センター試験、はじめての英語リスニング試験が混乱
ICプレーヤーにも利点はあるが、事前のリスクマネージメントが甘かったという指摘も多く聞かれる。 |
今年、センター試験では初の試みとなる、英語のリスニングテストの実施に関しては、以前より、その実施方法に関して、論議がなされてきました。採用されたのは、受験生すべてにICプレーヤーが配布し、各自プレーヤー本体にイヤホンを差し込んで、問題を聞き取るというものです。
このICプレーヤーに今回、音が聞こえない、動かない等の、トラブルが発生し、そのため、再テストという対応がとられました。
公正さよりビジネス?
1月22日付のFuji Sankei Business iでも取り上げられていましたが、それによれば、今回、松下とソニーのいずれかのICプレーヤーが使用された模様です。このICプレーヤーは、使い捨てで、受験生が希望すれば、イヤホンとともに、プレーヤーを持ち帰ることもできるといいます。しかしながら、1台の単価がおよそ2,000円といわれ、毎年、約10億円が、リスニングテストのために、使われることになります。しかも、持ち帰って再利用しようにも、メモリーを書き換えることができないため、試験問題を繰り返し聞く用途以外には使用できないというのです。そもそも、国立大にしても、大きな無駄であるという点も無視できないといえます。あのiPodのように持ち帰って音楽プレーヤーとして使用できるのならば、まだしも、すべて使い捨てで、リサイクルされず破棄されるとなれば、環境面でも「資源的」にも大きな無駄になるのはいうまでもありません。
受注する企業はビジネスとしては、安定した大きな需要になりますが、今回のICプレーヤーの採用には、いくつかの問題点があると思われます。
故障ゼロは有り得ない!
受験前から懸念されていたのが、機械の故障の問題。今回の不具合のケースでも、そのほとんどが、機械の不具合、故障によるものでした。トラブルの主な原因は、1.途中から音声が聞こえなくなる 2.声が大きくなったり、小さくなったりする、というもので、その場合、再テストが実施されました。大学入試センター側では、メーカー側に原因調査と善処を依頼すると発表していましたが、50万近くのロットで、不具合を完全にゼロにするのは、恐らく不可能であると考えられます。
イヤホン式では、試験監督できない!
今回の問題で、リスニング試験中、果たして、機械の不具合なのか、実際どう聞こえたのかを、試験監督者が、把握できないという、問題点が明らかになってきています。会場全体に流すシステムであれば、ちょうど英検の試験のように、状況を把握し、報告することができますが、あくまでも、受験者本人の申告による点が、後々問題を残すことにもなりそうです。また、「性善説」といってしまったことで、来年手を挙げる人数が増えることも予想されます。ICプレーヤー+イヤホン以外の方法もある!
音の聞こえる環境としては、イヤホンで聞くほうが、よい面もありますが、やはり機械の不具合の可能性を考えると、必ずしも、受験生にとって、安心できるシステムとはいえない場合があります。ただし、各会場の音響の設備には、勿論ばらつきがあり、その点を考慮したものであるといえますが、実は、一人一人の場所による聞こえ方を均一にし、しかも今回のデメリットをなくす方式も既に技術的には可能であるといわれています。一般には余り知られていませんが、特殊なスピーカーを使用することで、どのような場所であっても、部屋のすみずみにまで、音を行き渡らせ、かつ監督者も状況把握が可能になるというものです。
■特殊スピーカーの1例:
+ソリッド・アコースティックス
+SIKKIM360°完全無指向性
この方式の実効性が確認されれば、上記3つの問題は、解決することができるはずです。しかも経費的には、最初の初期投資のみとなり、経費面では相当な節約が可能になるといえます。
ガイド個人としては、ICプレーヤーとイヤホンによる方法は、経済的かつ、試験の公平さからしても、必ずしも、最良の方法とはいえないように思えます。資源の無駄と経費の無駄をなくし、かつすべての受験生に公平な方式を、今後も、真剣に、検討していく必要があるのではないでしょうか。一生を左右するかもしれないテストに臨む受験生には、より細やかで細心の配慮がなされるべきと考えます。