北からきた者はスコータイとの驚くほどの類似点を、南からきた者はワット・プラ・ケオ(エメラルド寺院)をはじめとするバンコクの華麗な宮殿群との共通点を見出すに違いない。
東南アジア各地の文化を融合しながら花開いたアユタヤの文化は、クメールの重厚とタイの華麗をあわせ持った美しい古都を完成させた。しかし文化の融合はたびたび行われた戦争をも意味し、最終的にアユタヤはビルマ(現在のミャンマー)によって完全に破壊され、現在のような廃墟を残すのみとなった。
ワット・ヤイ・チャイ・モンコンのチェディ(仏塔)。高さ約72m
現在アユタヤにはバンコクほどの絢爛豪華な美もなければ、アンコールほどの建築美もなく、パガンほどの規模もない。しかし、これほど旅情を感じさせてくれる遺跡はなかなかない。