蝉の声もにぎやかな季節。夏休みということで童心に返って昆虫採集といきたいところですが、現実はなかなか難しいもの。今回は、フランスの詩人Jules Renard『Histoires naturelles』(『博物誌』)の世界へみなさんをご招待しましょう。きらきらと輝く想像力に踊りだしたくなるような彼の描写。どんな生き物たちを描写しているのか、フランス語も勉強しながら謎解きにチャレンジしてみてください。
二つ折りになったラブレター
ルナール『博物誌』 |
「Ce billet doux plié en deux cherche une adresse de fleur.」
(二つ折りの恋文が花の番地を探している)
この表現に使われているbillet(ビエ)は通常お札や紙幣サイズの切符のことを指しますが、手紙の意味ももつ単語です。やはり訳としては上記の岸田国士訳のように「恋文」にしてしまうのがロマンティックで素敵でしょう。fleur(フルール/花)が最大のヒントですね。そう、正解はpapillon(パピヨン/蝶)です。同名の犬の名は、その耳の形が蝶に似ていることからきていることはみなさんもご存知ですよね。
目の病気を治しているお嬢さん
潤んだ眼は愛らしい? |
「Elle soigne son ophtalmie.D'un bord à l'autre de la rivière, elle ne fait que tremper dans l'eau fraîche ses yeux gonflés.」
(彼女は眼炎の治療をしている。川岸のこちらからあちらへと腫れた眼をつめたい水で冷やすことばっかりしている。)
こちらはまずdemoiselle(ドゥモワゼル)という正解からお知らせしましょう。demoiselle→mademoiselle(マドゥモワゼル/お嬢さん)という連想がすぐに働くでしょうが、この単語にはlibellule(リベリュル/とんぼ)の意味もあります。フランス語では女性名詞の単語を「彼女」という意味をもつ代名詞elle(エル)で受けることができますが、この場合はその女性形の効果がバッチリ表れているといった感じですね。そんなに眼を腫らしているのは「失恋」のせい?などと考えるとdemoiselleを網で捕まえて標本にはなかなかできません。
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