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日本の未来を予見した P.F.ドラッカー氏の死去を悼む

11日、P.F.ドラッカー氏が死去しました。現代経営学の祖とも言われ、未来を予見する論説と、とりわけ、日本への提言は、未来を見事に予見するものでした。彼の功績を偲びます。

竹村 和浩

執筆者:竹村 和浩

ビジネス英会話ガイド

PFドラッカー
彼の著書「断絶の時代」は、今の時代を読み解く必読書です。

日本を愛した経営学者P.F.ドラッカー

1909年11月19日オーストリアのウィーン生まれの95才のドラッカー氏が、11月11日なくなられました。
「近代経営学の父」とも呼ばれ、トップ・マネージメントの分野で、世界的に活躍した氏は、世界中のビジネスパーソンに大きな影響を与えたといわれています。

東西冷戦の終結や、高齢化社会の到来、高度情報化社会の到来など、1970年ごろに始まった、変動と変革の時代は、今後2020年ごろまで、続くと予見し、それに備える必要性を多くの著書の中で、説いてきたことで知られています。

■主な著書:
「現代の経営」
「経営者の条件」
「断絶の時代」
「マネジメント」
「始めて読むドラッカー」
・「プロフェッショナルの条件」
・「チェンジリーダーの条件」
・「イノベーターの条件」
・「テクノロジストの条件」
「ネクスト・ソサエティー」
「ポスト資本主義社会」他 多数

1944年、GMの経営分析を依頼されたのをきっかけに、「会社という概念」を発表し、その後も、「変貌する産業社会」などをきっかけに、日本にも関心を高め、高度情報化社会の到来を予見した、「断絶の時代」は特に有名で、日本とアメリカでベストセラーにもなりました。彼の先見性は、今でも、私たちに激動の時代を生きる指針を与えてくれています。

60年代には、既に日本が経済大国になることを予見したことでも知られ、その未来を読み解く先見性は、高く評価されてきました。ニューヨーク大学教授等を経て、1971年からは、アメリカ、カリフォルニア州のクレアモント大学大学院で、経営学・社会学の教鞭をとっていました。


未来を予見する卓越した先見性

彼の特徴はなんと言ってもその先見性の高さです。コンピューター社会と高度情報化社会の到来を説いた、「断絶の時代-今起こっていることの本質-」"The Age of Discontinuity"は、日本でも翻訳され、ベストセラーになりました。1969年に書かれた著書の中で、いみじくも、80年代に訪れた高度情報化社会に対応出来ている社会は、アメリカと日本であると予見したことは有名です。とりわけ、その識字率の高さにおいて、日本が一歩先んじていると論じました。

その後も、「マネジメント」シリーズで、経営の新しいあり方を常に提言しつづけてきました。とりわけ、これから起こる変化が、「知識」の変化で、あり、「経営」も「知識」をマネージしていく形態に変わることを予見しました。その中でも、「従業員は、コストではなく、資源である」など、日本から学んだとも言える、経営の提言をしています。


日本の優位性を教育の質の高さと均一性に見出す

高度情報化社会に対応できている社会が、画一的に質の高い初等教育を全国一律に実施している、日本にあると見抜いた慧眼は、現在の総合的な学習の時間の本質的な誤りを指摘し、アメリカが、日本に見習い「読み書きそろばん」方式の教育を全米の公立学校に取り入れる契機になったとも言われています。
また、その一方で、従来の詰め込み型から、Learn-Unlearnの形態に学習が移行するよう提言もしました。

日本の塾システムに新しい教育の形態としての高い評価をも与えています。


P.F.ドラッカー氏の日本への提言

ドラッカー氏は、日本の変化への対応に常に、肯定的な評価を与えてくれていました。イノベーションの本質を説いた、著書「テクノロジストの条件」(ダイヤモンド社・上田惇生編訳)では、イノベーションの本質が、ものづくりにあることを、指摘しています。日本では時に、時代遅れの方法と打ち捨てられがちな、日本独自の制度を改めて評価し、見直す点で、ドラッカー氏の提言は、日本人にも受け入れやすい、親しみの持てるものでもあったと同時に大きな励ましとなりました。

今後も、彼の著書がより多く読まれ、激動の時代を生き抜く指針となることを願ってやみません。

氏の死去を心から悼み、ご冥福をお祈りしたいと思います。


【関連リンク】
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